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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.03 世界への船出
30/122

P.030 生きる船(3)

「どうだい?立派なモンだろ?」



自慢気にアラーケは両手を広げる。



「いや…アラーケ、これって…」

「う…嘘でしょ…」



唖然とする2人の視線の先……船首の突き出た部分、祈りを捧げる美しい女性の上半身だけの像が彫り込まれている。船にはよくある事。海路を導く女神として、航海の無事を祈った守り神としてでもある。しかしその像が……



「し…死んでるのか…?」



木で造られてる女神の像のデザインが…ぐったりしたように頭と両手を垂らし、うなだれるポーズになっていた。



「奇抜なデザインしてんな…おい…」

「あ~あれは寝てるだけだよ」

「ふぅ~ん、寝てるだけなんだぁ~…って、何よそれ!?」



摩訶不思議発言に驚く2人に対し、アラーケはケラケラと笑いながら、ぐったりした女神に向かう。



「おぉーい!お客だぞぉー!起きて挨拶しなって!」

「寝てるって何なんだよ…意味わかんねぇって…」



相変わらずの困惑の表情の2人。しかしアラーケは女神の像を見上げ、事を進めていく。



「お~い!起・き・ろ~!」



両手を口のメガホンにし呼ぶと、女神の像がゆっくりと起き上がり正面を向く。


挿絵(By みてみん)


「なッ!?」

「うっ、動いたぁ!?」



驚く2人に振り向き、得意気な笑みを浮かべ腕を組むアラーケ。そして再び女神像を見上げる。



「ほら、お客さんだぞ。挨拶しとけよ」

「…何よ…人が気持ち良く寝てたってのに」

「しゃっ、喋れんのかよっ!?…嘘だろオイ…」

「嘘なんかじゃないよ、現実さ」

「あら?アンタ達、誰?」



アヤメとシャクルを交互に見て、首を傾げる女神像。当のアヤメとシャクルは口をあんぐりと開き、何も言えない状態。



「この女の子がアヤメちゃん。んでおれに負けじのイケメンさんがシャクルだ」

「あ、そう」

「いやいや自己紹介しなってもう、クールレディなんだから……えっと、こいつは【ウィビィーシャ】って名前なんだ。おれは【ウィビ】って呼んでるけどね」



結局アラーケが紹介する形となった。その【ウィビ】という女神像は、アヤメ達をチラリと見てから、眠そうに大きなあくびをする。



「アラーケ…コイツはいったい…」

「おれにもはっきりした理由はわからない…師匠と一緒に船造りしてたら急にさ」



3人はウィビを見上げる。するとウィビは興味無さげに辺りをキョロキョロ。



「おれも最初は驚いたさ。でも何かさ、面白いじゃん?こーゆーの」

「面白いって言っていいのかしら…」

「でも本当に面白いのは、もう1個の仕掛けなんだ」

「仕掛け?」

「そう。この時代海ばっかじゃ面白みがないってモンよ。そろそろ人間も空に旅立つ時代っしょ?」

「空って…まさか…」

「まさか飛ぶの!?この船」

「へっへぇ~♪そいつはどうかなぁ~。な、ウィビ?」

「………」



無言ではあるが、少し得意気な表情のウィビ。



「じゃあ飛ばせてみせてよ!見てみたい!」



これにはさすがにアヤメも目を輝かせる。



「ね?見たいよね、シャクル?」

「まぁ本当に飛ぶなら…確かに見てはみたいかもな」

「そんなに見たいなら乗れば。ちょっとだけならイイわよ」

「お?ウィビちゃん太っ腹ぁ~!そうと決まれば乗った乗ったぁ~♪」



嬉しそうにアヤメとシャクルの背中を押して船に向かうアラーケ。


そしてかけられた梯子を上り、3人は甲板に上がる。甲板にはまだ作業中と思わせるように、工具や木材が転がっている。


するとアラーケが咳ばらいを1つ。



「さてさて、これからがお楽しみだ!ウィビちゃんお願いねー」

「はいはい…」

「『はいはい』って…本当に飛ぶのか?この船」

「何よ…まだ信じられないの?」

「まぁな…(っと言うか、木が動いて喋ってんのが1番信じられないがな…)」

「あらそう?ならあなたの驚く顔見るの楽しみだね…いくわよ?」

「おっ、いきますかぁ~!アヤメちゃん?怖かったらおれに掴まっていいよ」

「………」



無の表情のままにゆっくりとシャクルの袖を掴むアヤメ。



「OK、お約束だよね…」

「ほらいいからいくわよ」



ウィビの声と共に船体が小さく揺れはじめ、船底に接した水面に波紋が広がる。そして静かに、ゆっくりと持ち上がるように船が上昇しはじめた。そして船底は完全に水面を離れ、船が宙に浮かんだ。



「う…浮いた…本当に浮いてる…」



唖然とした表情で辺りを見渡すアヤメとシャクル。その姿を見てニヤつくアラーケ。ウィビも若干。



「どうだい、すげぇだろ?」

「何言ってんのよ。あんたじゃないでしょ…アタシが凄いのよ」

「そうだね、ごめんごめん。な?2人共、ホントに飛んだろ?」

「あ…あぁ…すげぇな、本当に…」

「でも、何で飛べるの?」

「さぁ?」

「知らないわ」



逆にアヤメ達に聞くような表情で、さらっと答えるアラーケにウィビ。



「え?」

「いや当人だろ…」




◆◆◆――…




 場所は移り、元いた部屋に戻った3人。



「ごめんよ。本当にわかんないんだよ。何でウィビは話せて、空を飛べるのか…」

「別に問い詰めてる訳じゃないんだ、謝る事もないさ。むしろいいモン見せてもらったよ」

「そか。…そういやぁ2人は旅人なんだろ?この町には定期船に乗る為に来たのかい?」

「あ、いや。人捜しをしてんだ。この町に、コー…コレ?ん、コー…?」



そんなシャクルを見てアヤメがため息。



「コーレイ!…もぉー、お約束化されそうでヤダこの流れーっ」

「うるせぇな…で、それなんだ。そいつを知らないか?」



するとアラーケはキョトンっと2人を見つめた。



「『コーレイ』…か?」

「あぁそうだ。知ってたら教えてほしいんだが」

「もちろん知ってるよ」

「え!?」

「ほ、本当か!?」



顔を見合わる2人。



「でも、もうこの町にはいないよ」

「え?いないの?」

「うん。死んだよ…3年前に」

「何だよ…故人だったのかよ…」

「うん。2人の捜してる【コーレイ=リステナ】は、おれの船大工の師匠だったんだ」

「へぇ~師匠ねぇ…じゃあミネアの言ってたのは船大工だったのか…」



その言葉に「ん?」っと反応するアラーケ。



「ミネ…ア?なぁ今、ミネアって言わなかったか?」

「あ…あぁ。言ったが…」

「ミネアって……あの【ミネア=リステナ】の事かい?」

「へぇ~ミネアさんってリステナって苗字なんだ……ってリステナ!?」



ハっ、としたようにアヤメとシャクルが視線を合わせる。



「まさか!?」



このシンクロに驚くアラーケ。



「おっ、おう。知ってるも何も、この家はそのミネアちゃんの家だよ。実家」

「え、えぇ!?」

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