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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.009 闘技の祭典
116/122

P.116 ドッペルアビリティ(2)

 突如消えたマザー保護にボール。タイム表記も消えた事に会場、特にレフェリーのリアクションは激しかった。



「えっ!?あ、あれ!?何で!?何でマザーボールが…!?」



リーシェ、カヌイ、空、会場をキョロキョロと見渡しているが、そんなレフェリーはそっちのけ。リーシェとカヌイは全体重を乗せた槍をフルスイング。


槍同士が激突した瞬間、まるで爆発でもしたかのような轟音が辺りに鳴り響く。



「ハっハァァ!!ええなァ!!命とばすかとばされるかの狩りや…たまらんなァ!!」

「なら浴びさせてちょうだい…あなたの血を!!」



弾く槍同士から広がる間合い。そして再び互いに踏み込む事で始まる交戦に、『防御』という文字は一切無い。人1人を挟んだくらいの間合いで、槍や蹴りの連打連撃。


激しい打ち合いに、マザー保護が消えた事により舞い上がる赤い鮮血。これには会場も異常なまでの盛り上がりをみせた。


辺りを包む歓声に耳を塞ぎながら、ユーネに視線を向けるアヤメ。



「ユーネさん、どうしてマザー保護が…?」

「これもカヌイの『ドッペルアビリティ』仕業。その身に触れたマザーを読み取り、マザー保護を逆に消失させたのだと思います」

「え、コピーだけじゃないんですか?」

「コピーをすればそれは己の能力となり、その能力の消失も発動も出来る。条件としては相手が意思を持たぬマザー能力である事。そうならばカヌイ自身が意のままにマザー能力を操れるんですよ」

「じゃあマザー保護はもう…」

「おそらくカヌイが消したんです」

「それじゃあ普通に怪我しちゃいますって!」

「はい…あの様子じゃあ、早く止めないと2人共、怪我だけじゃ済まなくなります…」

「でもあの間に入るのは…」





「ダァァァァッ!!」

「ハァァァァッ!!」



血走る眼光で幾度と槍を打ち合うリーシェとカヌイ。互いに弾いた槍先を引き、屈めた体勢から両者が同時に放つ渾身の突きが、これまた同時に互いの右肩を貫いた。



「っ…!!」



その光景にアヤメは両手で目を覆い隠す。リング上のレフェリーもさすがに止めねば、っと両者の間に入ろうとするが…とても入れるような雰囲気は無い。レフェリーは会場客席の上にある小窓に向かい、何かを訴えるようにリングの床を何度も指差し、余す手で「早く」と(はや)し立てている。


そんなレフェリーはお構い無し。肩を貫かれようが2人の表情は変わらない。体勢も引くどころか更に前に踏み込んだ。踏み込まれた槍に合わせ、リーシェとカヌイの肩口からは血飛沫が舞い、互いの頬を赤に染める。



「っ…!!え…ええなぁ…ここで引かんとは、やっぱあんたとうちの相性ぴったりや」

「ワタシは百合(そっち)じゃないわ…寝言は言わないでもらえるかしら?」

「つれへんなぁ~リシェリーア…でもわかるんやなぁ不思議と…うちはあんたや。他人の血でも、自分の血でも興奮しとるのがわかるわ…あんた、綺麗な皮を被った野獣なんや…ホンマ気ぃ合い過ぎて気色悪いわァ!!」



カヌイの声と共に、両者の槍が両者の肩から引き抜かれ、同時に大きく振りかぶる。



「野獣なんて失礼な人…ワタシは竜。父と同じ、天地最強の竜になるのよ…」

「そうか…それはすまへんなァ!!」

「なら死んで詫びてちょうだい!!」




 ッ…ゴォォォォォンッ!!




