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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.04 覚醒の力
44/122

P.044 帝国部隊との接触(1)

 未だに騒然とする広場にカムラが駆け下り、シャクル達の元に近づいてきた。



「無事か?君達」

「おぉカムラ。俺らは大丈夫だが、お前こそ無事か?それに、図書館の連中は?」

「あぁ、大丈夫だ。図書館では誰1人と怪我人は出ちゃいないさ」

「そうか。ならよかった」

「アヤメさんとナック君は…本当に無事なのか?」

「寝てるだけだと思う。たぶん心配はいらないだろう」



答えるシャクルは、ミネアが抱えるアヤメをナックごと抱き上げる。



「すまないカムラ。こいつら寝かせる場所貸りたいんだが、あるか?」

「それならわたしの家に来るといい」

「悪いな」



そうカムラに言って、再び視線を倒れるシレイスとヤナに向けると、傷の回復した兵隊達によって2人は拘束されていた。



「あいつら『人捜し』って言ったが、いったい誰をだ?」

「それはわたしにもわかりませんが…」

「まぁどうせ、ろくな奴じゃないだろうがな」

「そうですね…後は兵の皆さんに任せましょう」

「だな。じゃあカムラ、頼むわ」

「あぁ。こっちだ」



カムラの先導につき、図書館とは反対方向に歩き広場を抜けると、横幅4~5メートルはあろう広い下り階段に差し掛かる。階段は10メートル下り、L字に折れる形。その先は岩壁で見えない。



「この下の層は居住区になっていてな、一応宿屋とか食材屋とかの商業施設もある。だが活気という点では全くだがな」



階段を下りL字の角を曲がると、そこは高さ3メートル程しかない岩の天井が広がる空間であった。その天井に届くか届かないかくらいの、ロッジ風の木造平屋の建物がずらりと並ぶ。


同じような建物が並ぶが、各建物に『5-2-3』のように住所らしき焼き印がされている。少し薄暗くもあるが、建物と建物の間にあるランプが通路を照らしてくれていた。



「なぁカムラ。けっこう家の数はあるが、さっきから誰ともすれ違ったりしないな…ここに人って住んでんのか?」

「住んでいるとも。確か…今はわたしを含めて6人くらいのはずだ」

「6人!?」

「居住出来る家は50くらいはあるんだが、全部が借家でな。以外と割高なんだ。最近ここから南に町が新しく造られて、ほとんどはそちらに移り住んている。まぁ宿屋とかは繁盛しているようだがな……おっと、ここだ。わたしの家は」



カムラは1軒の建物を指差し、歩み寄ると玄関の鍵を開ける。



「さぁ入ってくれ」



促されて入るカムラの家。内装も外観同様の木造。家の中にもランプが幾つか灯り、明るい視界で辺りを見渡せる。玄関からすぐはリビング風の20畳くらいの空間で、中央に丸く10人は囲める机があり、ちょっとくたびれた感のある黒革のソファーがその机を囲む。



「奥に寝室がある。そこを使ってくれ」

「わかった、サンキュ」

「ではわたしは茶でも準備しよう」



そう言ってカムラは寝室とは違った方に歩いて行く。シャクルとミネアは指差された寝室の方に行くと、ベットが4つ、2対2に向かい合う部屋に来た。


どれを使っていいかわからなかったが、とりあえず1つのベットにアヤメとナックを寝かせる。スースーと寝息を発て眠るアヤメとナック。寄り添うようにベットに座るミネアがアヤメの頭を優しく撫でた。



