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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.09 遊戯の町
105/122

P.105 遊戯の町への上陸(2)

 定期船に揺られて1時間程が経過した頃、船前方に大陸らしき影が見えてきた。


一行の姿は甲板にあり、アヤメとアラーケ、ロンが船から身を乗り出し、徐々にくっきりとしたラインで見えてくる大陸を見つめた。



「お~!あれがシュバーラッツなの?」

「うん、そうだよ。シュバーラッツを港町として持つ【サイアット大陸】があれさ」

「うわぁ~おっきぃ~…」



アヤメの視界に入る物は、巨大なドーム型の石造りの建造物を中心とした、山のように広がる、層となった町並み。港は以前行ったバルハール大陸の港町、リムドアよりもはるかに広い港。50~60隻以上は軽く入るのではないのか?っと思う程に広い。


シュバーラッツは初めてであるシャクルとリーシェも、その町の大きさに「お~」っと口が開く。



「にしてもデカいな…」

「ホントね」

「このシュバーラッツは世界中から人々が集まる世界最大の遊戯の町。だから港も世界最大とも言われているんです。そしてあの巨大なドーム型の建物が闘技場ですよ」

「ならあそこで遊ぶのね?ワタシ達」



そう言って笑顔で拳を鳴らすリーシェ。これにはシャクルとミネアは「おいおい…」っとため息を1つ。



「あら違うの?」

「戦いを『遊び』って言う時点で乙女じゃねぇな、やっぱ…」



一方でロンはシュバーラッツをウキウキした様子で見つめている。



「ほぉ~!絶景じゃな。世の中は広いのぉ~」

「おじいちゃんは1度もロスブリアから出た事なかったの?」

「うむ。生まれて400年、1度もじゃ」

「よっ、400年!?」

「はて?それ以上かのぉ…」



驚きの表情のままアラーケを見るアヤメ。



「寿命は種族によって違うんだよ、アヤメちゃん。特にカナフィーリン族は長くて、じいさんくらい生きるのは当たり前ってもんなんだ」

「へぇ~すごぉ~い」

「何じゃ姫様は知らんかったのか?」

「あ、い、いえ…私世間知らずでして…」

「しかも『アヤメちゃん』と言っとったが…出歩く上の偽名か?」

「え、あ…はい。だからおじいちゃんもアヤメって呼んで下さい」

「ふむふむ、了解じゃ。ではお近づきの印にパイパイのサイズを――…」



っと言いかけ、ロンはシュバーラッツに視線を向けた。



「待っとれ!バニーガール!」

「屈辱だぁーっ!」



っと、なぜかアラーケに平手打ちを喰らわせるアヤメ。



「何でおれーっ!?」



そんな騒ぎの中、定期船は港に入港体制。



「ほらアヤメ。アラーケにじいさん。騒いでないで降りる準備しとけよ」

「あ、はーい!」

「いたたた…りょ、りょうか~い」

「ほいほい今行くぞい」



そうして入港した定期船より港に降り立った一行だったが、船に乗っていた人9割の人々がこのシュバーラッツが目的だったようで、降りてからの人混みに呑まれる一行。頭1つ出ていたキリを目印に、なんとかはぐれずにすんだ。


人混みを抜け出し、シュバーラッツの町並みを前にすると、見渡す限り人、ひと、ヒトの景色。その人々の間から見える、お祭りの出店のような建物が並ぶ市場が広がっていた。時折切れる人波から覗くのは、野菜や魚介類が売られていたり、お土産のような置物屋、武器なども扱う店などが見えた。



