P.031 大陸脱出(1)
約30時間前…場所はランティ城に移り、とある一室。窓際に置かれた小さな机の上に座るナックと、その椅子に座るミネア。
「いやぁ~助かったよ。ありがとミネア」
「わたしを見たからって、あんなに逃げなくてもよかったんですけどね」
どうやらここはミネアの部屋のようだ。
「ごめんよ。だってミネアくらい強い人が追いかけて来たら誰だって逃げるよ。でもさ、何で兵士でもないミネアはそんなに戦えるんだい?」
「王族のお世話係ですから。最低限の力をつけておかねば、姫様をお守りする事は出来ません。常に傍にいる身ですから。常に…」
呟く声で窓の外、遠くを見つめる。
「だからわかります。本当のアルシェン様の事…」
「そっか。やっぱりそうだよね。でもいいのかい?逃げなくて。君の状況は…」
「いいんです。この事態は放っておけませんから」
「…わかった。ボクでよければ手伝うよ」
「ありがとうございます。でしたら、そろそろ教えて頂けますか?全ての真実を」
「うん、そうだね。わかったよ」
すると突然部屋をノックする音がする。
「ミネアさん、いますか?」
「…はい」
「国王様がお呼びになってます。国王の間までお越し下さい」
その言葉に2人は視線を合わせる。
「来ましたね」
「うん」
ゆっくりと立ち上がるミネア。するとナックが肩に乗る。
「?」
「さっき言ったでしょ?手伝うってさ」
「ありがとうございます。ですが、本当に無理はなさらないで下さいね?危険になったらお逃げ下さい」
「最後まで手伝うよ」
視線を合わせたまま軽く微笑み、扉に向かって足を進めた。
◆◆◆――…
場所と時は戻りリムドア。
「ここが、ミネアの家?」
「うん。2人がどういう繋がりかは知らないが、ミネアちゃんの親父さんはおれの師匠。コーレイ=リステナだ。おれは昔っからミネアちゃんの親父さんに弟子入りして、この家に厄介になってたからさ。おれにとっては姉ちゃんみたいな存在なんだよ、ミネアちゃんは。でも7~8年前かなぁ~?親父さんと大喧嘩して出て行ったきり…って所かな」
「なるほど、それでミネアはコーレイの名前を出したって訳か」
「そうみたいだね」
「どっかで腰を落ち着けてる、っては聞いてたけど…ミネアちゃん元気でやってんの?んで、今どこにいるんだい?全然連絡ないからさぁ」
「それなら、今はランティ城っていう所にいて、私のお世話――…」
「ッ!?バ、バカっ!」
咄嗟にシャクルはアヤメの口を塞ぐ。アヤメもハッとし、おとなしく塞がれていた。
そんな2人を、アラーケは疑問の眼差しで凝視。とりあえず引きつる笑いで対応するしかないシャクル。
「ま…まぁミネアは元気でやってる、心配はいらねぇよ」
「そっか、ランティ城かぁ……ん?って事はやっぱり」
ハっとしたようにアラーケがアヤメの顔を覗き込む。咄嗟にアヤメはその視線を外す。さっきはせっかく話しをはぐらかせたのに、自ら墓穴を掘る形に冷や汗が出る。
「い、いや…た、たまたま姫様と似てるからって、ちょっと城に呼ばれた事があって~そこでぇ~…ね?私が姫な訳ないじゃない…」
何か無茶苦茶な言い訳ではあるが、後はもう愛想笑いで切り抜けるだけ。アラーケも首を傾げながらひと息はく。
「…まぁミネアちゃんが元気ならいいんだ。師匠も死ぬ間際『心配かけたくないから絶対に言うな』って言ってたし。知ったら驚くだろうな…」
「うん、そうだよね…」
「あ、そうそう。話し急に変わるけど、2人は今日の宿は取ってあるの?」
「いや。その辺は全く」
「なら家に泊まっていきなよ。これも何かの縁だ」
「え、いいの?」
「うん、全然いいよ。どのみち捜してた人間の家なんだし、結果こうなってただろうしね。まぁ何にもない家だけど、ゆっくりしていきなって」
「悪いな。助かるよ」
「へへっ、いいって事よ。何ならアヤメちゃんはおれと――…」
「それ以上言ったらひっぱたくわよ。言いたい事はわかるから」
「承知しました~…」
こうしてアラーケの家に泊まる事となったアヤメとシャクル。
アヤメは町を見て歩きたいと言ったが、もちろんそれは止められた。窓の外に城の追っ手の姿が見えたからだ。仕方なく待機するも、嬉しい事もある。久しぶりのお風呂にベッドだ。お風呂に入りさっぱりし、ベッドに横になったアヤメ。まるで吸い込まれるように眠りに入っていった。
◆◆◆――…
翌朝となり、ゆっくりと目を覚ますアヤメ。まだ寝ぼけた体を起こし、眠い目を擦る。窓の外を見ると太陽がだいぶ高い位置にあった。
「ありゃ…お昼?」
昨日の夜から昼まで爆睡していたようだ。頭も寝ぐせで爆発状態。なんとか直そうと手ぐしで髪を撫でていると、扉をノックする音がする。
「起きたか?アヤメ」
「あ、シャクル…今起きたとこ」
「やっとか…開けても大丈夫か?」
「うん」
寝ぐせ頭に寝起き顔…女の子として、とても見せられない状態だが、シャクルに対してはもう飾る必要はなくなった部分が多い。シャクル自体もこのアヤメの寝起きの悪さには馴れっこになってきていた。
「相変わらずの爆発ぶりだな」
「むぅ~…うるさいなぁ…」
寝ぐせ頭をぐちゃぐちゃに掻き回すアヤメ。
「とりあえずそろそろ飯だからな。顔洗っておけよ」
「は~い………ZZZ…」
「おいおい…」
再び起こされて、顔を洗い寝ぐせを直し、シャクルが作る朝食――…ん?昼食か?とにかくそれを食べるアヤメ。しかしシャクルが料理出来る事には少々驚いた。しかもこれまた美味しいんだわ。
その食事中、
「ところでさ、2人はこれからどうすんだい?」
「もう1人の仲間を待ってんだよ」
「そのお仲間さんは、この場所知ってんのかい?」
「いや、正確な場所までは知らない。でもリムドアっては伝えてくれてるはずなんだ。だから…」
「あ~大丈夫大丈夫。言いたい事はわかってるって。気の済むまでここにいなよ。おれは全然構わないからさ」
「悪いな」
「いいって事よ!くぅ~俺ってやっぱ優すぃ~…って誰がイケメンだっ!」
意味なく空にツッコむアラーケ。
「黙ってればいいヤツなのにな…」
「うん…おしい人だよね…」
「愛されてんなぁ~おれ♪」
「褒めてねぇーよっ!」
そうして賑やかな食事を終えた3人。その後一応女子としてアヤメは洗い物をしている。アラーケとシャクルは船のウィビの元にいた。
「しっかし本当に不思議だなぁ。船が喋るだなんてよ」
「まぁね~」
するとウィビはちょっと不機嫌そうに2人の方を向いた。
「何よジロジロ見て…気分悪いわ」
「しかも口が悪ぃな」
「ハハ…それシャクル君が言うんだ…」
すると突然、
ガァシャァァァンッ!!
っと、何やら建造物でも崩れたか!?の音と地響きが鳴り響く。




