P.102 謎のスケベじじい(2)
「この招待状はね、同時に推薦状にもなってるのよ。ほら、ハガキの下の方見てみて。名前を書くスペースあるでしょ?」
ユーネの言う通り、カーレンの名前なとが書かれた下には4本のアンダーラインが引かれた余白がある。
「そこに名前を書けば、チャンピオンからの推薦者として、最大4人までが無条件で出場出来るって訳」
「ほぉー…ってまさか、俺らに代わりに出ろって訳か?」
「いや『代わり』って訳ではないわよ。別に出場しなくてもいいんだし。ただ昨日、宮殿王から『足になる船を貸してくれ』って言われたんだけど…」
言葉を言いかけキリを見るユーネ。
「帝国の船はほぼ9割が軍艦で、客船は皇族仕様の為に、軍の我々では動かせないんです。すみません」
「いやいいんだ。無理を言ったのはこっちだからよ。確かに軍艦じゃあオレらの足にはならないからな」
「って事はユーネちゃん?まさかだけど…その闘技祭で優勝して、その賞金で新しい船を買えって事?」
すると「ビンゴ♪」っと言うように指をパチンっと鳴らし、アラーケを指差しウィンクを1つ。
「あ…彼女おれにホレたようだ…」
「へ?」
「あ~いやユーネ。コイツの勘違い発言だから気にするな…」
「あ、うん…で、今カーレン隊長本人は任務で留守だから、『本人外の証人として私が行け』っても言われてるから、もしシュバーラッツに行くなら私も一緒に行くわ。ちょうど任務もあるから、通り道だし。どうする?」
っとシャクルやアヤメ、キリなどに視線を向けるユーネ。するとキリはシャクルの背中を軽く叩く。
「おいやろうぜシャクル。闘技祭出てみたかったんだよ、オレ」
「ワタシも出たいわ、闘技祭」
キリと同様に食い付いてくるリーシェ。
「お前は暴れたいだけじゃないのかよ…」
「あら酷い。うら若き慎ましやかな乙女に対して失礼しちゃうわ」
「うら若き慎ましやかな乙女は、槍を振り回したりしないと思うが…」
「あらそうなの?」
キョトンとするリーシェにシャクルは呆れ顔。
「…まぁ何にしろ、億超えの賞金。4人まで無条件で出られるってのは、実際魅力的だよな…」
「出ちゃおうよシャクル。そしたら億万長者だよ、私達」
目を輝かせ、シャクルの腕を揺するアヤメ。
「何でもう優勝する設定なんだよ…世界中から強い奴らが来るんだぜ?良くて5割ってトコだろうよ」
「だから4人で出るんでしょ?シャクルとキリさんとリーシェ。あとは……ミネア!」
「わっ、わたしですか!?」
「っし、セーフ!」
驚くミネアに対し、両手を広げ天を仰ぐアラーケ。
「ちょっとアラーケ!こういう時は『男のおれが!』とか言うのが普通じゃないの!?」
「ザッツ一般ピーポー!」
「わたしだって一般人の使用人です」
「一般人の使用人がトンファー振り回したりしないっしょー?」
「だったら一般人の船大工が、マザーのハンマーなんて振り回さないでしょー」
「あー姉弟ゲンカしてんなうるせぇな…何も絶対4人じゃなきゃいけないわけじゃねぇだろがよ」
シャクルの言葉にミネアは「すみません…」っと言って小さくなる。
「とにかくこの推薦状、ありがたく使わせてもらうわ」
「ならこれ食べたら出発よ。お昼前の定期船に乗らないと、今夜までの出場登録に間に合わないわよ」
「え?開催日はいつだよ?」
「明日」
「も、もう明日かよ…で、定期船の時間は?」
「ん~っと、あと…10…分?…っ!?10分!?」
時計に対し、絵に描いたような綺麗な2度見をみせるユーネ。
「っだとぉ!?」
「10分っておい…」
「急いで港に走りましょう!行きますよ、アヤメ!」
焦り立ち上がるシャクル達に対し、アヤメとリーシェは着席のまま。アヤメに至っては、大きなエビフライを口に運ぼうとしていた瞬間であった。
「ほら行きますよアヤメ、リーシェ」
「えーっ!このエビフライ楽しみにしてたのにぃ~」
「んなもん我慢しろ!馬車で走れば間に合うか?ユーネ」
「急げば5分で行けるわ。だから食後のデザートのチーズケーキでも――…」
「食後じゃねぇしっ!食う暇あるかーっ!!」
すると「サクッ」っという揚げ物をかじる音がし――…
「ふぁ、こにょへぇにふにゃにほおうぃふぃにょ(あ、このエビフライ美味しいよ)」
「ふぁふぁほぉんほぉ(あら本当)」
エビフライを食わえて口をモグモグさせたアヤメとリーシェが……
「お前ら食ってんじゃねぇーッ!!」
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