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初の実戦

お気に入り登録、評価ありがとうございます。

俺の隣に女の子が寝ている。

でも昨日よりはゆっくり眠れたかな。

鮎川が先に目を覚ましていたようだ。

「先生、おはよう」

「おはよう」

「夢じゃないよね?恋人どうしなんだよね?」

「ああ。夢じゃないよ。鮎川」

ぎゅっと抱きしめる。

ぴくっと体をこわばらせる。

「男の人って、こんなふうになるんだね」

などと言いながら、恥ずかしそうに俺の下半身をチラチラと見ている。

ごめんなさい。ズボンが持ち上がっており、それが当たってしまったようだ。

「朝の生理現象なんだ…。気にしないでくれ」

「うん、私、少しずつでも慣れるようにするね」

「無理しなくていいからな」

ああ、朝からHPが削られてしまった。


朝ごはんを食べて、今日の予定を立てる。

「今日は鮎川の装備を整えて、実際にクエストを受けてみよう」

「うん。初デートだね」

「…そうだな。街中でのスキンシップはほどほどにしてくれると助かるかな」

周りからの視線とかで爆発しちゃうから。主に俺が。

「腕を組むくらいならいいよね?」

「それくらいなら大丈夫だろう」

「やった」

「じゃあ、まずは防具を買いに行こうか」


防具屋まで密着して歩く。

鮎川は全力で腕を組んでくる。予想以上だ。

俺も男だし、悪い気はしない

さて、防具を選ぼう。

鮎川の今の装備はいわゆる布の服レベル。

何を買っても防御力は上がるが、動きにくくなってしまっては本末転倒だろう。

全身鎧系は除外して、ローブや胸当てなどが候補だ。

「鮎川はどんなのがいい?」

「うーん、このローブなんか可愛くていいかも」

手に取ったのは赤いローブ。

鑑定してみると、炎のローブ(火耐性2)だった。

俺がファイアーボールメインで戦っているから、ちょうどいいかもしれない。

味方にダメージこそ無いが、火が熱いのは変わらない。

少しでも軽減できるならしてやりたい。

「動きやすさそうだし防御力もしっかりしてる。試着してみたらいい」

「うん、私にはちょっと大きいかも。一応着てみるね」

カーテンの裏へ向かい、着替えているようだ。

「どうかな?」

「いいと思うよ。装備品はサイズが自動で変わるから便利だろ?」

「最初はすごく大きかったのに、着たらぴったりになったよ」

さすがファンタジーだ。

「次は帽子も見てみようか」

「へー、いろいろある。普通の帽子やリボンに見えるのもあるけど、防具なの?」

「ああ。魔法がかかっているから、ちゃんと防御力が上がるんだ」

いくつか迷った結果、黄色いリボンを選んだ。

これは防御力のみが上がる普通の装備品だった。

「鮎川はポニーテールもいいな。リボンも似合ってるよ」

「えへへ、ありがと」

靴は俺のと似たデザインのブーツを買った。

軽量化の魔法がかかっていて、信じられないほど軽い。

これなら女の子でも問題なく動けるだろう。

全部合わせて5万8千Gだ。

昨日の収入もあるし、この程度なら余裕だ。


その後、武器屋にも行った。

鮎川は魔法を使えそうなので、杖を買っておく。

杖の先に白くて丸い石がついたシンプルな杖だ。

あと、今日は魔法を練習するのでMPポーションをたくさん買っておく。


クエストを受けるためにギルドに向かった。

壁でEランクのクエストを見ていく。

ウルフ討伐・コボルト討伐などの討伐系クエスト以外にも、旅の護衛、アイテム収集など様々だ。

きっと難易度もそれほど高くないのだろう。

今日は鮎川のトレーニングも兼ねて、コボルト討伐を受けてみる。

「こんにちは。レオナさん、これをお願いします」

「こんにちは。今日は二人ともしっかり装備を整えてるのね。このクエストでは、コボルトの魔石10個をギルドまで持って来ればクリアですよ。でも、あなたたちには簡単すぎないかしら?」