まるで車の正面衝突の如くの轟音を響かせ、両者の槍が激突。ギリギリと槍を軋ませ競り合う両者。



「…さすが竜…ブレゴのご息女様や。非力なカナフィーリン族、ましてや女の体でここまで力押しでくるとは…」

「頭使うの苦手なだけよ…」

「『苦手』?よぉ言うわ…見事な"隠し能力(だま)"持っとるゆうのになぁ?」

「…"アレ"は別に隠してる訳じゃないわ」

「ほな使(つこ)うたろか?」

「…いいの?本当に死ぬわよ、あなた…」

「それはお互いや…」



どちらのとわからぬ血が飛び散った顔を笑みに変え、互いの槍を弾き合って間合いを開く――…瞬間、リーシェとカヌイの足元から数本の黄色に輝く鎖が飛び出し、手足や胴に首。体中に巻きつき拘束。



「っ!?」

「なっ、何やコレ!?」



巻きつく鎖はマザーで形成されたもの。そしてリングから伸びているという事は、この鎖もシュバーラッツの技術によるものなのだろう。その鎖に動きを完全に封じられ、地面と鎖を交互に見る2人。その間に駆け込むレフェリーが右手を高々と上げる。



「両選手止まって下さい!!試合終了です!」



これにはリーシェとカヌイは「は…!?」っと何が起きたか理解出来ず、キョトーンっとレフェリーを見つめている。



「試合終了って…ちょっ、ちょお待てや!終了ってどういうこっ――…」

「両選手、共に失格。この試合は無効試合とさせて頂きます」

「はぁあぁぁっ!?」



このレフェリーの宣言に、顎が外れる程に口をあんぐりとさせるカヌイ。



「しっ、失格って…負け…()う事か…?」

「そうです。ルール違反による失格です」

「は…はぁ?ちょお待ちぃや…うちらちゃんと戦っとたやろ?何がルール違反やっちゅーんや!?」

「この闘技祭は『ポイントバトル』しか行っておりません。如何なる理由でも、身体への直接攻撃をした場合は失格すると、選手の皆様にはお伝えしてたはずですが?」



確かにそうだった。大会受付の時にその説明は参加者全員が聞かされていた事…思い出したように、ハっと目を見開くカヌイ。



「しまった…そうやったわ…」

「試合開始前だったので迷いましたが、リシェリーア選手が手を出した時点で止めるべきでした…ですが開始してしまった以上、開始後のルール適応とさせて頂き、両選手を失格とさせて頂きました」

「な…なんちゅう事や……悪ノリし過ぎでやってしもたわ…」



拘束状態のまま、ガクっと頭を落とすカヌイ。すると突然、2人を拘束していた鎖がポンっと破裂したように消え去った。これもカヌイの仕業なのだろう、消えた鎖に驚くレフェリー。



「…"あの子ら"に『賞金でお土産でっかいの()うてくる』()うてきたのに…」



小さくため息をはき、「なら帰るわ…」っと呟くカヌイはリーシェに背を向け、トボトボと歩き出した。


すると――…



「待ちなさいよ…」

「ん?――…ッ!?」




 ドッゴォォォンッ!!




突如響く轟音。そして爆発でもしたかのような土煙が一瞬にしてリングを覆った。


会場が「何だ何だ!?」とざわめく中、土煙の中から、まるで電流のようにバチバチという青白い光りが見えはじめた。


徐々に晴れゆく土煙。すると一直線にヒビ割れたリングと、そのヒビの脇に立つカヌイに、完全に腰を抜かしたレフェリーの姿が。そしてバチバチと音を発て、青白い光りをまとった槍を手にしたリーシェの姿が見えた。



「ここまでやっておいて、逃がすと思うかしら…?」



燃えるように赤く光る目に、殺気に満ちた表情でカヌイを見据えるリーシェ。そのリーシェの姿に、苦笑いを浮かべ再びのため息をはくカヌイは、目を閉じ首を横に振った。



「風から雷へのマザー変換。それにファイター型とブレイバー型を組み合わせ、武具にマザーをまとわせる…マザーに長けたカナフィーリンの中でもごく一部の者しか扱えぬ能力。さすがやな、リシェリーア…」

