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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.05 地底国家
52/122

P.052 地下への上陸(1)

 アヤメ達が港を発ち、丸1日が経過してた昼下がり。ウィビの前方、数キロ先に島らしき1つの小さな点が見えてきた。それにまず気づいたのはウィビ。



「あら?…ねぇアラーケ。島っぽいのが見えてきたわよ。あれがカラって島なのかしら?」



その声に操舵室の窓から顔を出すアラーケは、双眼鏡を片手に前方を確認する。



「地図から見ても~…たぶんそうだと思う。あとはカムラに聞いてみ――…」

「そうだ。あれがカラだ」

「どわぁっ!!」



驚きのけ反る勢いで、甲板に双眼鏡を放ってしまうアラーケ。その真後ろには、ぴったりと張り付くように立つカムラがいたのだ。



「ビっ、ビビらせるなよ~…いるなら『いる』って言えって…」

「驚かせてしまってすまない。ウィビさんの声が聞こえたもので、わたしも確認しようと思ってな」



引きつる笑顔で「そっかそっか」と頷くアラーケ。再び前方を見ると、カムラが『カラ』だと言った島の全貌がうっすらではあるが見えてきた。


カラは諸島の1つという訳ではなく、直径おおよそ10キロ前後の円形の島が1つ浮かぶだけ。島全体に広がる緑豊かな森林。中央には標高1000メートルくらいの山があるが、その山には緑の無く岩山といった感じである。海岸は砂浜となっており、外からなら船で要因に上陸出来るようだ。


目視を終えたアラーケが振り返ると――…



「思ってたより小さい島だな」



今度はシャクルが真後ろにいた。



「おわァ!!」

「そうですね」



続いてミネア。



「あひゃーっ!!」

「ばあっ!」



ラストはナックを頭の上に乗せたアヤメが、両手を広げて驚かすようにわざと飛び出してみせる。



「んなぁーっ!!」



オーバーリアクションとも思える程に手足をバタつかせ、床に倒れるアラーケ。その姿にアヤメとナックがケラケラと笑い、「大成功」とはしゃいでハイタッチ。


アヤメらとは違い、おそらく故意ではなかったシャクルとミネアはキョトンとアラーケを見る。



「何やってんだアラーケ」

「そんなに驚かなくても…」



この騒ぎにウィビだけため息。



「…うるさいんだけど…」




◆◆◆――…




 アラーケ以外の全員が甲板に出ると、カラの姿はもうはっきりとした姿で目に映る距離にあった。


そこで島以外にちょうど山に半身を隠すような形で、1隻の船が停泊しているのが見えた。その船は客船や漁船のようなものではなく、軍隊仕様の砲台の装備された黒塗りの軍艦。


カムラが首を傾げながら身を乗り出し、ジっと軍艦を見つめる。



「来客か?…珍しいな」



カムラの横にアヤメとシャクルが並び、共に軍艦を見つめる。するとナックがアヤメの頭の上で「軍艦かっこいいー」っと目を輝かせてはしゃぐ。



「客にしては軍艦なんてずいぶんと重々しいな。何かしたんじゃねぇのか?」

「シャクルじゃあるまいし~」

「うるせぇ」



からかうように笑うナックの頬をつねるシャクル。その後方でミネアは1人、目を細めて軍艦をジっと見つめていた。それに気づいたシャクルが、ナックをつねりながら振り返る。



「どうかしたのか?ミネア」

「いえ…あの船、どこかで見たような気がしまして…」

「ミネアが知ってそうなら、城の船とかか?」

「ランティ城では軍艦は所持していませんので…あっ!思い出しました。あれは帝国の軍事用船です」



その声にカムラは以外そうに振り返る。



「タスマニカン帝国のか?」

「はい。船首部分は隠れて見えませんから確証はありませんが、おそらくは間違いはないと思います」

「だとしたら何故帝国が…しかも正規の入口ではなく、帝国から離れた位置のここから…」



カムラはアヤメ達を見、少し考える。



「手配書の出回ってる2人がいる上に、空からの船……見つかると何かと面倒だ。高度を下げ、山に隠れるようにして入ろう。幸いサカンドラへの入口の穴は、山の麓にあって、今軍艦のいる反対側だ」

「確かにそうだな。おいアラーケ、聞こえたか?」

「OK、聞こえてるよ。こっちは了解だ。ウィビちゃんもOK?」

「はいはい…」



ため息混じりの返答に、高度は徐々に下がっていく。頭を指で掻くシャクルは、苦笑いでミネアを見た。



「その帝国のヤツらが島を囲んでなきゃいいけどな…」

「そう願いたいですね」



それからウィビは海面にグっと近づきカラに向かう。カラの領域に入ると、生い茂る木々のスレスレを飛び、山の麓まで進む。


木々の隙間から地上の様子を伺うシャクル。見た所では帝国の者…生き物すらいるような気配は無い。


カラの領域に入り数分後、ウィビは山の麓に到着した。そこには直結100メートル以上はあろう大きな穴が、麓と地面にかけて空いていた。入口と思える大きな穴を、口をポカーンっと開きながら見下ろすアヤメ。だがその体をシャクルが引き戻す。