「…霊召士がこれ程の力を持つとは…やはりアヤメが生まれ変わりという話、本当だったんですね」

「俺もアヤメが戦ってんのは初めて見たが、いきなりあんな事が出来るってのには正直驚きだな」



そう言いながら向かいのベットに寝転がるシャクル。



「ちょっとシャクル。勝手に使っては失礼ですよ」

「いや、使ってもらって構わないよ」



声に振り返ると、マグカップを2つ手にしたカムラが立っていた。



「寝室とはいえ、わたしもあまり使用していないからね。わたし的にはソファーの方が寝心地がいいんだ。ベットも使われた方が嬉しいだろうよ」

「すみません…」



カムラはシャクルとミネアにお茶入りのマグカップを手渡し、アヤメの隣のベットに腰を下ろす。



「しかしまぁ、君達の戦いを見ていたが…2人の強さも驚きではあるが、霊召士の力…これは想像以上でしかない」

「ならいい研究になったんじゃねぇか?実際に戦ってる姿見てよ」

「…いや。興味としてはそそられたが、どこをどう調べればいいか検討もつかない。さっきもらった2人の髪の毛だけで、わたしは十分だ」

「おいおい何だよそれ。さっき一緒に行くって言ってたろ?」

「言ったが……あの時はわたし自身、興奮しすぎていたようだ。あんな戦闘を目にして、自分がいるだけで足手まといになるのは目に見えている」



するとカムラは首に下げた鍵を再び手にし、シャクルに投げ渡す。



「ん?この鍵は?」

「説明が途中だったな。改めて言おう。その鍵は精霊を殺す事の出来る呪われし武器、覇剣ダーヴィスの封じられてると言われる、【"天空都市"アルドナ】への道標を示す【双塔ゴルブル】の祭壇の鍵だ」



一気に言われた説明に、シャクルは「?」マークを浮かべてカムラ、そしてミネアを見る。対するミネアも「わたしも知りませんよ」と言ったように首と手を横に振る。



「つまりだ、天空都市アルドナは空を浮遊する島である。今この瞬間も、どこをどう浮遊しているかわからない。そこでこの鍵を、2本で1塔の双塔ゴルブル最上階にある祭壇に刺せば、その場所を教えてくれるという訳だ」

「空に浮かぶ島って…何でもアリだな、この世界は…」

「ですがカムラ様。天空都市アルドナは幻と言われる町のはず。なら覇剣も存在するかどうか――…」

「大丈夫、アルドナは実在する都市だ。ちょっと待っててくれ」



そう言ってカムラは寝室を出ていくと、10数秒程して戻ってきた。その手には1冊の本があった。手にした本をミネアに渡すと、カムラは再びベットに腰を下ろす。



「その本には、帝国が数百年かけて人々の記憶から消し去った、決して語り継がれぬ歴史が記されている。読んでみてくれ」

「えぇ!?そ、そんな『読んでみてくれ』って、わたし達が読んでいいんですか!?」

「どのみち覇剣の存在も極秘事項の1つだったから、別にいいんだ」

「極秘って割りには、あの時さらっと言ってなかったか?お前…」

「まぁ細かい事は気にするな。本は38ページだ」



ミネアは「はい」と頷き、言われたページを開く。シャクルもベットから立ち上がり、ミネアに近づき本を覗き込む。



「何が書いてあんだ?」

「えっと…『マナード歴537年 (※マザーランドの暦名)、幻と言われた天空都市アルドナへ、帝国部隊と研究者達による調査団が派遣された。空に浮かぶ都市へ繋がると言われる双塔ゴルブルへ向かい、彼らはついに天空都市アルドナへと辿り着く。だがその時、50人いた調査団は、たった3人となっていた』」

「…ずいぶんと簡略化された文章だな」

「それは数百年前の歴史の教本だ。今や幻と言われたアルドナと、呪われし武具。あとは精霊との歴史に2つの世界。これは一般教養として教えられていた事らしい。だがこれを帝国は世界の機密事項と定めた…いや、存在を嘘に変えたんだ」

