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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.009 闘技の祭典
113/122

P.113 狂気の百合(1)

 勝つには勝ったが、あまりにもお粗末な内容に納得いかない…っといった表情のシャクル。だが内容はどうあれ、前回王者に勝利したシャクルへは観客から歓声と拍手が送られる。


一方ヘンリーは、己の気配を最大限に薄れさせ、ものすごい低い姿勢でそそくさと会場から去っていく。しかし途中で不格好に転んだ事は、あえて余談として付け加えておこう。


そして観客席。ヘンリー親衛隊の女性達も、ヘンリーのお粗末な自滅内容には負け惜しみ発言も出てこない。火が消えたように無言でVIP席を去っていく。その背後では、アヤメの勝ち誇る表情があった事は言うまでもない。そしてVIP席の石机を壊したユーネは、闘技場管理者の人達に怒られたという事も言うまでもない。





 そうして初戦が終わり、試合は第9戦目。未だに会場の熱は冷めず、盛り上がっていくばかり。しかしアヤメは既に飽きていた。知らない選手同士の戦いには興味を持てないようで、ボケ~っとした表情で辺りを見回していた。



「ふぁ~あぁ…」



大きなあくびをしながら横を見ると、試合に夢中なアラーケ達。アヤメはユーネの肩をツンツンとつつく。



「ほえ?どうかしましたか?姫」

「ちょっと小腹空いちゃって…外のお店に何か買いに行ってきてもいいですか?」

「あ、それなら私も行きますよ。シュバーラッツ名物の1つ!ミソ焼きまんじゅう食べに行きましょうよ!」

「え、もう食べるヤツ決定なんですか…?」



あれ?あれ?っとするアヤメの背中を押していくユーネは、鼻歌混じりに「ミソ焼きまんじゅう~♪」っと連呼している。


エクシラでの朝食から思うが、ユーネはよく食べる…





 闘技施設を出た敷地内、露店の並ぶ通路を歩くアヤメとユーネ。



「はぁ…何で売り切れてるのよ…ミソ焼きまんじゅう~…」



大きなため息をつきながらも、両手に2本ずつ持ったホットドッグをひと口、ふた口と運ぶユーネ。並ぶアヤメは1本のホットドッグを手に苦笑い。



「ユーネさんってスリムなのによく食べますね?」

「っ…!」

「そんなに食べて太らないんですか?」

「…ひ…姫!!」

「はっ、はい!」



突然ユーネの鋭い眼光がアヤメに向く。これにはアヤメも思わず背筋をピンっと伸ばして身を強張らせる。前話のようにキレてしまうのか…っと。



「それは『大食いのくせに胸に栄養がいってない』って事ですかぁ!?」

「はいぃ!?いえそんな事は――…」

「姫だって人の事言えないくらいおっぱい小さいじゃないですかー!」

「わ、私はまだ成長期なんです!」

「はわっ!そ…そうだった…姫はまだ10代…私は25歳……希望はもう…終わったんだ…」



そう言って膝から崩れ落ちるユーネ。『もう天に召されます…』的な表情で、頬にひと筋の涙を流すユーネに、「そこまで達するか!?」っと戸惑うアヤメ。



「ちょっ…ユーネさん?」

「終わった…終わったんだ…私のおっぱい…」

「…ユーネさ~ん…」



(くう)を仰ぎ、召されていくユーネの肩を揺らすが、現実世界には帰ってこない。少し考え、手にしたホットドッグをユーネの口元に持っていくと……



「…(モグモグ)……っん~まぁ~い♥」



…おかえり、ユーネ。







「すいませーん、クレープ下さーい」



無事(?)現実に帰ってきたユーネは、露店のクレープを注文していた。まぁ余談ではあるが、日本はもちろん、地球上ではメジャーなクレープ。だがこのマザーランドでは、今いるサイアット大陸でしか食べられない郷土料理のような存在らしい。まぁ形なども、皆様の想像通りのクレープである。



「姫。クレープのトッピング、3つまで選べるみたいですよ。どれになさいますか?」

「ん~どれにしようかなぁ~…ユーネさんは決まりました?」

「えっと私は~…」



トッピングフルーツの並ぶ露店のショーケースを見渡すユーネ。しかし決められないのか、「ん~…」っと唸ったままにフルーツを見渡すだけ。無論、アヤメも同じ状態。するとヒューマ族の中年の男店主が、笑い声を上げながら2人に声をかけてきた。



「何だいお嬢さん達。そんなに悩むんなら、食べたいだけフルーツトッピングしてもいいよ」

「えっ!?いいんですか!?」

「ハっハっハっ、いいよ。お嬢さん達可愛いからオマケでね。ついでにチョコクリームもかけ放題でどうだい?」

「うわぁーい!おじさん太っ腹ぁ~♪」

「せっかくの祭だ、サービスサービス。ほら、好きなだけ言いな」



っと、店主に思い思いのトッピングを注文するアヤメとユーネの後ろ……牛のモルハス族と、戦士風のラーグ族の男2組がゆっくりと通り過ぎていく。



「ったく何だよ…地上最強の竜騎士が、1回戦敗退だなんて笑えねぇよ…お前に5万N(ニルト)賭けてたのによぉ…」

「うっ、うるせぇな!『地上最強』なんて言ってんのは宮殿騎士の連中だけだっつうの!」

「やっぱ騎士の試験落ちたヤツじゃダメって事か…」

「いちいちうるせぇな、お前…」



アヤメ達の傍で立ち止まり、話しはじめる2人。どうやらラーグ族の男は闘技祭の出場者で、結果は初戦敗退。モルハス族の男はその連れのようだ。



「確かにまぁ、本当に最強って言われてんのも、宮殿騎士団長のブレゴ=オルセイユだけだ、っつうしな」

「あぁ、あれはラーグ族の中でも別格だよ。んで、そのブレゴの娘が次の試合に出場するみたいだぞ」

「ブレゴの娘って…あの美人って噂のカナフィーリン族の娘か?マジかよ!?俺1回見てみたかったんだよ!次の試合なんだろ?おい早く客席行こうぜ!」



そう言ってラーグの男を急かすモルハスの男。その会話を聞いていたアヤメは、クレープ2つ分の会計を終えたユーネを見る。



「次の試合リーシェの番みたいですね?」

「そうみたいですね。我々も席に戻りましょう」

「はい…ってゆうか、ユーネさん…」

「はい?」

「トッピング全部乗せ…すごいですね…」



アヤメの言葉通り、ユーネのクレープは顔1つ分はあろうフルーツピラミッドが出来上がっていた。


店主もこれにはさすがに苦笑いだったクレープ。そんなクレープを食べつつ、足早に観客席へと戻っていくアヤメ達。

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