「何があるかわかんねぇんだから、不用意に顔出すな」

「あ、ごめん」



シャクルは視線をカムラに向ける。



「この穴か?入口は」

「あぁ、そうだ。このまま降下してしてくれれば大丈夫だ」

「大丈夫って…何かあったらアタシが1番大丈夫じゃないじゃない」



そう言うウィビに、全員が「そりゃそうだ…」と苦笑い。だがウィビはゆっくりと船体を入口に向かい降下させてくれた。


入口の大穴に近づくにつれ暗くなっていく周囲。そして船体が入口にその身を沈めていった。



「アタシに何かあったらすぐ帰るわよ」

「わかったってウィビちゃん。嫁入り前だもんねー?」

「は?アタシ船よ。どこに嫁入りすんのよ」

「あれ?昨日自分で言ったのに!?」

「幻よ。あんたが生まれた事も、全部フィクション」

「ひでぇ!そこまで言う!?ノンフィクションのおれにそこまで言う!?」

「うるせぇぞ…お前ら…」



引きつる表情で呟くシャクルは、暗くなってきた周囲に目を凝らす。周囲は黒ずんだ岩肌。そしてその岩肌を削り、人工的に作られたであろう螺旋状の階段が壁に沿う形であった。一応杭に鎖が繋がれて手すりのようになっているが、階段の幅は人1人分くらいしかないようにも見える。



「階段があっても、あれじゃこの入口から入りたくねぇな…」

「うん。お金くれるって言われても無理だわ、私」

「まぁまぁ、お2人さん。前に説明した通り、この穴は『入口』と言うより『通気孔』だ。正規の入口はしっかりしているから、そう嫌な顔しないでくれ」

「あ、ごめんなさい。別にカムラさんの故郷を悪く言ってる訳じゃなくて…」

「いやいいんだ。わたしもそんなつもりで言ったんじゃない。それにそろそろ面白い仕掛けが見られるぞ」



そう言ってカムラは「見てみろ」と上を指差した。


促され、頭上に視線を向けてみると……



「えっ!ちょっ…何よアレ!?」



見上げた視線の先……つまり今入ってきた入口が徐々に閉まってきていた。岩壁がまるで生き物のように滑らかに動きをみせ、巨大な穴がみるみる内に小さな点になっていく。



「嘘でしょちょっとーっ!」

「アラーケ!ウィビ!早く浮上しろ!閉じ込められんぞ!!」

「うわうわマジかよ!ウィビちゃん上!上!」

「カムラ様!!まさかわたし達を騙したのですか!?」



慌てるアヤメ達に対し、カムラは「まぁまぁ」と言ったように余裕の笑み。しかしその笑みも、閉じられていく入口により暗闇に消されていく。ウィビも浮上しようとしたが間に合うはずもなく、アヤメ達は暗闇の中に閉じ込められてしまう。



「うわぁ~真っ暗ぁ~!」

「アヤメ!無事か!?」

「きゃっ!ちょっ…どこ触ってんのよ変態!!」

「あ?肩か?コレ」

「しばいたろかーっ!」

「駄目ですよアヤメ。女の子なんですから、そんな乱暴な言葉遣いは――…」

「んな事言ってる場合か!カムラお前!」



…――っと、シャクルが声を荒げた次の瞬間、突然緑色の柔らかい光りが、滞空状態のウィビを下から照らし、周囲をほんのり明るくする。


突然の事に驚くアヤメは、シャクルの腕にしがみつき少し怯えたように周りをキョロキョロ。シャクル自身もポカーンと口を半開き状態。ミネアはもちろん、操舵室のアラーケも呆然とした表情で辺りを見渡している。


するとカムラがアヤメとシャクルに歩み寄り、何故か自慢げに鼻で1つ笑う。



「言った通り『面白い仕掛け』だろ?」

「何なんだよ…これ…」

「モルハス族が使える裏技のようなものさ。通常ならこの穴は、約1キロ程降りていかないと地下帝国サカンドラには到達出来ない。だがモルハス族は、内のマザーと地の精霊のマザーを合わせる事で空間移転を行えるんだ」

「空間移転?…瞬間移動みたいなやつですか?」

「まぁ簡単に言えばそうだ。近道出来るってやつさ」

「へぇ~便利ですね~」

「ならこの光りは何なんだよ?」

「それはこの下にある地底湖から発せられた光りだ。見てみるといい」



言われるままに船から身を乗り出し、下を見下ろすアヤメ達。すると数10メートル下に、緑の光りを放つ円形の湖が見えた。その光りは周囲を照らす光り同様に柔らかく、直視しても眩しいものではない。どこか心が休まる光りに感じられるもの。


するとナックがアヤメの隣に舞い降り、首を傾げながらカムラに向く。



「この光り…マザーの力じゃ無いね。何なんだい?これは」

「これはサカンドラの地盤を支える特殊な鉱石が、水に反応して光っている現象なんだ。名前もそのまま【水光鉱石(すいこうこうせき)】。日の光りが当たると効力を失い、ただの石になってしまう物でね。だが暗闇で鉱石と水があれば、半永久的に光り続ける。主に地下施設で利用されるサカンドラの特産物のような物さ」

「すご~い…綺麗な光り」

「あぁ、だな。でも湖って事は、このまま降下していいって訳か?」

「そうだ。この下は地下宮殿エレクサスの裏庭だ、問題無い」



そう言って数回頷くカムラ。だがミネアは少し不安げな表情を浮かべてカムラを見る。



「地下宮殿…良いのですか?王家の庭に着水などと…」

「あぁ、たぶんな。モルハス国家の直系、【ハマナ】王妃はわたしの義理の妹だ。話せば大丈夫だろう」



義理の…妹…?


この単語にアヤメとシャクル、ナックは互い見合い、「っという事は…」っと首を傾げる。当のミネアはみるみる内に表情を強張らせていく。



「ま、まさか…カムラ様のご兄弟の方は…あの…」

「その想像通り、【キリ=ララグド】。旧姓リアーセ。モルハス族の王にして、わたしの実弟だ」


「えぇーーっ!!」

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