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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.04 覚醒の力
38/122

P.038 明かされた世界の理(1)

「どうしたんだ?アヤメ」



 固まるアヤメにシャクルが歩み寄ると、手にしたケースをシャクルに差し出した。



「見てよ、これ…」

「ん?…あれ」



シャクルがケースを見ると、そこには最初と変わらぬ白いマザーの分子がある。アヤメは目の前で何度か振ってみせるも、ただ白い粉が舞い、再び粉として戻るだけ。つまりそれはアヤメにマザーを操る素養が無いという事。



「私…霊召士じゃないの…?」

「嘘だろ…ナックが触った後だからイカれちまったのか?ちょっと貸してみろ」



ケースを受け取りシャクルも振ってみる…が、何も変化は無い。まぁシャクルは生粋の地球人。反応が無いのは想定内の事、シャクルはミネアにケースを差し出した。



「ちょっとやってみてくれ」

「はい」



ケースを受け取り、数回振ってみせるミネア。すると粉は気化していき、次第に渦を巻き始めた。そしてその渦は茶、青、赤、緑の色となり、混ざる事なく渦は回り続ける。



「な、何だよこれ?」

「わたしにもわかりません…元々わたしは風のマザーを使い、脚力強化のファイター型だったはずですが…」


「おっと、こいつは驚いた」



アヤメ達の後ろから、息を切らせたカムラが歩み寄ってきた。



「あ、カムラさん。…あれ?ナックは?」

「外に逃げていったよ。髪の毛を1本採取しようとしただけなんだが……しかし、ミネアさんだったかな?あなたは【治癒術師(ヒーラー)】だったのかい?」

「わ、わたしが…治癒術師(ヒーラー)ですか?」



アヤメとシャクルは同時にミネアを見て首を傾げる。



治癒術師(ヒーラー)とは、地水火風。生命の源と言われる4つのマザー属性を持つ、外傷治療術師の事で、1万人に1人の確率でいる特異体質の者なんです」

「えっと…つまりあれか、斬られた傷を術とかで治せるって訳か?」

「はい、簡単に言えばそうです。ですが、それがわたしだったなんて…全然気づきませんでした」

「ミネアすごぉ~い」



するとカムラは再び奥の机に向かい、また何かを探しはじめた。



「まぁ無理もない。4つもマザー属性が体にあると、お互いに上手くバランスを保ちにくいんだ。だから術を発動出来ず、自分にはマザーの素養が無いと勘違いをする者も少なくはないくらいなのだから。おそらくミネアさんは生まれながらというよりは、後に治癒術師(ヒーラー)として目覚めたようなものかもな。そういう例も存在はする」



