P.101 謎のスケベじじい(1)
外の世界には朝日が昇り、また新しい1日が始まろうとしていた。しかしエクシラは洞窟の町。時計を見る習慣がなければ朝か夜かはわからない。
その頃シャクルとアラーケ、キリの3人は、カムラの家で床に毛布を敷き、朝とは気づかずに熟睡している。すると家の扉を何者かがノックし、家の中に入って来た。
「――…ん?…誰だ…?」
人の気配に目を覚ますシャクル。すると視界に入って来たのはカムラだった。
「おはよう、シャクル君」
「『おはよう』って事はもう朝か…アヤメの検査は終わったのか?」
「あぁ、何の問題も無くね」
「そっか。なら次はロス――…あ~…えっと、ロス~……例の場所だな?」
「ロスブリアな、ロスブリア。まぁアヤメさんの上陸に問題は無い。リーシェさんもいるし、次はロスブリアでも大丈夫だろう。あと、隊の支部で朝食を準備してある。アヤメさん達はもう支部にいるから、シャクル君達も行こう」
「わかった、サンキュ」
シャクルは起き上がり、アラーケとキリを起こし、カムラと共に帝国護衛部隊の支部を目指した。
5分程歩き、3階建てで横に50メートルはあろう茶色の煉瓦造りの支部に到着。すると入口にユーネが立っていた。
「お?ユー――…ん?あれ?リグ…あ、いや……リグルの姉ちゃんじゃねぇか。どうした?」
「ちょっとアンタ!今絶対私の名前忘れたでしょ!?」
「…っ、あ!ユルイネ?」
「誰がユルユルのダルダルだ!」
「いや、そうは言ってねぇよ…あっ、そうだユーネだ、ユーネ」
「誰がユーネだボケーっ!…ん?正解?」
「俺に聞くな」
苦笑いのシャクルにアラーケが近づき、
「何かユーネちゃんってアヤメちゃんと似てるよね?ノリが」
「あ~だから俺苦手なんだ、コイツ」
「苦手って何よーっ!」
両手をブンブンとさせ「キーキー」騒ぎ出すユーネに、カムラとキリの2人はため息を1つ。
「な、なぁ小隊長の姉ちゃん…オレら中に入りてぇんだが…」
「え?あっ、あっ、宮殿王!おはようございます!」
騒ぐ体をクルりと回し、キリに向かい深々と頭を下げるユーネ。
「忙しい姉ちゃんだな…」
「真面目なんだろ、根が」
並ぶカムラがそう言うと、支部の入口の扉に手をかけた。
「じゃあ失礼させてもらいますよ、ユーネさん」
「あ、待って下さい、私もお供します」
そう言って元気よく手を上げるユーネ。その姿に全員が「お供?」っと視線を向けた。
支部内に入ったシャクル達は、ユーネに案内され2階に上がり、ある一室の扉を開く。そこにはアヤメとミネア、リーシェの3人が既におり、皿に盛られた料理を室内中央にある長テーブルに並べていた。
「お?美味そうな匂いがすると思ったらもう出来てんのか、朝飯」
「あらおじ様おはよ。匂いで察するなんてさすがワンちゃん」
「おいおいワンちゃんはやめてくれよ…お嬢さん…」
互いに朝の挨拶を交わし、食卓につくユーネを含めた一行。自分の顔以上は盛られているであろう山盛りのご飯を前に、満面の笑みで手を合わせているユーネ。
「ささっ、早く食べましょうよー。私もうお腹空いちゃって」
「お前も一緒に食うってか?」
見た事のない山盛りのご飯に軽く引き気味のシャクル。
「そーよ。私もあなた達に話しがあるのよ」
「それにこの朝食、ユーネ様が作って下さったんですよ」
「でも私が作ったものじゃ、宮殿王やアルシェン姫のお口に合うか不安ですが…」
「いやいやご馳走ですってコレは!」
「そうだぜお嬢さん。まぁこれでミネアくらい乳がデカけりゃいいんだがなぁ~」