「分析はいいわ…今ならあなたも使えるんでしょ?ならやりましょうよ…続きを…」

「もぉあんたの真似事は終わりや。それに賞金出ぇへんなら、あんたみたいな怪物と戦うのも勘弁や…死にとぉないしな」



そう言って再び背を向け歩き出すカヌイ。するとリーシェは――…



「だから逃がさないと…言ったはずよ!!」



雷撃を帯びた槍を手に、去ろうとするカヌイに向かい飛びかかるリーシェ。


瞬間、選手入場口から数人の武装した憲兵がリングに向かい、ガシャガシャと甲冑を鳴らしながら駆け出してきた。



「マズい…っ!試合終了後の攻撃は罪になります!このままでは憲兵に捕縛されてしまいます…リーシェさん止まって!!」

「罪ぃ!?リーシェストォーップ!!」



リーシェなら捕縛の前に、憲兵相手に暴れる事は必至。更なる罪を重ねそうだが……今、そのリーシェを止められる者がリング上にはいない。レフェリーは戦力として止められない上、鎖のマザーはカヌイがコピーし発動権も握っている。


猛スピードで突っ込んでくるリーシェの気配に、カヌイは三度(みたび)のため息をはき、ゆっくりと振り返る。



「よぉいきる女やなぁ~リシェリーア…こっちは優勝賞金もらえへんで落ちとるのに、その気でくるなら応えなアカ――…ンんっ!?」



向かってくるリーシェに応え、カヌイが拳を構えた瞬間…突然襟首を後ろから引っ張られ、カヌイの体はリング上に後ろから倒れ込む。


そして倒れたカヌイの真上を舞うピンクの影。その影が、今槍を突き立てようとするリーシェの体に向かい…そして飛びついた。


ピンクの影を絡めたリーシェの体は、互いの勢いを相殺したようにその場に落ちる。




 ゴンッ! ゴンッ!




「痛っ!」

「うっ…!」



リングに頭から落下したリーシェとピンクの影。床に落ち、リーシェから離れるように転がるピンクの影…それはピンクのローブ姿のミネア。そのミネアは頭を押さえ、涙目で選手入場口を睨む。



「ちょっとキリさん!勢いよく投げ過ぎですって!!」



突如現れたミネアの睨む先、入場口に立つのはキリ。どうやら憲兵の後ろから会場に入り、リーシェめがけてミネアの体を投げたのだろう。


そして――…




 …――ドガァッ!!




「どわァっ!!」

「んギャッ!!」



っと突然倒れたカヌイの上に落下してくるシャクル。


いきなり乱入してきた面々に、観客やレフェリー、憲兵達の動きは止まり全員がポカーン。その中落下したシャクルが起き上がり、ミネアと同じくキリを睨む。



「いってぇな馬鹿力!!何で俺まで投げんだよ!!」

「保険だ保険。ミネアのデカ乳が重くて飛ばなかった時のな」

「デカちっ――…ちょっとキリさん!何を言ってるんですか!」

「重そうなら最初(はな)から俺を投げろ!!」

「シャクルまで…っ!?それじゃあわたしが重いままになりますって!!2人共セクハラ発言ですよ!」

「ん?デカいのは事実だろ?」

「シャクル!完全にセクハラ発言ですからね、それ!」

「あーあー投げられたぐらいで2人してうるせぇな…結果リーシェ止められたんだから騒ぐんじゃねぇよ」



頭をボリボリと掻きながらリングに向かい歩いていくキリに、まだリング上からキリに向かい文句を言い続けるシャクルにミネア。…まぁ主にミネアだが……そんな3人の登場にアヤメとユーネは、口を半開き状態で視線を合わせ、再び3人を見る。



「きゅ…宮殿王?」

「…シャクルにミネアまで…?」

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