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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.08 奪還
76/122

P.076 コンティニュー(1)

 幾折にも重なった怒声と金属音の中、キリとリーシェが己の武器を手にし振り回す。


背中合わせに回転しながら戦い続ける2人。斬れども斬れども次々に襲いかかる信者達の数に、全く先が見えない。



「うじゃうじゃと…ウザってぇ!!」

「思った以上にやりにくいわね…分かれて行く?」

「分かれちまったら背中がガラ空きになっちまうだろうがよッ!!」

「それもそうね」



キリが石刀を振り切ると、武器ごと斬り裂く一撃に舞う血飛沫。周囲の信者が倒れ視界がひらけた瞬間――…



「イイ腕だ…」

「ッ!?」



突如姿を現すネイサー。その手がキリの頭を掴み、顔面めがけ膝蹴りを打ち放つ。



「ッ…ぐあぁ…!!」



鈍い音と共にキリの体が僅かに浮いた。首からハネ上げられるも、握る石刀を力強く振り切った。しかしその石刀をヒラリと側宙にて躱すネイサー。



「チっ…!」

「力だけじゃ無理よ、おじ様」



着地を待つネイサーに向かい、キリを跳び越したリーシェの捻りを加えた突きが、ネイサーの心臓めがけ一直線。




 ッ…キィィィィンッ!!




しかし響いたのは金属音。しかも突かれた槍は完全に停止状態。リーシェの槍の先端を追って見ると、ネイサーの剣の切っ先が止めていた。



「最悪な敵ね…」



その槍の先、表情を引きつらせたリーシェ。槍と剣、ミリ単位の細い僅かな一点を一線に止め、微動だにしない武器同士。



「スピードはあるが、パワーが足りない…しかし女性という点を合わせれば……まぁ総合55点くらいですかね。非常に惜しい女性(ひと)ですね」



鼻で笑うように首を左右に振るネイサー。



「へっ…隙だらけになって言うセリフじゃねぇぜ!!」



動かぬネイサーに、キリが石刀を構え走り出そうとした瞬間!




 ズバァッ!!




「っ!?…ぐあぁぁッ!!」



キリの背中を信者の剣が斬りつける。



「隙だらけはどっちかな?…敵は1人ではないんですよ?」



すぐさま応戦に振り返るリーシェだが…



「…君も、ね?」




 ゴッ!!




剣を突きつけたままに放つ回し蹴りが、リーシェの側頭部に刺さり、その身を床に崩す。



「おい嬢ちゃん!…ぐあっ!!」



崩れたリーシェに向いた瞬間、左腕を鋭い槍が背後から貫通し、瞬間的に噴き出す鮮血。



「ッ…ぐぅ…!」



キリは握る石刀を振り切り、槍を突く信者を斬りつけた――…がっ、




 ズバァッ!! ズブッ!!




次々に襲う剣と槍が、キリを襲う。



「1度崩れたモノは容易く墜ちる…」


「…っく…!」



グラつく視界にも立ち上がるリーシェに歩み寄るネイサー。



「君も容易いモノの1つです……ゲームオーバー…」




◆◆◆――…




 人の群れがひしめく轟音と、鉄同士が打ち合う金属音が響き渡る大聖堂ザーバス正門ホール内。その一角では幾度と撃ち合うブレゴとヤナの姿がある。



 ガギィィィィィンッ!!!!



激突の衝撃に競り合う中、ヤナの斧がブレゴの剣を僅かに圧す。



「ぐっ…!」



一瞬ヤナが顔を後ろに反り、雄叫びと共に顔面をブレゴに振り降ろす。




 ドゴォォォッ!!!!




