表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.05 地底国家
61/122

P.061 分かつ想い(2)

 一方外では……アラーケが1人地面に座り、大破して声のしないウィビの残骸を見つめていた。



「ウィビ……なぁウィビ…返事しろよ…」



しかし応える事のないウィビ。アラーケはグっと奥歯を噛みしめ、握る拳を地面に打ちつけた。



「くそっ、ウィビ…師匠…ごめん……ん?」



ふと視線を反らした先…瓦礫の中で何かが一瞬光ったように見えた。腰を上げ、その光りを見た瓦礫に駆け寄り中をあさる。



「っ…こ、これは…」




◆◆◆――…




 場所は再び戻り、ベットに眠るシャクルの横に座るミネア。包帯の巻かれたシャクルの頭に両手をかざし、治癒の力といえる薄い緑の波紋を発動させていた。すると突然ミネアの頬に冷たいものが当たる。



「きゃっ!」



驚き見上げた視線の先には、水の入ったグラスを持ったキリがいた。



「おっと、驚かせちまって悪いな、お嬢さん。ほら、ちょっと休め」

「こ、これは宮殿王様!」



ミネアはすぐさま立ち上がり、キリに向かい深々と頭を下げた。するとキリは下がるミネアの頭をペシっと叩く。


これにも驚くミネアはキョトンとした表情を上げ、キリを見る。



「堅いのは嫌いでな。キリでいい」

「えっ、あ…キ…キリ…様…」

「"様"は要らん」



っと言って再び頭を叩くキリ。



「痛っ……え、で、では…その…キリ…さ…さん…?」

「ん~…ギリギリOKだ」

「痛い!OKなら叩かないで下さい」



何度も叩かれた頭を押さえ、キリが差し出すグラスを受け取り、少々膨れっ面気味に頭を下げるミネア。


キリはベット脇の壁に寄りかかるようにし、床に腰を下ろす。



「ありがとよ、お嬢さん」

「え…?」

「怪我人の治療してくれた礼だ。お陰でオレも万全だ」



そう言って冥王の槍で貫かれた脇腹を指差す。だがそこにはまだ包帯が巻かれている。



「万全って…すみません。皆様の傷も完全には塞ぐ事が出来ず…」

「何言ってんだ、オレにとっちゃあ万全レベルだ。それにお嬢さんのお陰で誰も死人が出てねぇんだ。助かるよ、本当に」

「いえ…わたしは…」



俯くミネアの様子に、キリは小さく息をはいた。



「…まだ、姫さんの居場所は掴めないようだな?」

「はい。今、リグル様の隊の方々が調べて下さってるようで…」

「で、姫さんとはどういう関係だ?」

「主君と使用人(メイド)です」

「そっか…なら心配だよな…」

「はい…主君でもあり、1番…大事な友人で、大切な妹ですから」

「ハハっ、友人に妹か…それなら尚更助け出してやんなきゃな」



ミネアは笑顔で頷き、キリから受け取ったグラスに口をつけた……が、すぐに「ぶはっ!」っと噴き出してむせるミネア。



「ごほっ、ごほっ!!…こ、これお酒じゃないですか!」

「何だお嬢さん、酒は苦手か?」

「苦手と言うか飲めません…普通こういう時はお水ですよね…」

「酒も水も同じだろがよ」



当然と言ったようなキリに苦笑いを返すミネア。するとカムラが部屋の中に入って来た。



「ここにいたのかキリ。捜したぞ」

「おっと、もう1人の"飲めない"ヤツが来たか」

「ん?何の話しだ?」

「いや、何でもねぇよ。そう言う兄貴はどうしたんだよ。捜してたんだろ?オレを」

「あぁ。ミネアさんもちょうどいい。アヤメさんとナック君の居場所がわかったらしく、リグル副隊長が呼んでいたぞ」

「っ!本当ですか!?」




◆◆◆――…




 足早にリグルら帝国兵がいる宮殿跡地に来たミネア達。そこで転がる岩の上に地図を広げ、兵士と話し込んでいるリグルがいた。



「リグル様!居場所はわかったというのは本当ですか!?」



声に気づき、振り向くリグル。駆け寄るミネア達を見て小さく頷き返す。



「我が隊の調べによれば、場所はやはり大聖堂ザーバス本拠地のようです」

