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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.04 覚醒の力
40/122

P.040 明かされた世界の理(3)

「呪われし武器は全部で4つ。剣、双剣、槍、斧。中でも剣、覇剣ダーヴィスは力はすごくてね…力という点だけなら、あの冥王以上だろうね、たぶん」

「ほぇ?冥王以上なら絶対必要じゃないの。ね?」



そう言ってシャクルを見るアヤメ。シャクルも首を縦に振り、ナックに疑問の眼差しを向ける。



「確かに対冥王だけなら必要だ。でも駄目なんだ。覇剣ダーヴィスは呪いの武器…マザーを持つ者は触れる事が出来ない上、触れた者の心を砕き、悪に染め上げる。だから――…」

「ならマザー素養の無い俺が使えばいいんだろ?冥王を斬って、その後は俺を殺せばいい」

「ちょっとシャクル!?何言ってんのよ!?」

「そうですよ、そんな事出来る訳ありません!」



2人に責め挟まれ、思わず身を引かせるシャクル。アヤメとミネアを交互に見、指で頬を掻く。


するとナックが首を横に振る。



「それも駄目なんだよ、シャクル。覇剣自体に触れただけで心は砕かれる。冥王と戦う前にシャクル自身が死ぬ」

「…どうにもなんねぇのか?」

「それ以前に、覇剣は"ある悪魔"の封印に使われているんだ」



そう言ってひたすらペンを走らせているカムラを見るナック。



「書いてる所ごめんカムラ。【魔獣グァルファウニ】って聞いた事ないかい?」

「ん?魔獣…グァルファウニ…グァルファウニ……っ!知っているぞ、魔獣グァルファウニ!呪われし武器の生け贄となった、カナフィーリン族の術士達の怨念が召喚したと言われる魔獣だな」

「さすがだよ、その通り」



指をパチンと鳴らしカムラを指差すナック。正解した事に気を良くしたカムラが大きく頷き、再びペンを走らせる。するとシャクルは深いため息と共に頭を掻く。



「…倒すんじゃなく、封印してるってか…なんとなくだが予想がつくな…こりゃ」

「え?え?どーゆー事?」

「精霊の力を持ってしても倒せねぇ魔獣だった、って事だろ。冥王以上の力を持つ覇剣…それを使わねぇと封印出来なかった程のな。そうだろ?ナック」

「うん、そうなんだ。仮に覇剣を扱う術があっても、持ち出す事で封印は解かれ、魔獣が世に放たれる」

「へぇ~そうなんだ…でもさ、精霊ってマザーの根源なんでしょ?なら倒せない敵なんていないと思うんだけど…」

「マスター、ボクら精霊は戦う為にいる訳じゃないんだよ。豊かな自然を保つ為にいる存在だから、本来戦闘は専門外なのさ」

「あ、そうなの?」

「でしたら、他の呪われし武器は使えないのですか?」



そのミネアの一言に、「それだー」っと言わんばかりの表情を向けるアヤメ。しかしナックは再び首を横に振った。



「他の武器はもう力を失い、どこにあるかすらわからないんだ。まぁあっても覇剣同様、扱う術がなくては意味はないし、封印を代われる程力は持ってない」

「なんだよ…けっきょく八方塞がりかよ」



深いため息と共に頬杖をつき、天井を見上げるシャクル。重くなる空気にカムラが頬を掻く。



「なんかすまなかったな…案を出してみたものの、調べが足りずに力になれなくて」

「いえそんな、カムラ様が謝る必要はありませんよ」

「シャクルが八方塞がりとか言うからだよ、全く…」

「あ、あぁ…悪い」

「いや学者としての力不足に変わりはない。君達がよければだが、もう少し時間をくれないか?ナック君と共に調べを進めたい。あと2日もすれば研究員達も戻し、そうすれば君達の力となる情報を必ず提供出来るはずだ。頼む!」



提供を頼む側のアヤメ達に、なぜか頭を下げるカムラ。



「え、ちょっ、カムラさん?頼んでるのはこっちなんで頭下げないで下さいよ」

「そうですよカムラ様、頭を上げて下さい」

「いや、精霊の研究者として調べたいのだ!」

「なら頼む」

「軽いってシャクル!」



さらっと言ったシャクルにナックがツッコむ。しかしシャクルは「ん?」っていう表情で続ける。



「ならカムラを連れてくか?」

「いやいや『なら』ってそんな軽く…手配書が出てるお尋ね者の一行にカムラを連れて――…ハっ!」



再びナックがツッコむも、言ってしまった『お尋ね者』の単語。口を両手で塞ぎ、ゆっくりとアヤメ達を見回す。アヤメ達も「言っちゃったよコイツ…」のような顔でナックを見て固まっている。



