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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.04 覚醒の力
42/122

P.042 アヤメの戦い(2)

睨みを利かせるシレイスに、アヤメは痛みで叫びそうになる口を強く閉じ、震えながら目を閉じる。



「行けミネア!!」



突然響いたシャクルの声。すぐさまシレイスが振り返ると、ミネアがこちらに向かい駆け出していた。



「アヤメから離れなさい!!シレイス!」

「あらま~…ヤナ相手に1人とは、なっ!」



シレイスはニヤリと笑い、その場にアヤメを投げつけミネアに向かい走り出す。


地面に叩きつけられた痛みと、頭に残るズキズキとした痛みに蹲るアヤメ。



「よくもアヤメを…許しません!!」

「ハッハァ~!!来やがれミネア=リステナァ!!」



怒りの目を向けるが、対するシレイスはニヤつく表情で挑発して答える。そして手にしたナイフを納め、階段の中腹でミネアの飛び蹴りとシレイスの回し蹴りが激突する。



「っ…どういうつもりです…」

「素手相手に武器はフェアじゃない」

「なら女性に対しても紳士あってほしいですがね…」

「あいにくおれは男女平等主義でね、オラァ!!」



シレイスの拳がミネアの腹部に刺さる。衝撃にミネアの表情が歪むも、余る足を振り抜きシレイスの顔面を蹴り上げる。のけ反る頭に追撃の踵落としが炸裂。見事に後頭部を捉えた一撃はシレイスの体を綺麗な『く』の字に折り曲げる。



「とどめよシレイス!!」



再び余す足に力を込めるが、突如ミネアの真横から巨大なものが迫る気配が……横目に視線を向けると、ミネアの体の2倍はあろう大さの石の瓦礫が迫ってくる。



「危ないミネア!!」



視界に捉えていたアヤメの危険を知らせる叫びも、滞空状態のミネアに躱す術は無い。迫る瓦礫の直撃を受けるミネアの体は、入口に立つアヤメの横壁を突き破る。轟音を響かせ図書館内の本棚を薙ぎ倒し、瓦礫と共に床を転がるミネア。



「ミネア!!」



アヤメがミネアを追い振り返るも、散乱した本棚や本。舞い上がる土煙にミネアの姿を確認出来ない。



「ミネア…ミネアァーっ!」



未だ消えぬ土煙に向かい呼びかけるも返事は無い。もし本棚の下敷きになってたら…っと立ち上がるアヤメの腕をシレイスが掴み上げる。



「ちょっ、離してよ!」

「…ったく、邪魔すんなよな…ヤナ」



掴まれた腕を振り回し、抵抗するアヤメを無視するように広場に視線を向けるシレイス。


振り回すも外せぬ腕。「離して」と叫びシレイスを睨むも、当のシレイスはアヤメをまるっきり無視。なら一発でも入れてやる!っとアヤメは拳を握りしめ、シレイスの後頭部めがけ力一杯のパンチ。



 ゴンっ!



「いったぁ~い!」



しかし悲鳴を上げたのはアヤメの方。打ち出した拳を胸に抱え蹲る。シレイスは「ん?」っといった表情でアヤメに振り返る。



「おいおい大丈夫かよ?お姫さん」

「うるさい…同情すんなぁ~…」

「んなモンしてねぇーよ。ほら、アレ見な」



そう言ってアヤメの腕を引き、無理矢理立ち上がらせるシレイス。そしてアヤメの体を己の前に出す。


広場に向いたアヤメの視界に映り込んだのは、ヤナに顔面を掴まれ持ち上げられた状態のシャクルだった。



「シャクル!!」

「ぅぐっ…ぐぁぁ…」



シャクルの体は宙にあり、ヤナの右手だけが頭を繋ぎ持ち上げている。



「シレイス遊び過ぎだ。コイツら弱すぎる…」

「何言ってんだよヤナ。だ・か・ら、手ぇ抜いてあげなきゃ楽しめないでしょ?…つうかお前、"また"予告無しに岩投げんじゃねぇよ!おれに当たったらどうすんだ、この馬鹿力」

「最初のは威嚇の意味だ。シレイスは狙ってない」

「いや問題視してんのはさっきので…ってもういいよ。…さぁ~てお姫様?」



『手を抜く』…その言葉通り、ミネアの攻撃はもちろん、アヤメの渾身のパンチもまるで効いていない様子のシレイス。首をコキっと鳴らし、アヤメの肩に触れようとした瞬間……