「本拠地ですか…確か、ここより北にある【アスフェド大陸】でしたよね?大聖堂が建っているのは」

「そうです。50キロ四方の大陸の大半を占める【ドグマ山脈】。その中腹に位置する大聖堂にです」



するとキリがミネアの肩に手を乗せてリグルを見た。



「ならさっそく行くとしよう。場所がわかりゃ、あとは行って潰すだけだ…もちろん、姫さん助けてな」



そう言って肩に置いた手でミネアの背中を軽く叩き、「行くぞ」と言うように頷いてみせるキリ。だが当のミネアはもちろん、リグルも押し黙ったまま地図を見つめている。



「何だ?どうしたんだよ、急に黙ってよ」

「いえ、宮殿王。少々地形に無理があり、容易に攻め入る事が出来ないのです」

「どういう意味だ?」

「アスフェド大陸は山脈に囲まれた大陸であり、一ヵ所だけ船で上陸出来る砂浜があるんです。ですが、それは大聖堂入口の正面。そこ以外からは船での上陸は不可能な地形」



リグルは地図上のアスフェド大陸を指差した。


キリもその指差された位置を見ると、円形に近い大陸だが、一部分だけ窪んだ形をした大陸がそこに標記されている。



「この窪んだ所が唯一進入可能な砂浜。ですが砂浜までは距離があり、突入後から迎撃を事は必至かと…」

「…なるほど…」



苦虫を噛み潰したような表情で数回頷いてみせるキリ。



「大聖堂の後ろには、とても素手では登れぬ程に険しい岩山…難攻不落と呼ばれる自然要塞に守られた建物なんですよ、ザーバスの本拠地の大聖堂は…」



言い終え、悔しそうに歯を喰いしばるリグルに、眉を寄せて俯くミネア。カムラも頭を強く掻きため息を1つ。



「ウィビさんがいれば、空から攻める事が出来たのにな…」

「そう…ですね…」



ウィビの大破に関しては、ミネア自身もショックな事でもあった。黙り込み俯くミネアに更に空気は重くなる。


だがキリは腕を組むなり鼻で笑い、組んだ腕でカムラを突いた。



「なら"下"から行くのはどうだ?」

「なっ…!?」



この発言にはまずカムラが驚き、一拍置いてミネアとリグル、周囲の兵士達が反応。



「し、"下"って…宮殿王…」

「まさか穴を掘って行くとか…ですか?」



それに答えようと口を開くキリを、遮るようにカムラがキリにつめ寄る。



「【朧火(おぼろび)黄泉路(よみじ)】の事を言っているのか?お前は…」

「あぁ、そうだが」

「あの道は封じられたはず…それにあそこは危険過ぎる。通り抜けられる保証も無いだろ!?」

「ま、待って下さいカムラ様!その朧火の黄泉路とはいったい何なのですか?」



すると振り向くカムラではなく、キリが口を開く。



「朧火の黄泉路は、このサカンドラからアスフェド大陸に繋がる天然の地下通路だ」

「そんな道があるのですか?」

「実際はその昔、モルハス族が鉱石の採掘を進めていく中で見つけたものでな。ちなみにアスフェド大陸も、昔はモルハス領の大陸だったんだ」



確認をするようにキリはカムラを見た。カムラはため息混じりに1度小さく頷き、キリの説明を代わる。



「過去の言い伝えでは、死者の魂が冥界へ出発する地がアスフェド大陸…大聖堂が建つ場所だと言われていてな。死者の魂は地下に作られた黄泉路を通り、冥界へと向かう…っとな。だが言い伝えでしかなかった黄泉路は実在した。それは――…」

「あ~兄貴のまどろっこしい説明はいいっつうの」



キリはカムラの肩に手を乗せ首を横に振る。



「ようするにだ。簡単にまとめると、2つの大陸より掘り進めた坑道が、死者の道で繋がったって事だ」

「宮殿王、そこを進むと言うのですか?」



リグルの問いに「当然」と言ったように何度も頷いてみせるキリ。そしてカムラの肩をポンっと叩く。



「それに確証もある。黄泉路は大聖堂ザーバスに直接繋がってる訳じゃなくて、【カナン湿原】に繋がってるらしい」

「カナン湿原だと?…それに"らしい"とはどういう意味だ?キリ」

「数年前だが、その黄泉路を通ってこのサカンドラに来たヤツがいるんだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