重く鈍い音が辺りに響く。



「ぐはぁっ!!」



頭を跳ね、のけ反るブレゴの体にヤナの斧の柄が刺さる。



「ぐッ!!」



同時に襲う炎の熱と衝撃に、腹の底から込み上げる血液がブレゴの口から一気に噴き出す。


その血がヤナの頬に数滴かかると、



「血ィ…血だァ…」



っと呟き、狂気に満ちた笑顔をみせた。



「もっと…もっとくれよ……血をくれよォォォォッ!!」



叫ぶヤナはブレゴに向かい、再び大口を開けて牙を突き立る。狙うはブレゴの首。しかしブレゴはヤナの大口めがけ、自ら左腕を突き出した。皮膚に鋭利な牙の刺さる生々しい音が鳴り、両者の足が止まる。


一拍おき、競り合いでヒビ割れる地面にポタ…ポタ…っとブレゴの腕から赤い鮮血が滴り落ちはじめた。すると……



「…どうした…終わりか?」



ヤナに噛みつかれた腕から覗くブレゴの鋭い眼光。返答を待たずして、剣を握る右手に力が込められ、



「ぬえぇいッ!!」




 ズバァァァッ!!!!




一気に振り抜き、ヤナ体を肩口から斬りつけた。



「ぐはッ!!」



牙が左腕から離れ、グラつく巨体。牙の抜けた腕からは血が大量に流れ出すが、ブレゴは気にする素振りも見せずに剣を構え身を引かせる。



「勝機を見出だす為なら腕の1本や2本…でぇぇぇぇいッ!!!!」



渾身の力を込めて剣を突きつけた。



「うぐ…ぁあッ!!」



剣はヤナの腹部に突き刺さり、一気に背中までを貫いた。



「グォォォォッ!!」



貫く剣を両手に掴み、ヤナの巨体を圧し進む。岩を砕くような轟音を響かせながら、床を割り圧し進むブレゴは、ヤナの巨体を壁に剣ごと打ちつける。再びの轟音と共に壁に減り込むヤナの巨体。



「ぐあァァァッ!!」

「冥界という名の安息の地へ…我が連れて行ってやろうぞ!!」

「がっ……がぁ…ぐがァァァァッ!!」



傷口より噴き出す血飛沫の中、ヤナが叫び吠える。減り込ませた壁を崩し振り上げる頭。ヤナは再び吠えると共に、ブレゴの頭部目がけて己の頭を振り下ろす。




 ガゴォォォォンッ!!




巨大な岩同士を激突させたような衝撃と音が響き、強烈な打撃にグラつくブレゴの体。ブツかった互いの頭部からは血が噴き出している。



「ぐっ!……お、おのれ…」

「がぁ…がぅぁ…」



白目を剥き、荒い息遣いでブレゴを見下ろすヤナ。両腕を振り上げ、減り込んだ壁を砕き抜け出る。



「ふ…不死身か主は…」

「ぐ……ぐあぁぁぁぁぁッ!!」



再び吠えるヤナの拳が横なぶりに振り抜かれ、鈍い音を発てブレゴの顔面を打ち抜いた。弾かれたブレゴの体は側転のように回転し、床に叩きつけられる。



「うぐぁぁぁぁぁ!!」



ヤナは奇声を上げ、理性を失った野獣のようブレゴに向かい足を振り上げた。そして倒れるブレゴを何度も踏みつける。




 ドゴォンッ!! ドゴォンッ!!




その度にブレゴの体が床の中に埋まっていく。



「ふっ…ふぐあぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」



一段と大きく吠えるヤナは地を蹴り跳び上がる。身を屈め、自らの体重と重力を合わせ埋まるブレゴめがけて急降下。



「…所詮は獣の浅知恵よ…」



埋まる床からブレゴの呟く声。突然床からブレゴの太い尻尾が飛び出した。その尻尾はまるでゴムの如くに伸び、ヤナの腹部を貫通する剣に巻きつく。



「ッ!?…」



そして尻尾に力を込め、一気に引き抜いた。



「ぐぅッ…!!ぐあぁぁっ!!」



ヤナの腹、背中からは大量の血液が噴水のように噴き出した。


そして抜き出した剣を尻尾に巻きつけたまま、ヤナの落下してくる位置。まさに顔面の位置に突き出すと……



「主の体重も、使えるモノだのう」




 ッ……ズンッ…!!




ヤナの体は地に着く事は無く……強靭な竜の尾と刃によって、力無くぶら下がるだけであった。



「死の中でよく考えよ。最強とは何ぞ…理性無くして戦いに勝機は無い。力だけでは、竜には勝てぬぞ。野獣よ…」

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