「って宮殿王!!胸と料理は関係ないですからァ!!」
「さりげなくわたしも巻き添えにしないで下さい…」
ミネアとユーネの怒りの念がこもった声と視線に、キリも「悪かったよ…」と引きつり笑い。あの時の一撃が効いてるようだ。
ユーネはフン!っと頬を膨らませ、キリから視線を外すと、視界に入るミネア。そしてその隣にはリーシェが……
「そこの2人逮捕だぁーっ!」
「何ですかぁ!?」
「ひがみよ、ミネア」
「真実を言うなぁーっ!」
…――っとまぁそんなこんなで各々席に座り、「いただきます」と食事を開始していると…カムラが「あっ」っと言って、白衣のポケットから預かっていたウィビの結晶体を取り出した。
「そうだアラーケ君」
「んあ?」
「預かっていたウィビさんの結果だけど…すまない。結晶体のままでは調べようがなくてな…」
「あ~そっか…無理言ってごめんな、カムラ」
カムラから差し出されたウィビの結晶体を受け取るアラーケ。そうして再び進む食事の中、シャクルがユーネに向く。
「そういやぁお前、俺らに話しあんだろ?何だよ?」
「ほえ?…あ~、そういえばそんな事言ったわね」
「そういえばってオイ…」
「とりあえずこれ見て」
そう言うと、ユーネは1枚の封筒をシャクルに渡す。受け取る封筒は、結婚式の招待状のような綺麗な装飾のある封筒であった。しかも表には『カーレン=エレッタ殿へ』と書かれているではないか。
「何だこれ?カーレンって、あの隊長さんへのやつじゃねぇか。俺らに渡してどうすんだよ?」
「そのカーレン隊長から、あなた達へよ」
「俺らに…?」
首を傾げながらシャクルが封筒を開くと、中には1枚のハガキが入っていた。
「ん?何なに…『シュバーラッツ大闘技祭招待状』?」
そうシャクルが読み上げると、アヤメ以外の全員が「え?」っと反応する。
「うわ~、もうそんな時期だったんだ」
「えぇ、忘れてました」
するとアヤメがミネアの袖を引っ張り、顔を覗き込む。
「え?何なに?『とーぎさい』って何?」
「闘技祭とは、世界最大の遊戯の町と言われる【シュバーラッツ】という町で、5年に1度開催される、億超えの賞金を賭けた闘技のお祭なんです」
「へぇ~。格闘技のお祭、って事かぁ…」
「師匠に連れられて、ミネアちゃんと小さい頃に観に行ったよね?懐かしいわぁ~…でも何で招待状?あれって1年前からの予選会勝ち抜かないと出場出来ないはずじゃないの?」
「それはそうなんだけど、最近は前日の選考試合での出場枠もあるの。まぁ4~5人程度だけどね。そして招待状が来るのは過去のチャンピオンのみ」
ユーネの言葉に顔を見合わせる面々。
「えっ?それってまさか…あのカーレン様って…?」
「そ。過去の大会の優勝者にして、13歳で大会を制した歴代最年少のチャンピオンなのよ」
っと、なぜか本人ではないユーネが「えっへん」っと胸を張る。
「あの闘技祭を13歳でだと!?怪物かよ、あの隊長さんは…」
「ですがユーネ様?史上最年少の優勝者の名は【ヨシュア】という少年のはずでは…?」
「それが隊長の本当の名前なんです。隊長は、闘技祭での腕を見込まれて、名家エレッタ家の養子となったんです。そして名前をカーレン=エレッタとして、帝国部隊に入隊したんです」
アヤメとシャクルを除く全員が「すごい」と言わんばかりの反応に、2人は互いに顔を見合わせる。
「つーかそんなにレベル高いのか?その闘技祭って」
「何言ってんだシャクル。そりゃ世界中から猛者達が集まってくるんだ。低レベルな訳ねぇだろ?」
「まぁ確かにそうか。で、その招待状が何で俺らになんだ?」




