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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.08 奪還
80/122

P.080 届かぬ声(2)

そう言って翳すリュカの手の上に、不思議な魔法陣が現れ、浮かび上がるようにエルセナが姿を見せる。その姿は実体と言うより魔法陣より映し出されたものに見え、眠ったように目を閉じ、ぐったりとうなだれた姿。



「エル…セナ…」

「冥王の力と霊召士の力を融合させ、完全な力を手にする為に、僕と母さんは1つになるんだ。アルドナでね」

「ア、アルドナだと…!?」

「父さんもナックから聞いただろ?精霊を殺せる覇剣ダーヴィスと、その剣が眠る天空の都市、アルドナの事を」



そう問うリュカに、あえて無言のままに睨み続けるシャクル。



「そう睨まないでよ父さん。代わりにいい事教えてあげるからさ」

「……?」

「覇剣の力…いや、呪われし武器は、源珠の力で制御出来るらしいんだ」

「っ…何だと…!?」

「どうだい?冥王としての僕を倒す為のヒントにはなったでしょ?」



思わぬ言葉にシャクルは一瞬驚きの表情を浮かべるも、すぐさま鋭い眼光をリュカに向けた。



「ナックを通じてこっちの情報は筒抜けって訳か…」

「別に全部が筒抜けって訳じゃないよ。呪われし武器の存在は、精霊なら誰しも知る存在。僕の中の闇の精霊からね」



そう言うとリュカは指をパチンっと鳴らした。すると未だ目を覚まさぬエルセナの足元の魔法陣が回転し出し、エルセナの体が吸い込まれていくように消えていく。



「エルセナ!!」

「大丈夫だよ父さん。すぐにまた会えるから……もちろん一緒に来てくれるなら、いつでも母さんに会えるよ」

「………」

「そうすれば親子3人。ナックも一緒に暮らせるんだ。だから父さん、僕と一緒に…」

「………」

「さぁ、行こうよ」


そう告げるリュカに視線を向けるシャクルは、ゆっくりと首を横に振る。



「悪いな冥王。お前と行く気はさらさらねぇよ」

「何だって…」

「俺はお前を倒す為に戻ってきた。エルセナを蘇らせられるからって、そうしたいとも思わねぇ。エルセナの望みはソレじゃねぇ…アイツの想いは萱島アヤメに引き継がれたんだ。だから俺は…」



シャクルはゆっくりと手にした剣の切っ先をリュカに向ける。



「萱島アヤメの為に、今ここにいる」

「………」

「降りてこい、冥王…エルセナの魂はアヤメと在るべきものだ」

「………」



数秒睨み合う両者だったが、生唾を飲むリュカがシャクルに背を向けた。



「おい冥王!逃げんのかァ!?」

「…うん、ここは逃げる事にするよ」

「何…」

「初めてだよ…怖いと感じたのは…さすがだよ、父さんは…」



そう呟くリュカは、小刻みに震えて汗にも濡れた手の平を見た。そしてその手を握り締め、横目にシャクルに振り向く。



「僕は行くよ。集めるものを早く集めなきゃ」

「冥王…お前…」

「でも諦めてないからね、父さんの事……だけど、注意した方がいいかもね」

「何?」


「キャアァァ!!」



突如響く悲鳴に振り返るシャクル。するとそこに映るのは、肩口から血飛沫を上げたミネアの姿。



「っ…ミネア!!」



崩れるミネアの前には、刀身を血に染めた剣を構えたアヤメが立つ。その表情はやはり無のまま。倒れたミネアに歩み寄り、ゆっくりと剣を振りかぶる。



「ヤメろアヤメ!!」



すぐさま駆け出したシャクルの剣がアヤメの斬撃を止める。



「大丈夫かよミネア…っ」

「は…はい…」

「アヤメ…お前…っ!」

「………」



競り合う中でもアヤメの表情は変わらない。光の無い、感情も無い目でシャクルを見ている。



「注意しないとダメだよ、父さん。その人結構強いから」

「っだとォ…」



軋む音を発て競り合う剣と剣。



「何だよこの腕力…アヤメの力じゃねぇな……いったい何しやがった!?」

「だいぶ弱ってたみたいだから、ちょっとマザーを送って上げたけど…強すぎたのかな?許容範囲越えたみたいで、暴走しちゃったみたい」

「テ、テメぇ…!」

「ほらほら、よそ見してたら殺られちゃうよ…じゃあね、僕達はもう行かなきゃ」



そう言って完全に背を向けたリュカの肩に、どこからか突然現れたナックがフワリと降り立つ。ナックはチラっとシャクルを見ると、何か言いたげな表情をしていたが、ゆっくりと視線を反らして背を向けた。



「ナック…」

「死…ね…」

「くっ!」



呟かれる言葉と共に、シャクルの剣が弾かれた。グラつくシャクルめがけ、アヤメの容赦無き剣が降り下ろされる。



「シャクル!!」

「うおっ!」



刃がシャクルを襲う寸前、倒れたままだったミネアがシャクルの足を払い、地面に落とす。鼻先を剣が掠めていき、倒れ行く体を捻り起き上がる。そして連撃と襲いくる剣を剣で受けた。



「ヤメろアヤメ!!」

「………」

「アヤメ…」



再び競り合うシャクルとアヤメに向く事なく、リュカとナックが離れていく。



「おい待て!冥王!!め…リュ、リュカァ!!ナック!!」



シャクルが呼び叫ぶもリュカとナックは振り向く事なく、赤いもやに呑まれていくように消えていった。



「待ちやがれェェ!!」

「…っ!」



叫ぶシャクルに、アヤメは無言のままに剣を圧し返していく。その度シャクルの足元がズルズルと音を発て、剣同様に圧されていった。



「くそっ…何なんだよこの力はァ!!」



斬りつけられた肩を押さえ立ち上がるミネアもアヤメに歩み寄る。しかしどうする事も出来ない。"アヤメ"という存在に手を出す訳にはいかない。



「ヤメて…もうヤメてアヤメ!」



もうミネアには呼びかけるしかなかった。しかしアヤメの反応は無く……



「死ね…」

「お願い戻ってきて!アヤメ!!」

「目ぇ覚ませアヤメェ!!」

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