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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.009 闘技の祭典
117/122

P.117 ドッペルアビリティ(3)

 3人の登場に、アヤメら同様、リーシェにレフェリーもキョトーンの表情。会場全体も未だ「何が起きた…??」とザワついている。


だがアヤメからすれば、この3人の登場でひと安心。リーシェに害無くリーシェ自身の暴走も止まるからだ。思わず安堵の息がもれる。


するとシャクルの落下によって潰されていたカヌイが、頭を擦りながらゆっくりと起き上がる。



「あたたたた…何やいきなり…」



そんなカヌイにシャクルが振り向く。



「あ~(わり)(わり)ぃ。怪我は無いか――…って、元々怪我だらけだったな…大丈夫か?」

「ん?…あ…あぁ…だ、大丈夫や。一応うちは治癒術師(ヒーラー)やから…」



数回頷き、カヌイは自分の傷ついた肩口に手を翳して治癒の力を発動させる。そしてシャクルの顔をジっと見つめるカヌイ。



「何でシャクル=ファイントがここにおんねん?」

「ん?俺の事知ってんのか?」

「知ってるもなにも、あんた初戦出とったやんか。それに手配書も」



これには「あ、そっか」と納得のシャクル。



「しっかし…モルハスの王に、あんたと同じ手配書も出回っとったミネア=リステナ…あんたらどーゆー関係や?」

「どういうって…ただの仲間(つれ)だよ、俺らは」



そう答え、ミネアの治癒の力により治療を受けるリーシェを顎で指す。その示す方向にカヌイが視線を向けようとした瞬間、突然カヌイの頭が強い力で押さえつけられた。


突然の事に体をビクつかせるカヌイが、己の頭を押さえる気配に視線を向けると……そこにはキリ。威圧感満載の表情でカヌイを見下ろすキリに、カヌイの体は再びビクつく。



「なっ、何や…?」

「このタイミングで悪いが、泥棒のネェちゃん…地下宮殿からお前が持っていった金品の数々、覚えてるか?」

「…さっ…さぁ~何の事やら――…あたっ!!」



引きつる表情で視線を反らすカヌイの頭に、キリのゲンコツが投下。



「持っていった分はちゃんと返せよ。1点余さずにな」

「はぁ!?返すもなにも、もう売ってしもたわ――…あ痛っ!!」



再び落ちるキリのゲンコツ。キリは頭を押さえ、悶絶のカヌイを置いて、今度はミネアの治癒で回復したリーシェに歩み寄る。そして――…




 ゴンッ!!




リーシェの頭にも落ちるゲンコツ。



「このバカ娘。(ブレゴ)の名を背負いたきゃ、自分を忘れて戦うな」

「………」

「そのままじゃ、竜騎士なんぞ程遠い。ただのチンピラのクソガキだ、お前は」

「…おじさま――…痛っ!」



何故か2発目のゲンコツがリーシェに落とされ、カヌイ同様に頭を押さえて蹲るリーシェ。これには慌ててキリとリーシェの間に入るミネア。



「ちょっとキリさん!相手は女の子なんですから、やり過ぎですよ!」

「口で言ったって体力バカにはわかんねぇんだよ、オレと同じで。親父のゲンコツが1番効くんだよ」

「それでも――…」

「あーうるせぇ小姑だな」

「こっ、小姑ぉ!?」

「ほらリーシェ、説教は終わりだ。失格で負けたならアヤメ達の所に戻れ」



そう言ってしゃがみ込み、蹲るリーシェの頭をポンポンと叩く。するとゆっくりと上がる、痛みで引きつるリーシェの表情。



「旅の中ではオレがお前らの親父だ。オレはブレゴみたいに甘くねぇぞ。次やったらゲンコツじゃ済まさんからな、バカ娘」



そう言ってリーシェの額を小突くキリ。するとリーシェはシュンっとしたように小さく頷いた。



「よし、わかったならアヤメんとこ行け。んでおとなしくしてろよ」



今度はリーシェの頭をくしゃくしゃ撫で、キリは立ち上がりシャクルとミネアを見る。



「じゃあオレらも戻るか…邪魔したな、審判」

「え?あ…いえ…」



3人の登場に呆然としていたレフェリーは、ポカーンっとした表情のまま頷き返す。


そして――…




 …――ポンっ




「へっ?」



帰ろうとするキリ達を他所に、そろ~りと忍び足で去ろうとするカヌイの肩を、何者かの手が止めた。これまた体をビクつかせ、ゆっくりと振り返るカヌイ。



「…お久しぶりでございますね?莢木(さやき)カヌイ様」



振り返る先にいたのはミネア。表情は笑顔だが、何やら漂うドス黒いオーラ……



「お…お~これはミネア=リステナお嬢様ぁ~…」



ある意味キリ以上の威圧感を漂わせたミネアを前に、震えた声でぎこちない笑みを返すカヌイ。既に何かを察しているのだろう…表情は「見逃してくれません?」的な小動物化している。



「3年前に、我がランティ城からお持ちになったお品…お忘れではございませんよね?」



予想通り。カヌイは徐々に視線を斜めに上げていき……



「えっ…あ…いや~…さっきのゲンコで記憶がぁ~――…はうぁッ!!」



トボケるカヌイの(すね)を、ミネアのヒール蹴りが襲う。



「さっ、3年前やで!?もう売ってしもとるや――…ろォッ!!」



再びカヌイの(すね)を襲うミネアの蹴り。



「すっ、(すね)はアカンて!耐えようが無――…いィッ!!」

「あとわたしの下着!それにお風呂覗いてましたよね!?まさか下着(あれ)も売ったんですか!?」

「えっ!?バレとったんか!?いやいや下着は売ってへんで!バッチリうちのコレクションに入れてあ――…ぬぅうぁッ!!」



ナイスバッティング(?)な快音を響かせ、ミネアの蹴りがカヌイの両足の(すね)を攻撃。


両足を抱え「Oh~NO~!!」っと、急にアメリカンな悲鳴を上げてのたうち回るカヌイを見下ろし、小さく頬を膨らませるミネア。



「あの後大変だったんですからね…」



盗難被害に城内は大騒ぎで、新しい下着を取りに行く時間が無かった結果、ノーパンでの泥棒捜索に至った…っという捕捉をここで付けておこう。



「いつかそのコレクション、没収しにいきますからね!」

「えぇ!?あの赤のTバッ――…ぐォォ~ッ!!」



っと、のたうち回る体を止めてミネアを見上げたカヌイの(すね)を、再び襲うミネアのヒール。



「そこまで言わないで下さい…」



再び頬を膨らますミネアに歩み寄るキリが小さくため息。



「別にいいだろパンツくらい…」

「よくありません。絶対に取り返しますから」



そう言い切るミネアを見つめるシャクルが……



「え?盗まれた下着取り返す…この目的、旅に加わんのかよ…」



…っと寂しく呟いた。

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