そう言うと、資料に埋もれた1冊の本を取り出し、ミネアに「いくぞ」と合図をして投げ渡す。



「これは…何ですか?」

「治療術の学問書だ。研究の為に帝国からもらった物だが…研究に役立つ情報が無くてね。資質を持ったミネアさんに読んでもらった方が、本の存在価値が出るってものだ」

「いいんですか?お借りしても」

「いや、返す必要はない。1人でも多くの術師が世に出る事の方が、研究なんかよりも世の中の為になる」

「すみません、ありがとうございます」



笑顔で深々と頭を下げるミネア。するとシャクルがアヤメの背中を押し、カムラの前に出す。



「すまないカムラ。ちょっと見てほしいんだが…ミネア、ケースを貸してくれ」

「あ、はい」

「ほらアヤメ、振ってみろ」

「う、うん…」



言われた通り、カムラの見守る中ケースを振るアヤメ。だがやはり粉は気化せず、ただケースに降り積もるだけ。その光景を見るカムラは数回頷き、小さくひと息。



「…残念。お嬢さんにはマザーの素養は無いようだ。まぁヒューマ族の大半は素養の無い場合が多い。気にやむな」

「やっぱり私…違うんだ」

「なぁカムラ。本当にコイツに素養は無いのか?何かの間違いだろ?」

「いや、素養が無いというか…あったとしても、術として発動出来ない。っと言った方が正しいかもな」

「嘘だろ…」

「そんな…」



がっくりと肩を落とすアヤメとシャクルに、カムラ首を傾げ2人を交互に見る。



「どうしたのだ?お嬢さんにマザー素養が無いと何かマズいのか?」


「それはボクが説明するよ」



するとナックがシャクルの肩に舞い降りた。



「ナック…お前どこまで逃げてったんだよ?」

「町の外」

「どんだけだよ…」



アヤメはシャクルの腕を掴み、体ごと正面に向けてナックを見る。



「ねぇナック。まさか私を騙したとかじゃないわよね?」

「そんな騙すなんて…マスターはちゃんとマザー素養はあるよ。ほら、そのケースを見てごらん」

「え?…あっ」



シャクルの腕と挟み持っていたケースを見ると、ナックのような金に輝く六角形の石ではなく、白い丸い石がそこにはあった。その石を見たカムラは、目を見開きケースに駆け寄る。



「なっ…何だこれは!?白い源珠だと!?こんなの見た事がない…」



アヤメの手を取り、ケース内の白い源珠をまじまじと見つめるカムラ。ナックは視線をアヤメからカムラに移す。



「源珠が形成されたって事は、マザー素養があるって事だよね?カムラ」

「あ、あぁ…素養どころじゃない。精霊に匹敵するくらいのマザーを持っているという事だ…」



そう言いながらもカムラは白い源珠から目を離さない。



「じゃあさっきは何で私が振っても反応が出なかったの?」

「それは精霊の実体化について話した時に言った、実体化による精霊のマザー消費を抑える力が関係してるんだ」

「…そんなの聞いたっけ?」



首を傾げるアヤメに、シャクルの肩でコケるナック。



「言ったよ…も~、もう1回言うけど、精霊が実体化している間は膨大なマザーを消費する。でも霊召士は消費マザーを抑え、補い、なおかつ自然界にマザーを送り出す事が出来る術士だって」

「あ~聞いたかも。つまり、天然のエコ人間って事ね?」

「ごめん、何を言ってるかわかんないけど……要するに精霊との契約に力を使う霊召士は無駄にマザーを放出はしない為、普段は表にマザーを出さない。それにたぶんマスターは、まだ霊召士の力をコントロール出来ていない。解放の仕方もわからないはずさ。だろ?」



そりゃそうだ、っと頷くアヤメ。



「あとは慣れだね。これは徐々に練習していこうよ、マスター」

「うん、わかっ――…」

「ちょっと待った!!」



アヤメが答えているのを切り、カムラが掴んだままのアヤメを腕を引き寄せる。



「ひゃあっ」

「お嬢さん!今『霊召士』と言ったな!?」

「えっ、あっ、はい…」

「本当か!?本当になのか!?」



睨み付けるような表情でカムラに迫られ、アヤメは半べその顔で何度も頷く。シャクル達も突然の事に、唖然とその光景を見ている。


するとカムラはアヤメの腕を離し、再び奥の机に走る。



「何て事だ、古い文献で読んだ霊召士がまだ実在していたのか…光の精霊に霊召士…何という日だっ…!素晴らしい、これは新しい発見が生まれるはずだ!!」



そう言って振り返るカムラの手には、1冊の本と……ナイフがあった。



「っ!?解剖いやぁーーっ!!」



悲鳴と共に部屋から走り去るアヤメとナック。



「あっ!おい待ってくれ!……ん?」



っとカムラは手にしたナイフを見て……



「ハっ!しまった、ペンと間違えた」



そう言ってペンに持ちかえ、アヤメ達を追って部屋を走って出ていくカムラ。


その光景にシャクルは深いため息を1つ。横目にミネアを見た。



「こりゃいったん落ち着かねぇと話しが進まねぇな…」

「ですね。カムラ様にもわたし達の旅の真意をお伝えした方が、話しは円滑に進むと思いますし」

「そうかもな。…っていうかアイツら…」



アヤメ達が出ていった扉に呆れ顔を向けると……



「きゃあーっ!!殺されるーっ!!」

「腹開かれるーっ!!」

「違う!!待ってくれ!髪1本!髪の毛だけでいいから!」



ドタバタと図書館内を走り回っている音と、アヤメ達の声が響いてくる。


シャクルはため息をはきながらミネアの肩を叩き……



「ミネア。頼む」

「えぇ!?わたしがですか!?」

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