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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.08 奪還
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P.081 帝国VS帝国

 戦いの地は移り、シャクルとミネアの進んだ大階段下。火花を散らす剣の撃ち合いの続くリグルとネイサーの戦い。幾度も撃ち合い、開く間合いから同時に踏み込み、甲高い金属音を響かせ互いの動きが止まる。



「…成長したものですね、リグル君」

「出来ればその姿で名前を呼ばないで頂きたいですがね…」

「おやおや、迷ってるのですか?リグル君」

「だから呼ぶなというんです…!」

「そんな名前など…細かい事を気にしてないで、彼らの為に早くこの戦いを終わす事を考えたらどうですか?」



そう言うネイサーの視線がチラっと横を見、リグルもその視線を追うと、キリとリーシェの戦う姿が映る。襲いくる信者達を次々と薙ぎ倒しゆく戦況は圧倒的に優勢ととれるのに、時折フラつく姿に苦しそうな表情を見ると、劣勢に見えてしまう。



「あの傷だ、いつまでもつかな?」

「くっ…ならばネイサー。僕が貴方に勝つまでだ!」



叫ぶと共に剣を弾き、間合いそのままに再び幾度も撃ち合う両者。



「もっとも、本当に急がないと"援軍"が来てしまうからね…君を捕らえにね」

「くっ…!」

「心配しなくてもいいですよ。後から合流した"援軍"は、わたしの忠実なる部下…つまりは君の部下とも言えますね。しかし今来ている援軍はその一部。他の隊員には出撃の話しはしていない…っと言う事は、この戦いに勝てば君は今まで通りに帝国兵として在れる。負ければ…反逆者だ」



ネイサーの言葉に表情を引きつらせるリグル。すると……



「揺らぐなリグル!!」



乱戦の中からキリが叫ぶ。



「きゅ、宮殿王…!?」

「オレらの心配など要らん!目の前の敵に集中しろ!!」

「そうよ兵隊さん」



キリに続いてリーシェの声も響く。



「相手がこの程度じゃ、これくらいのハンデあった方が面白いわ」

「そういう事だリグル!なんならこっちで決着つけてやってもいいんだぜ」

「宮殿王…そうですか…わかりました。ですが決着はこちらでつけさせて頂きます!」



表情を引き締め、ネイサーをまっすぐに睨むリグル。合わさる視線を外すと言うよりゆっくりと閉じ、深いため息をつくネイサー。



「全く、厄介な相手ですね、あなた達は」

「また皮肉ばかり…厄介なのは貴方の方です」

「まぁわたしの贈った剣で君に斬られるなら、負けても悔いはないですがね…」

「ッ…!」



ハっとした表情に動きの止まるリグルの隙を突き、ネイサーが合わせた剣を跳ね上げる。



「しまっ…!!」

「しかしまぁ、相変わらず動揺しやすい性格は直っていないようですね」



その一瞬、ネイサーの放つ突きがリグルの肩を貫く。



「ぐっ…!!」

「強くはなったがまだまだ青いですね」



2撃目を狙ってか、ネイサーの剣が引き抜こうとピクっと動く…その瞬間、突如炎により形成された盾が四方に分かれリグルの腕を伝う。そして貫かれた肩口に集まり、瞬間的にカタパルトを作り上げた。


そのカタパルトにネイサーの剣が埋まり、消火と蒸発のジュッ!っと音を鳴らし白煙が上がる。



「なっ!?」

「盾だけだと思いましたか…青いなら青いなりに、まだまだもがいてやりますよ!!」



咄嗟に引き抜こうとする剣は微動だにしない。好機とばかりに、剣を持つ手に力を込めるリグル。


しかしその剣は突如何かに弾かれたように宙を舞う。驚き弾かれた手元に視線を向けると、肩口を貫く半透明の刃がもう1本。その元を辿ると、そこにあるのはネイサーの人差し指。