「マスターに触るなっ!!」



ナッがク光の矢を構えて飛び出した。



「ナック!!」

「あ~いたっけな、どチビ…」

「くらえッ!!」



シレイス目掛けて放たれる光の矢。



「うおっ!」

「ひゃあっ!」



高速に射られた矢をスレスレで躱すシレイス。…が、その矢はアヤメの頬を掠め、そのままヤナに向かい飛んでいく。



「オ、オイ!ヤナ危ねぇ!!」

「む?…ッ!!」



迫る矢に気づき、咄嗟にシャクルの顔面を離すヤナ。すると光の矢が2人の間を抜けていく。シャクルは地に落ちる体を転がしヤナとの間合いとる。



「くっ…サンキュ、ナック…」

「へへっ、腕落ちたんじゃないの?シャクル君」

「うっ…うるせぇよ…」



ヤナを睨みつつ、ナックに向けた舌打ちをするシャクル。


シレイスは不機嫌そうな表情をナックに向け、シャクル同様に舌打ちを1つ。



「どチビが…ナメんなよォ…」



しかしナックはシレイスに向かい笑顔でピースサイン。



「へへ~ん、こっちも本番はこれからなんだよーだ!ね?マスター」

「え?わ、私?」



ふわりと舞うナックはアヤメの肩に乗る。



「そろそろボクらも戦ってもいいんじゃないのかな?」

「ボ…ボクら?」



そう言った瞬間、ナックの体が青白く光り出す。



「ナック!?体が…」

「集中してマスター!」

「な、何に!?」



何かが起きると察し、シレイスがその手にナイフを握り2人に斬りかかる。


その瞬間、突然アヤメとナックを中心とした衝撃波のような光りと圧が巻き起こり、シレイスの体を広場までの数メートル吹き飛ばす。



「ぐあっ!……ってぇ~…何だってんだよ…」



転がる体をすぐさま起こしアヤメらを睨む…が、そこには強い光りを放つ人1人分の球体あるだけ。目を覆い見るもアヤメとナックの姿は確認出来ない。そのシレイスの後方でも、シャクルとヤナが同様に目を覆い光りを見る。


すると徐々に光りは弱まり、姿を見せはじめたアヤメの左手に納まっていく。



「わっ、えっ、何!?」



当のアヤメも慌てた様子で左手をブンブンと振り回す。しかしその場にナックの姿がない。



「おいアヤメ!ナックはどうした!?」

「えっ、ナック!?あれ?」

『ボクならここにいるよ!』



突然アヤメの頭の中に直接声が響いた。



「へっ…ここに…?」



すると突然アヤメの左腕が勝手に動いて持ち上がる。驚き見る左手が急に熱くなり、その手から黄金に輝く弓が現れた。



「なっ、何よこれ!?」

『だからボクだって言っただろ?マスター』

「この弓が…ナック?」



驚きの表情で口をポカーンっと開いたまま、自らの左手にある弓を見つめるアヤメ。



『そんなバカみたいな顔してないで、ほらいくよマスター』

「バ、バカって何よ!…ってうわぁ!?」



すると再びアヤメの左腕が勝手に動き、シレイスへと向けられる。



「何よコレ!?何で勝手に動く訳!?」

『照準はボクに任せて!さあ矢を引いて』

「矢って?どうやるのよ!?」

『矢の形をイメージして弓から引くんだ!』

「形をイメージって言われても…」



あたふたとしているアヤメを、引きつらせた表情で見据えるシレイス。



「何だよ、コイツは……おいヤナ!何か仕掛けてくる前に殺るぞ!!」

「わかった……ッ!?」



頷き一歩踏み出そうとしたヤナの頬に、突然冷たい感触が当たる。



「待てよ。霊召士さまの初陣だ。邪魔すんなよ…テメェの相手は俺だろ?」



視線だけを声に向けると、近くに倒れていた兵隊のものであろう剣を握ったシャクルの姿が。その姿にヤナもニヤりと不気味に口元を緩ませる。



「そうでなくては困るな…」

「ったく…じゃあヤナ、そっちは任せたぜ…」



舌打ち混じりに首を鳴らすと、ナイフを握りしめアヤメに向かい駆け出すシレイス。



『来たよマスター!!早く矢を引いて!』

「あぁ~もう"引いて"の意味がわかんないってばぁーっ!」



やけくそのように左手に右手を合わせ、矢を引くように右手を引くと、ブゥゥン…!っと小さな音を発て、引かれた腕の道に、弓同様に輝く黄金の矢が出現した。



「うわ!でっ、出来た!」

『今だよ射って!!』

「へぇ!?あっ!」



『射る』と言うより、ナックの声に驚き矢から手を離す。その矢は一糸乱れぬ線で、目にも留まらぬ速度のままシレイスの頬を掠めていく。全く反応の出来ない速度の矢に思わず足を止め、固まるシレイス。



「な…何だよ…今の…」

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