P.033 大陸脱出(3)
「どりゃあぁッ!!」
橋の袂に到着したアラーケは交戦中。複数のランティ城の兵士達も一緒だ。
「いったい何匹いやがんだよコイツら!?」
すると突然アラーケの頭上を、風を切るような音と共に2メートル程の金色の鳥が通過していく。
新手か!?っと見上げた視界に、上空から舞い降りてくる人影が映る。見つめるアラーケの瞳が一瞬で見開いた。
「ミ、ミネアちゃん!?」
なんと舞い降りたのは、両手にトンファーを握り立つミネアだった。ミネアはアラーケを見るなり「あっ」っと表情を驚かせる。
「あなた…アラーケ?」
「ハハ…こんなイケメン、おれしかいないっしょ?ミネアちゃん」
「ふふっ、変わってないわね」
「そーゆーミネアちゃんは、変わったって言うか、実ったね?」
そう言ってアラーケは、大きめなミネアの胸を指差しケラケラと笑う。…っと、ミネアはアラーケの鼻をつまみ、そして捻る。
「いたたたたたぁ~!」
「変態…」
するとそのミネアの肩に、いつの間にかナックが立っていた。
「無事到着したね?」
「はい、ありがとうございますナック様」
未だ痛がるアラーケの鼻を捻り上げたまま、ナックを見て微笑むミネア。
「別にナックでいいって言ったじゃないか。じゃあ、ボクはマスターを捜しに行くよ」
「わかりました。ここは任せて下さい」
悲鳴を上げ続けるアラーケを横目に、頷き飛び去るナック。するとようやくアラーケを解放するミネア。
「いっ、たぁ~~…褒めただけなのにぃ~…」
「どこがよ。デリカシー無さすぎなのよ、昔っから――…」
「グルゥアァッ!!」
鼻を擦るアラーケの背後から、醜い奇声を上げたワーグが飛びかかってくる。
「アラーケ!!」
「どわぁ!!」
瞬時にミネアがアラーケに脚払い。コケゆくアラーケの頭上をワーグの剣が通過していく。
脚払いの体勢から身を反転させ、振り上げるミネアの蹴りがワーグの顎に炸裂。鈍い音を発て、腐敗で耐久性のないワーグの首が千切れ飛ぶ。
「大丈夫?アラーケ」
何事も無かったように平然とした様子で、アラーケに手を差し出すミネア。
「あ、ありがと、ミネアちゃん…ってこんな強かったっけ?」
「お城じゃいろいろあるのよ」
手を取り立ち上がるアラーケ。しかしすぐさまワーグ数体が襲いかかってくる。
「そうかい…城ってランティ城だろ?…城ってすげぇトコだな!」
「えぇ、とってもね!!」
ミネアのトンファー。アラーケのハンマーがワーグを弾き飛ばす。これを皮切りに、ミネアとアラーケの元にワーグの軍勢が雪崩の如く押し寄せはじめた。
続く戦闘の中、ミネアが口を開く。
「アラーケ、お父さんは?無事なの?」
「…3年前に病気で死んだ…!!」
「ッ!!……やっぱり…連絡無いからまさかとは思ったけどね…」
「連絡無いのはお互いに、だろ?…泣くなよ…今は、さッ!!」
「泣かないわ、よッ!!」
話しながらもワーグ達を叩き伏せていくミネアとアラーケ。
ランティ城の兵士達も徐々にミネアに気づきはじめるも、圧し寄せるワーグに手一杯。橋の交戦は激しさを増していった。
◆◆◆――…
身を隠し、1人取り残されたアヤメ。
「絶対私忘れられてるじゃん…これ…」
隠れはしてるものの、シャクル達は既に近くにはいない。完全においてきぼりをくらったアヤメ。少しむくれた表情で、身を隠した大きな木箱から顔を覗かせると…
「あ…あれ…?」
目の前が暗い……ゆっくりと視線を上げると、1体のワーグが木箱の上からアヤメを見下ろしている。
「アハハハ~…うそぉ~ん」
ワーグは表情を動かさず、手にした槍を振りかざす。
「いやぁ~~っ!!」
思わず叫んで逃げ出すアヤメ。ワーグもその後ろを追ってくる為、とにかく全力疾走で逃げるアヤメの前方に、兵士と交戦中のシャクルの姿が見えた。
「シャクル~!!」
「っ!?…アヤメ!?」
「助けてぇ~!!」
「姫君!?」
兵士もアヤメの姿に気づく。そして追う後ろのワーグを見た瞬間、シャクルと兵士は競り合いを止め走り出す。
すると突然シャクルと兵士の間を光る棒状の物が通り過ぎ、アヤメの頬を掠めワーグに刺さる。
「ギャアッ!!」
「…へぇ!?」
振り返り、ワーグの額に刺さる光の矢を確認。
「この矢…」