「うわぁ~すっごぉ~い!」

「シュバーラッツの港は商業地帯となっていて、町の中は一部にあるほんの僅かな民家以外、全て遊戯場となっているんです」

「こんなでっかい町のほとんどが遊戯場ってか?スゲェっつーか、遊び過ぎっつーか…な」



苦笑い気味のシャクルの袖を、アヤメがクイっと引っ張る。



「ねぇ、ちょっと見てきてもいい?」

「あのなぁ…俺達は遊びに来た訳じゃないぞ」

「あらいいじゃない。何かあった時の為にワタシも行くから」



そう言ってアヤメに並ぶリーシェ。



「行きましょ?アヤメ」

「うん!」

「あ、おれもおれも!」

「わしも行くわぁ~い!」



アラーケとロンも加わり、市場に向かう4人。



「心配かけそうなヤツばっかりじゃねぇか、ったく…」

「ならわたし達も行きましょうか」

「だな。ま、オレもちょっと興味あるしな」

「へいへい…あ、そういえばいいのか?ユーネ。お前任務あるって言ってたろ?」

「明日の船で任務地に向かうから、それまでは大丈夫よ。それに、そんな緊急な任務じゃないし。だから闘技祭登録も焦らなくて大丈夫」

「そっか、悪いな」

「いいわよ別に。せっかく来たんだし、あんた達も楽しみなさいよ」

「楽しむって言ってもなぁ…」

「まぁいいじゃないですか、シャクル。たまにはこういう時間も必要ですよ」

「…そうかもな。ま、とりあえずはアイツら追わなきゃな」

「そうですね」



そうしてシャクル達も、先を行った4人の後を追い歩き出す。







「うわぁ~アラーケ見て見て!この魚おっきいよ!」

「うわ!ホントでっけぇ~!!」



しばらく進んだ魚屋の前ではしゃぐアヤメ達を見てシャクルはため息を1つ。



「全く…目的忘れてんじゃねぇかアイツら…」

「いいじゃないですか。こうしてのんびりと歩いてるだけでも、息抜きって感じじゃないですか」

「別に悪かねぇけどな…どうせ闘技祭は明日なんだし――…って、あれ?キリ?…キリはどこ行った?」

「え?…そういえば…」



辺りを見回すもキリの姿は無い。アヤメ達の方を見ても、キリはいない。



「あれ?ホントにいない…宮殿王、どこに行ったのかしら…」

「それにリーシェまでいないですよ。アヤメ達といたはずなのに」



魚屋前にいるのはアヤメ、アラーケにロンの3人だけで、リーシェの姿は無い。



「勝手な行動ばっかだな……おーい、アヤメ」



シャクルは再びの苦笑いで、店の前ではしゃぎ続けるアヤメ達の元に歩み寄る。



「あ、シャクル。見てよこの魚、変な顔ぉ~」

「ハ、ハハ…だな……んで、リーシェはどこ行ったんだ?あとキリも見てないか?」

「え?…あれ?リーシェがいない…どこ行ったんだろ?」

「アラーケとじいさんも知らないか?」

「いや~…見てないな」

「わしもじゃ」

「そっか…ったく何してんだか…」


「お~いシャクル!」



すると背後からキリの声が聞こえた。振り返ると、中心部から歩いてくるキリとリーシェの姿が見えた。



「よかった、いましたね」

「ま、別に心配するメンツじゃないがな……勝手にお前らどこ行ってたんだよ?キリ。探したぞ」

「おいおい、せっかく下調べして来てやったのに、厳しめのお言葉だこと」

「下調べ?」

「お前らお尋ね者だろ?リグルやカーレンが廃止させるって言ってたから、ここは大丈夫か調べてきてやったんだよ」

「あ、そういえばそうでしたね」

「何だそうだったのか。悪かったな」

「すみません宮殿王。本来私がやるべき事を…」



しまった~…っというように頭を下げるユーネ。



「別にいいさ。んで、結果は安心してもらって構わない。完全に『無罪』となっていて、廃止になっている。それと闘技祭についてだが、早めにした方がよさそうだぞ」

「え?ですが宮殿王。私達には推薦状があるので大丈夫ですよ」

「まぁそうだろうが…もう一般の受付が終了してるらしいんだ」

「今年は参加希望者多いらしくて、当日予選で既にパンク状態らしいわ」

「え?本当ですか!?じゃあ闘技場に行ってみた方がよさそうですね」

「そうっぽいな。ありがとよキリ。リーシェもわざわざ悪いな」

「ワタシはただお店に飽きちゃって、フラついてたらおじ様に会っただけよ」

「お前はアヤメに何かあると悪いからついてったんだろうが…」



ため息混じりにシャクルは振り返り、キリ達の合流に気づかずにいろいろな店に夢中なアヤメ達を見る。



「アヤメ、アラーケ、じいさん。そろそろ闘技場行くぞ」

「え?もう行くの?」

「何か急いだ方がいいみたいなんだ。だから早めに行こう」

「うん、わかった。今行く」



立ち上がるアヤメとアラーケ。



「何じゃお主ら闘技祭に出場するのか?」

「あぁ。じいさんも行くか?闘技場」

「ん~…いや、わしはカジノに行く。だからお主らで行って参れ」

「『お主らで』って、ここではぐれたらロスブリアまでどうすりゃいいんだよ?」

「ならおれがじいさんと一緒に行くよ」



そう言ってアラーケが前に出る。



「闘技祭に出る訳じゃないし、昔この町来た事あるから、だいたいの地理はわかるからさ」

「そうか。ならどっかで待ち合わせするか?」

「あ、ならロアーヌ卿にアラーケさん。落ち着いたら【花の風車】という宿屋に来て下さい。私、ユーネ=バイスンの名前を出せば泊まれるように手配されていますから」

「うむ、了解じゃ。すまんのぉ、ユーネちゃんはいい嫁さんになるぞい。わしの」

「いえ結構です…」

「じゃあおれ?」

「被せは要らんわ…」

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