「…てへっ♪」

「『てへっ』じゃねぇよバカナック!」

「何ギャグ漫画みたいに説明しながらバラすのよ!シャクルとミネアが私を誘拐したお尋ね者だって!」

「お前も言ってんじゃねぇよ!!」



怒鳴りながらアヤメの両頬をつねるシャクル。



「にゃんれわわふぃわへぇ~っ(何で私だけぇ~)!!」

「お前は絶対わざとだろうが!」

「ひぃはふぅ~うぇうぃほふぉろぉ~(違うぅ~出来心ぉ~)」

「あ~シャクルちょっと落ち着いて下さいよ~!」



わーわーと騒ぐアヤメ達を他所に、カムラは何かを考え込むように腕組をして目を閉じている。


事の発端のナックは、飛び火がこぬように机の上そろりそろりと歩き、カムラに近づく。



「あれ、どうしたんだい?カムラ」

「………」

「カムラー?おーい」



カムラの顔の前に浮かび上がり、両手を振って呼びかけると、突然目を見開き立ち上がるカムラ。



「うわぁ!」



驚くナックは机の上に転がり落ちる。その気配と声にアヤメ達も動きを止め、立ち上がったカムラを見た。



「よしっ!行こう!」



何かを決意したかのように拳を握りしめ、深く頷くカムラ。動きを止めたまま、キョトーンとした表情でカムラを見つめるアヤメ達。



「わたしも君達の旅に同行しよう…いや、むしろこちらから頼みたい。是非ともわたしを連れて行ってはくれまいか?」

「いや…俺ら、さっき言ったようにお尋ね者なんだが…」

「そんな事はどうでもいい。君達が何であろうとも、わたしは精霊の研究以外に興味がない。正直な所を言うと、精霊に霊召士がいる一行なんて……興味の塊でしかないのだよ!」



興奮もう最高潮。両手を広げ叫ぶカムラ。さすがに引き気味のアヤメ達。



「わたしは学者であり、いち研究者だ。戦闘に関してはからきし駄目だが、情報という点では君達を助ける事は出来る。もちろん…覇剣が必要となった時の道案内も出来る」



そう言うとカムラは首から下げていたネックレスを、ハイネックのシャツから取り出した。そのネックレスはチェーンに人指し指大の黒い鍵がついていた。



「何だ?その鍵は」

「この鍵はな――…」



カムラがそう言いかけた瞬間…ズウゥゥン!っという重低音と共に、小さな地震のように部屋が揺れ、天井から砂煙や小石がパラパラと落ちてきた。


そして運悪く、親指の爪くらいの少し大きめの石がアヤメの頭を直撃する。



「あ痛っ!…う~何で私だけぇ~…」

「アヤメ、大丈夫ですか?切ったりしてないですか?」

「うん、大じょ――…」




 ズウゥゥン!




再び響く重低音に、先程より激しい揺れ……いやもう衝撃波に近いものが部屋とアヤメ達を襲い、部屋にいる全員が突き飛ばされるように床に転げ落ちた。しかし続く揺れや衝撃はなく、アヤメ達は頭や腰を擦りながらゆっくりと起き上がる。



「いったぁ~い…何よ今の…地震?」

「さぁな…つうかこの町で地震あったらヤベぇだろ…生き埋めだぜ俺ら…」



引きつる笑みでミネアを見るシャクル。



「それは避けたい事ですが…この揺れ方はあきらかに地震ではないはず」

「ボクの予想は、山の壁に何かがドーンってぶつかった。かな?」

「っぽいな…何か嫌な予感もする。ナック、ミネア。ちょっと外の様子見に行くぞ」

「OK」

「はい」



しりもち状態のアヤメに手を貸し、ナックとミネアにそう呼びかけるシャクルは、無意識に剣のあった右腰に触れる。



「…っと、今は丸腰だったな」



そう言ってアヤメの肩をポンっと叩き…



「行くぞ、霊召士の萱島さん」

「…いや、怖いっス」



…っとアヤメも肩を叩き返す。


だがシャクルは無表情のまま、アヤメの制服のネクタイを引っ張り歩き出す。



「うぅ~!引っ張るなぁ~鬼畜男ぉ~!」

「いいから行くぞー、家畜女」



そう言って部屋を出ていくアヤメとシャクル。残るナックとミネア、カムラは互いに苦笑い。



「じゃ、じゃあボクらも様子見てくるよ」

「何があるかわかりませんので、カムラ様はこちらでお待ち下さい」

「あ…あぁ…だが何があるかわからんのはお互い様だ。君達も気をつけてな」

「はい。では行きましょう、ナック」

「うん」



互いに頷き合い、部屋を小走りに出るナックとミネア。


すると扉を開いてすぐの位置にアヤメとシャクルがいて、小走りの勢いあまり、ミネアはシャクルの背中に軽くぶつかってしまう。



「きゃっ!…ご、ごめんなさ――…」



ぶつかる背中からその身を離し、謝罪の言葉を言いかけたミネアの視界に映ったものは……図書館の本棚を多数なぎ倒し、土煙を立て転がる5メートルはあろう巨大な岩だった。



「い…隕石…?」

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