シャクルも足を止めて振り返る。するとそこには矢を放ったナックの姿が。
「お待たせ!」
「…へっ。遅ぇよ、バぁカ…」
「アルシェン姫!!」
兵士がアヤメの傍に向かうも、アヤメは兵士の真横を走り抜ける。そのアヤメの背中を見送りキョトーンの兵士。
「ナック~!シャクル~!」
走るアヤメは勢いそのままにシャクルに抱きつく。
「お前またかよ…何で出て来たんだ」
「だって見つかったんだもん!てゆうかシャクル!私の事忘れてたでしょ!?絶対!」
「あぁ、半分忘れてた」
「素直に言うなーっ!てか半分て何よーっ!」
「まぁまぁ、いいじゃないか。マスターが無事だったんだしさ」
「あ、ナックありがとね!助かったよ」
「へへ、マスターの為だもん。…あ、そうそう。新しい仲間も連れて来たよ」
「ほえ?新しい仲間?誰、それ」
「今までの流れからして1人しかいねぇだろうが…ナック。この状況とアヤメを頼んでもいいか?」
「はいはい、OK」
笑顔で答えるナック。シャクルは頷き返して兵士に向いた。未だ戸惑いの表情の兵士から視線を外し、シャクルは抜き身の剣をそのままに、町と大陸を繋ぐ橋に向かい走った。
その背中を見送るだけの兵士は、ゆっくりとアヤメに歩み寄る。
「ア…アルシェン姫…?」
「へ?…あ、貴方は?」
「自分は、王国一等兵士【イエン】と申します…これはいったい…」
お尋ね者とされていたナックを肩に乗せ、シャクルとも親しいアヤメを見て、戸惑いを見せるイエン。
「貴女様はいったい…」
「そ、そんな事より!貴方こそ急ぎなさい!!」
「は、はい!?」
「私なんかよりも早く皆を助けなさい!!」
「しかし姫君…」
「私はもう逃げませんから!急いで!!」
「は、ハッ!!」
慌てたように敬礼をして走り出す。
「お~やるね~マスター」
「どう?お姫様に見えた?」
「見えましたよ、アヤメ姫」
◆◆◆――…
リムドアを戦場としたワーグとの戦いは続き、町の中のワーグはほぼ殲滅に近づいていた。橋の袂の戦いは続き、アラーケとミネアの加わった城の兵士達の戦力は徐々にワーグ達を殲滅させていく。残りもあと僅か。
「アラーケ!!」
「お、シャクル!やっと来やがったか」
合流したシャクルはミネアの姿を確認。
「…無事みたいだな」
「はい、お陰様で」
ミネアに頷き返し、辺りのワーグの数を見渡す。もう50はいない…シャクルはアラーケの肩を掴む。
「頼みがある」
「えっ、頼み?おれに?」
「向こうにアヤメと小っこいのが1人いる。ウィビに乗せて飛べ」
「は、はぁ!?」
「いいから急げ!俺らの相手は化け物だけじゃねぇんだよ」
「え!?何言ってんだよ!?」
理解出来ていないアラーケから視線をミネアに向け、再びアラーケに戻す。
「俺達拾う事も忘れんなよ?」
「俺…達ぃ?」
「いいから早く行け!!」
そう言ってアラーケの背中を押す。
「おわぁ!?…わ、訳がわからん…」
首を傾げつつもとりあえず走り出すアラーケ。
「そう言う事でいいんだろ?ミネアさんよ」
「えぇ、構いません」
「了解。じゃあ残りを片づけますか」
◆◆◆――…
一方アヤメとナック……ワーグは周囲に数体だけ。アヤメはナックの後ろで光の矢が次々とワーグを射抜いていくのを見守るだけ。
「よっ!弓名人ナック殿~!」
「いや~褒めても何も出ないよ~♪」
そして緊張感も消えていた……
「アヤメちゃーん!!」
「あっ、アラーケ」
そこに駆け寄るアラーケはナックを見て一瞬びっくり。
「カナフィーリン族…?にしちゃあチビ過ぎだな…」
「チビとは失礼だな!否定はしないけど…ボクは光の精霊ナック!」
「へぇ!?光の精霊!?うそ!?このチビが!?」
「チビって言うなーっ!!」
「あ~もういいから!この人はアラーケ。船の大工さんで、ミネアさんのお父さんのお弟子さんなの」
「じゃあ…ボクらの味方なの?」
「そう、味方よ。ウザい所もあるけど一応いい人よ」
「ちょっとアヤメちゃん…少々引っ掛かりがあるのですが…ってまぁいいや。とにかくシャクル命令だ。行くよ」
アラーケはアヤメの腕を掴み引っ張る。
「えぇ?ちょっ、ちょっとぉ」
「ほら、チビも行くぞ!」
「ボクはナックだって言っただろ!」
「じゃあナックこっちだ!早く!!」