「刃は1本だけだと思いましたか?」



そうリグルに笑いかけると、肩口を貫く刃を消し去り、柄だけとなる部分を宙に放り投げる。そしてネイサーは両手をリグルに向かい突き出した。


その次の瞬間…リグルの目の前にあるのは10の半透明の刃。辿れば刃はネイサーの各指から伸びており、全ての切っ先がリグルの顔面スレスレの位置で止まっている。



「こ、これは…!?水流刀はあの柄からのもの…」

「えぇ。ですが『から』ではない。『水流刀』の名は柄の名です」

「…いつの間にこんな奇っ怪な技を…」

「元々ですよ。水流刀無しで刃を形成するのはいささか疲れますから、使用を控えていただけです」

「でしたら、出来ればそのまま控えて頂きたかったですよ」



そう言うリグルの頬を、疲れや肩を刺された痛みとも違う冷や汗が伝う。するとネイサーはクスっと笑い、突き出した刃をそのままに、ゆっくりと後退り間合いを開いていく。


あえてリグルも動かず、ゆっくりと後退していくネイサーを見据える。



「…どういうおつもりでしょうか…?」

「いえ…お互い力のタネ明かしはしました。そろそろ本気でやりましょうか?リグル君」



口元に怪しい笑みを作り、両手を広げていくネイサー。



「やはりまだ遊んでましたか…」

「厄介な兎を狩るには、全力でいかねば倒せぬようですしね。さぁ剣を拾って下さい。全力で戦わなければ、この戦いに意味は無い」

「………」



少し引きつらせた表情で目を閉じ、リグルはネイサーに背を向けた。



「ならば兎の底力を見せて差し上げますよ…」



呟くように言いながら、床に転がる自分の剣を拾い上げた。そして振り返り、その剣の切っ先をネイサーに向けると共に、左腕に再び炎の盾を形成させた。



「それは楽しみですよ、リグル君」

「ではネイサー…始めましょうか…」



互いに合わせた視線。数秒見合った後、合図があった訳でもない。しかし両者は同時に地を蹴り激突する。




◆◆◆――…




 その頃、大聖堂ザーバス正門前。

幾多の青の軍勢の中、正門前に立ち塞がる2つの影……それは大聖堂ザーバスの信者ではない。



「――…いいんですか?隊長までこんな事して」



そう言うのは、緑の軍服に肩までの黒髪の女性。



「ここまできてまだ言うか…」



隣に並ぶは同色の軍服の男性。それはエクシラにて出会った隊長カーレンと小隊長を名乗ったユーネの2人だった。


カーレンの手には身の丈を越える巨大な薙刀が1本。ユーネの両手足には白銀に輝く鋼鉄の装甲。そして2人の前には10数のマーズ隊の兵士が倒れている。



「すいません…私の弟の為に…」

「そうではない。元々マーズ隊長の事は極秘で調べていた事」

「へ?」

「神官らといる所を偶然目撃してな…以来、副隊長と共に我が隊単独で追っていた。これが核心となっていくだろう」

「そうだったんですね…それでも一緒に来てくれてありがとうございます、隊長」



そう言って笑みをカーレンに向けた。しかしカーレンは一切ユーネに向かず、不機嫌そうな表情でため息をつく。



「戦いの最中に笑うな、バイスン小隊長」

「…ん~…堅いなぁ、隊長は…」



ユーネは指で頬を掻き、苦笑いを浮かべながら拳を構えた。臨戦態勢のカーレンとユーネに、対面するマーズ隊の兵士達も身構える。



「き、貴様ら…邪魔立てするとは、カーレン隊も反逆の類か!!」

「そこをどけ!!反逆者共!!」



手にした武器を向け、『反逆』の単語を交え怒声を上げるマーズ隊の兵士達。するとゆっくりとカーレンの薙刀が上がり……




 ドォフゥゥンッ!!




何もない砂浜に落とされた。舞い上がる砂と腹に響く鈍い音に驚き、動きを止める兵士達。



「カーレン隊…だと?」



呟く声と共に、砂埃の隙間から姿を見せるカーレン。



「『反逆者』は我ぞ…このカーレン=エレッタただ1人!!他の隊員に罪は無し!!」



そう言って肩に薙刀を担ぎ上げた。その足元は、薙刀の刃の痕で2メートル程砂浜が割れている。




 ガッゴォォォォォンッ!!




続き響き渡る轟音。その元にいるのはユーネ。手甲をはめた両手の拳を撃ち合わせていたのだ。



「私も反逆者なんだから!忘れないでよね!!」

「…バイスン小隊長…」

「はい!」

「意気込むのはいいが、自分を反逆者と認めてる上、わたしの発言が掻き消されているようだが…」

「ほぇ?…たぶん気のせいですよ、隊長」



何故かニコやかな表情で再び構えるユーネ。その姿にため息を1つし、カーレンも薙刀を構えた。対する兵士達も身構え、



「そこをどけ!!反逆者共がァ!!」



一斉に砂浜を蹴り駆け出した。



「マーズ隊…お主らはここより先には…」

「通さないんだからねぇ!!」

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