「嘘に…ですか?なぜです?」

「アルドナや武具については危険だからだ。教本にもあっただろ?50人の調査団が3人に減った事が」



シャクルとミネアは頷き返す。



「これは双塔ゴルブルに、覇剣の守護者と言われる【白騎士】と【黒騎士】がいるかららしい」

「白騎士と黒騎士…なんだそりゃ?」

「わたしも実際に見た訳ではないから詳しくは知らないが、この世に生きる者には絶対に倒す事の出来ない、っとまで言われる最強の兄弟騎士だと聞いている」

「は?何だよそれ。絶対に倒す事が出来ないって…精霊でもかよ?」

「さぁな。そこまでは知らないが…試してみる価値はあるだろう。君達には精霊も霊召士もいるからな」

「怖ぇー賭けだな、おい……つぅかずいぶんと詳しいな?機密事項についてよ」



マグカップのお茶をすすりながらベットに腰を下ろすシャクル。



「それは調査団の生き残りの1人が、わたしの先祖にあたるからだ。そしてその本の著者もわたしの先祖なのさ」

「なるほどね。先祖代々の学者家系かよ…すげぇな」

「別にそういう訳じゃない。学者は先祖と祖父、あとわたしの3人だけだよ」



シャクルは2、3度頷き返し、手にしていた鍵をチラつかせる。



「で、この鍵はその先祖からって訳か?」

「あぁ。だがわたしが持っていても仕方ない。君達が持っていた方が幾分もいい」

「…覇剣、ね…」



鍵を見つめるシャクルをミネアが見つめ、開いていた本を閉じて立ち上がる。



「…やはりやめましょう。覇剣は…アルドナを目指すのは危険すぎます。これ以上アヤメの身を危険にさらす訳には…」

「いや、別にわたしはアルドナ行きを強要している訳ではないよミネアさん。あくまで1つの手段として聞いてほしかっただけだ」

「ですが…」

「まぁ落ち着けよミネア。アルドナを目指すのは、とるべき道がそこしか無くなった時だ。いろいろとヤバそうだからな」

「確かにヤバいと言えばヤバいぞ、シャクル君」

「は?何がだよ」

「双塔ゴルブルは帝国の管理下で厳重に警備されているから、入るだけでもひと騒動になると思うからな」



そう言ってカムラは笑いながら立ち上がり、寝室の出口に向かう。シャクルはその発言にため息をはき、苦笑いを浮かべてカムラを見る。



「そういう大事な事は早く言えよ…」



するとカムラは寝室出口で振り返る。



「すまないすまない。ではわたしは外出許可を申請してくる」

「許可?申請?」

「これでも精霊研究所の所長で、帝国に雇われてる身だ。外出には申請が必要なんだよ」

「いやだから…その外出って何だ?って事だよ」

「手段としての鍵、双塔に対して1本な訳がないだろ?もう1本はわたしの弟が持っているから、そこまで君達を案内しよう。一応持ってて損はないだろうからな。本当の最終手段としてな」

「そういう事ね。わかった、じゃあ頼むぜ。…で、もう1本の鍵のある場所は?」

「モルハス族の都【"地下帝国"サカンドラ】だ。そこにわたしの実家がある」



そう言って寝室を出たカムラ……だが出てすぐに「あっ」っと言って戻ってきた。



「君達、移動手段は徒歩か?なんなら帝国に馬車の使用も申請もしてくるが」

「あ~大丈夫だ。こっちにはとっておきの船があるから、何も要らねぇよ」

「そうか。ではちょっと出てくる、ここで待っててくれ」



再びカムラは歩き出し、寝室を後にした。


するとシャクルも立ち上がり、首をコキっと鳴らして大きく息をはく。



「はぁ…いろいろ難しい話しばっかで疲れるもんだ…散歩がてらに次の目的地伝えてくるわ、アラーケに」

「あ、はい。でも手配書の件もありますから、お気をつけて」

「はいよ。じゃあ行ってくる」




◆◆◆――…




 一方その頃アラーケは……



「えっくしっ!!」



甲板でくしゃみを1つ。



「うるさい。汚い。臭い」

「いやいやウィビちゃん!?臭いって何よ!?臭うの!?」

「………」

「む、無視か~い……ははぁ~ん、誰か噂してんなぁ~?イケ――…」

「無い」

「ツっコみ早っ」

「………」



再び無視のウィビ。アラーケは苦笑いを浮かべ海を見つめた。



「てゆーかおれらさ、次の大陸までって言ったのに…絶対忘れてるよね?」

「………」

「ねぇ?」

「………」

「ウィビちゃーん?」

「………」

「放置プレイっスか~?久しぶりの登場なんだしさ、もう少し頑張ろうよ~ウィビちゃ~ん」

「…眠い…」

「おぅ…潮風が目にしみるぜ…」



静かに目を拭うアラーケだった……

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