「今回は彼女の訓練と考えているので、次回はもう少し難しいのを受けますよ」

「そうなの。マイちゃん、気をつけてね」

「ありがとうございます」


昼ごはんを食べ、街からしばらく歩いてコボルトの森へやってきた。

「戦う前に、鮎川の装備に俺の魔力を込めておくよ」

「魔力を?」

「師匠に教えてもらったおまじないさ。鮎川が怪我をしませんように、ってね」

そう言いながら魔力を込めていく。

気休め程度ではあるが、何も無いよりはマシだろう。

鮎川も嬉しそうなので良しとしよう。


「まずは魔法の確認をしておこう。鮎川は水魔法と風魔法が使えるようだ。風魔法を使ってみようか。俺が見本を見せるから、その後に同じようにやってみよう。あの木に向かって意識を集中、『ウインドカッター』と唱えてごらん」

『ウインドカッター』

ババババッと木の幹に20本ほどのキズがついた。

鮎川が同じようにやってみる。

『ウインドカッター』

木にはキズ一つつかなかった。

「何かが体から抜けるような感覚はあったんだけど、先生みたいに上手くいかないね」

「まあ、最初だしな。大事なのはイメージだ。まずは体の近くに1本でいいから風でできた刃をイメージしてごらん。それができたら、遠くへ飛ばして木に当てるんだ」

目を閉じて集中している。

「うーっ…『ウインドカッター』」

小さいキズ1本だが、今度は成功した。

「やった!できたよ先生!」

はしゃぐ鮎川。

頭をなでてやる。

「よしよし。今度は刃の数を2本にしてみよう」

そうして3本まで増やすことができた。

「今はまっすぐ飛ばしていたけど、次は目標のあたりで刃を竜巻みたいにぐるぐる回してみよう。最初はゆっくりでいいから」

「いくよー、『ウインドカッター』」

今まで木の正面にばかりついていたキズが、側面にもついた。

「いいぞ。慣れてきたら回転のスピードを早くしていこう」

「うん」

「1日でここまで上達するなんて、鮎川は飲み込みが早いな。じゃあ、休憩しようか」



練習も終わり、実戦に向かう。

鮎川は何度かMPポーションを飲んだので、しばらくMP切れの心配は無い。

森の中を歩いていると、1体のコボルトが石の棍棒を手にしてこちらに走ってくる。

「さあ、やってみよう。落ち着いて狙いを定めるんだ。」

『ウインドカッター』

魔法が命中し、コボルトの足が止まる。

体中を傷だらけにして、その場に倒れこむ。

コボルトなら鮎川の魔法でも一撃のようだ。

光に包まれ、魔石だけが残る。

「やった。私が倒したんだね」

鮎川はうれしそうに魔石を拾う。

「怖くなかったか?」

「大丈夫だよ。それよりも、先生の力になれることが嬉しいの。今までの私じゃ何もできなかったから」

そうか、嬉しいことを言ってくれる。

「よし、じゃあどんどん行くぞ」

そうして鮎川は次々とコボルトを倒していった。

少しヒヤッとした時はあったが、無事に街に戻ることができた。


ギルドに寄った時も、自慢げにレオナさんに報告していた。

猫がとった獲物を飼い主に見せに来るような感じで微笑ましい。

「じゃあ、これがクエスト報酬と、余分に倒した魔石の代金ね」

「ありがとうございます」

銀貨5枚を鮎川が受け取る。

「先生、はいっ」

鮎川は俺に渡してくるが、それを鮎川の手に戻す。

「今日は鮎川が初めて魔物を倒したんだ。それで何か好きなものを買っていいよ」

「いいの?ありがとう」

今まで気にしていなかったが、鮎川にも欲しいものはあるだろうし、自由に使えるお金は必要だ。


宿に戻り、夕飯を食べる。

風呂に入り、まったりしている。

「今日は疲れただろうから早めに寝ようか」

「ねえ、私たち恋人どうしなんだよね?」

「そうだね」

「ねえ、鮎川じゃなくって、舞って呼んでほしいな」

俺は無意識に鮎川と呼び続けていたが、言われてみれば確かに。

数年間、鮎川は鮎川だったからな。

「舞」

ただ、呼び慣れていないので照れる。

「もっと」

「舞」

「ねえ、もっと」

「舞」

うれしそうに俺に飛びついてくる舞。

ぎゅっと抱きしめて、耳元で優しく呼んでやる。

「舞」

「ひゃうっ」

顔を真っ赤にして変な声を出している。

「もう、ドキドキして眠れなくなっちゃうよ」

「もっとドキドキさせてやろうか?」

見つめあい、キスをする。

そんなやりとりをしながら、夜は更けていった。



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