異世界へ
俺、高山泰彦は地方の小学校に勤める27歳。
ようやく先生として仕事にも慣れてきたころだ。
「せんせ~い、ありがとう!」
「中学校へ行っても元気でな。」
担任していた6年生の卒業式も終わり、少し落ち着いた3月の下旬。
車での帰り道、後方から居眠り運転のトラックが突っ込んできて意識不明になった…らしい。
気づいたらトランプが敷き詰められたような部屋にいた。
今、俺の目の前には一人の男。
「君も不幸だったね~。事故にあって即入院・手術。一命はとりとめたものの、頭を強く打っていて意識不明の状態だって。でも即死じゃなかった分、幸運なのかな~?」
ジョーカーのような服装で椅子に座り、笑っている。
「ここは…どこなんだ?」
「ここかい?狭間の部屋と呼ばれているね~。この世とあの世の狭間さ」
「じゃあ、俺は死ぬのか?」
「それは君次第さ~。君は死にたいの?」
「俺にはまだやりたいことがたくさんある。まだ死にたくない」
「じゃあ選んでね~君が選べる選択肢は3つのうちのどれかだね~。
①このままこの部屋で50年過ごして、後遺症も無く目を覚ます。
②今すぐ目覚めるけど、首から下はほとんど動かず、声も出せない状態。
③僕の管理する異世界へ行き、魔王を倒すお手伝い。
お礼として、倒せたらすぐ全快で目覚めさせてあげるよ~。
さあ、どれがいい~?じゅーう、きゅーう、はーち…」
「ま、待ってくれ!正直③を選びたいんだが、難易度はどれくらいなんだ?」
ゲームやラノベも好きだったので異世界転移への抵抗はそんなに無いが、いざ実際にやるとなると死にたくないし、確認したいところだ。
「う~ん…魔王はかなり強いよ~。でも君には少しだけ魔法使いの才能があるみたいだから、僕の力で強化してあげるよ~。さすがに世界最強チートとまではいかないけど。パラメーターやスキルも強化してあげるし、仲間を集めて頑張れば5年くらいで倒せるんじゃないかな~(たぶん)」
「もし異世界で死んだらどうなる?」
「その場合には②の状態だね~目は覚めるけど声や体はほとんど動かない状態かな」
「そうか…じゃあ③で頼む。やるだけやってみるさ」
「おっけ~わかった。じゃあ行こうか。準備はいいかい?」
「いきなりか。まあ何も持ってないし、いつでもいいぞ。そういえばお前の名前は?」
「僕の名前は・・・・・・・・・・・」
結局名前は聞こえず、意識が遠くなっていった。
まあいいか。また会うこともあるだろう。
目が覚めたら異世界でした。




