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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.08 奪還
79/122

P.079 届かぬ声(1)

 シャクルとミネアは、どこまで続くかわからない螺旋の上り坂を未だ駆け上がっていた。


もう10数階分は上っただろうその頃、ミネアの足が止まる。膝に手をついて荒い息遣い。頬を伝う汗がポタリ、ポタリと地に落ちる。



「大丈夫か?ミネア」



そのミネアに気づき、シャクルが振り向き歩み寄る。


朧火の黄泉路を抜けてから、十分な休息の無いまま亡霊や信者達と戦闘を繰り広げてきたミネアの体力は、もはや限界であった。それに加えてのこの上り坂……シャクルの呼びかけにも答え、顔を上げる事すら出来ない。


するとシャクルがミネアの前で背中を向けてしゃがみ込む。



「乗れ。俺が運ぶ」

「だ…大丈夫です…ちょっと疲れただけです…アヤメが待ってます、急ぎ――…っ!」



無理に作った笑みを浮かべ歩き出そうとするが、自分の足に足が引っかかり、目の前のシャクルの背中に倒れ込むミネア。


その際ミネアの頭がシャクルの後頭部に直撃し、互いに悶絶していたのは余談としておこう……


ミネアが「すいません」と立ち上がろうとすると、すかさずシャクルがミネアをおぶる形で立ち上がる。



「きゃっ」

「よし、行くぞ」

「だ、大丈夫ですって!自分で歩けます」

「さっきコケてたやつが強がるなよ」



そう言ってミネアを背負うまま、小走りに坂を上るシャクル。



「わたしなら大丈夫です。これではシャクルの方が疲れてしまいますよ」

「お前1人くらいなら軽いから大丈夫だよ」

「えっ、軽いです?本当にわたし軽いですか?」

「…何でソコに食いつく訳…?」



なぜか嬉しそうなミネアを背に、シャクルはひたすら坂を上っていく。


それから数分…坂を進んでいくと、少し見上げた位置に頂上とも思える円形のものが見えた。



「あそこが頂上か?」

「かもしれませんね…シャクル、もう大丈夫です。1人で歩けます」



そう言うとミネアはシャクルの背中から降り、「お陰で休めました」と礼を告げる。そして頂上目指して2人は駆け出した。


頂上まではそう時間もかからずに到着した。長く続いた上り坂に、さすがに息の上がった2人の前に広がるのは、直径20~30メートルはあろう壁などの無い円形の広間。そしてその広間中央には……



「っ、アヤメ!」



1人俯き、静かに立ち尽くすアヤメの姿があった。周囲には誰もいない。名を呼び駆け出すシャクルと、同様にその後を追うミネア。しかしアヤメに反応が見られない。以前として俯いたままで、何故かその手には握られた1本の剣。


シャクルがアヤメの元に辿り着こうとした瞬間、ゆっくりとアヤメの顔が上がる。その目は生気…活力が全く感じられぬ、色の無い瞳。完全な『無』と言える表情。そしてアヤメの手に握られた剣が振り上がる。



「シャクル危ない!」

「っ!!」




 ガギィィィンッ!!




咄嗟に抜いたシャクルの剣がアヤメの斬撃を受け止めた。



「バカ!!俺だ!何しやがんだよ!!」

「アヤメ!!何をするの!?」

「死…ね…」




 キィィィィンッ!!




弾く剣を再び振るうアヤメ。シャクルが斬撃を受ければ、アヤメの剣はすぐさま弾きかれ再びシャクルに向かう。



「ヤメろアヤメ!!俺だ!わかんねぇのかよ!!」

「………」



斬撃を受け止めながら叫ぶも、アヤメの表情は変わらない。無表情のままに剣を振るい続けるだけのアヤメ。



「何をしているのよアヤメ!!」



ミネアの声にシャクルと競り合うアヤメの視線が向く。するとアヤメはミネアに向いたまま、シャクルを体ごと弾き飛ばし、剣を構えてミネアに迫る。


迷いなく心臓めがけ突かれる刃をヒラリと躱すミネア。しかしすぐさま体勢を調え、再び振るわれる剣。



「アヤメ!いったいどうしたというの!?」

「死…ね…」



振るわれる刃をギリギリで躱し続けるミネア。その呼びかけにもアヤメの表情は無のまま変わらない。身を起こしたシャクルも、状況判断が全く追いつかず戸惑うばかり。



「何だってんだよ…これは…!」


「ハハハァ!!どうやらもう始まってるみたいねぇ」



すると突然辺りに響く声。辺りを見渡し声の主を捜すと、後方見上げる先には……



「リュ…カ……っ!冥王、テメェ!!」

「やぁ、父さん」



シャクルの見上げた視線の先には、薄い赤の空間に浮かぶ冥王リュカの姿が映る。まるで空中に見えない足場でもあるかのように、ニコニコした笑顔を浮かべながら宙を歩いてくるリュカ。



「冥王…お前アヤメに――…」




 ガギィィィィィンッ!!




シャクルの怒声を切り響いた金属音に振り向くと、ミネアが取り出したトンファーでアヤメの剣を受け止めている。しかし体勢は片膝をつくミネアにアヤメが上から圧力をかけているもの。クロスさせたトンファーで何とか堪えている状況。



「ミネア!!」

「わたしは大丈夫です!シャクルは冥王を!」



ミネアの言葉に一瞬迷うも、頷き返しリュカへと振り向いた。するとリュカは楽しそうな笑みを浮かべ、片手を日差しのように眉の上に乗せて競り合う2人を見下ろす。



「うわぁ~おもしろい光景だね」

「何がおもしろいだ!テメェの仕業かこれは!!」

「まぁそうだけど。おもしろいじゃないか、仲間同士の殺し合いもさぁ…」

「っんだと…っ!」




 キィィィィンッ!!




再び響く音にシャクルが向くと、一瞬開いた間合いから、幾度も撃ち合うミネアとアヤメ。



「ミネア!!」

「わたしは大丈夫ですから冥王を!アヤメはわたしにお任せ下さい!!」

「おい冥王!!ナックといい、アヤメにまで何しやがったァ!!」

「何って…ナックには何もしてないよ、ただ僕に継承されただけだよ。でもその人は知らないなぁ…だってその人はもう用済みだからさぁ」

「何だと…っ!」

「だって本当の母さんはここにいるから」

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