戯れる双子 和雅View
2話です。もはやじゃれ合いってレベルじゃないですね。
ハイスペックを超えて怪物になってます。
修正。
俺と桃那は2人で、通学路を歩いていた。2人とも風凰学園に通っている。ちなみに同じクラスで、席も隣同士と言う謀られたかと思うぐらいにベッタリだった。
そして実はこの時間が俺にとって特に一番重要かつ、とても危険な時間だ。
その理由は、桃那が事あるごとに俺にくっつこうとしてくるのだ。
数ある兄は、妹に対して『"自分以外は"触れてはいけない』と言うヤキモチを拗らせただけの者も多々居ることだろう。無論、俺はそれを否定するつもりはない。
だが、桃那だけは汚れてはならないのだ! だから誰だろうと触れてはならない。それは兄である俺だろうともだ!
手を触れ合うことすら禁じている。深夜にあった事は置いといて、本当に最後に触れ合ったのはいつの事だろう。
俺も愚かだった。こんなにも可愛い桃那に触れてしまうなど、とてもではないが許された行為では無い。
しかし、今日に限って、相手からくっついてくる気配が無い。
俺は更に警戒を強めた。きっと恐らくそろそろ爆弾を投げつけてくるはずだ。
「ねえ、兄さん……?」
ほら、来たぞ来たぞ! 俺はいつでも走り出せるように構える。
しかしそんな俺に掛けられた桃那は言葉は拍子抜けするような内容だった。
「昨日の放課後に……ね。亜美と会ってたよね?」
「亜美? 東山のことか」
東山 亜美は桃那の友人だ。もっぱら俺の情報源となっている。
そこまで頭の回る人間でもないので、それとなく桃那に流れないように、桃那の情報を入手しているのだ。
おかげでスリーサイズまで知っているが俺は知りたく無かった。
「東山なら確かに昨日、放課後に会ってたが?」
「ねえ……? 亜美と何してたの? もしも……だったら……」
最後の方はぼそぼそと言うので良く聞こえなかった。
しかし俺としては桃那が独り言を呟くのはあまり芳しくない。もっと明るく笑顔で居て欲しい。
「軽く話しただけだ。何なら東山に直接聞けばいいだろう」
「亜美と変なこととか、してない?」
「ただの世間話をしただけだ」
「……そっか、ならいいや」
「それよりも、何故俺が昨日東山と会っていたのを知っていたんだ?」
「におっ……。う、ううん! 女の勘かな」
桃那が慌てふためいたので少し心配になったが、しっかり笑顔になったのでよしとしようか。
東山に詮索を入れても、俺が桃那について聞き出していた事を掴める訳がない。既に情報錯乱を処置済みだ。
「それじゃ、兄さ~んっ」
「……なんだ桃那?」
―スッ。桃那が俺に急接近して来たので、俺は上手く間合いを取る。
「今日は、手でも繋がない?」
「いや……、今日は急ぎの用事がな」
―スッダダッ。負けじと桃那も距離を縮めるので、俺は軽く走り出した。
「兄さんっ! 何で逃げるのよ!」
「だから、用事があるんだ!」
―ダダッダダダッ。桃那が俺に追いつくため走り出したので、俺も走り出した。
「なら、私も手伝って上げるから!!」
「それには及ばん。俺1人でやれる!」
―ダダダッダダダダダッ。もはや俺を桃那が追い掛け回しているようにしか見えない。
「良いから手伝わせて!!」
「俺1人で十分だ! だから桃那はゆっくり来い!」
「やだっ!! 一緒に行くんだからーー!!!」
不毛な言い合いをしながら自転車通学者達も軽く追い抜く程のスピードで走ったが後ろから桃那が付いて来る。
ここは上手く撒かなければならないな。
そこで俺は通学路途中にある、公園を上手く利用することにした。
公園には多くの障害物があるので、上手く利用してかつ、桃那のスカートが危なくならないようなコースで撒かなければならない。
ならばこれしかあるまい。
「とぅ!!」
俺はブランコに飛び乗り一気に蹴り飛ばした。
―ガッ、グルングルン、ガッ! ブランコは何週も回転して、上の支えになっている柱に巻かれた。
そして俺はブランコを蹴り飛ばした反動の勢いで宙を飛び、一気に距離を稼ぐ。
同じコースを取るにしてもブランコは既に使えない状態だ。俺はこの距離を利用して一気に逃げ切る。
「あまーいっ!」
「な、何っ!?」
―ガアアンッ!! 桃那はブランコの支柱を思いっきり蹴り飛ばして飛ぶように一気に加速した。支柱は見事にへっこんで、大変危険な形になっているだろう。※公園の遊具を絶対に壊してはいけません。
スカートが危険な状態になってないかチェックしたが、ちゃんと手で押さえていて鉄壁だった。
俺は安心して逃げ切る構えを取った。桃那は若干ながら進んだかもしれないが、まだ俺の方に分がある。
とは言え、このまま逃げ切るのは難しい。ならば次はこれしかないだろう。
「更にとうっ!!」
―グイッブンッッ!! 俺は目の前にあったサッカーゴールを持ち上げ、桃那の前にぶん投げた。
―ズズンッッ! サッカーゴールは桃那の手前に落ち、通行を邪魔している。これでしばらく時間が稼げるはずだ。
「兄さんと手を繋ぐの邪魔するなら、容赦しないんだからぁぁ!!」
桃那が何か叫ぶと、サッカーゴールの網を手で切り裂いた。そしてすぐに俺に向かって走り出す。
しかし、俺との距離はだいぶ稼げている。このままならば確実に逃げられるはずだ。
「うぅ、こうなったらっ! ……えーーいっ!!」
―グォッブオンッ。サッカーゴールのある地点まで桃那が戻ったと思うと、そのサッカーゴールを持ち上げて俺にぶん投げてきた。
これはとても危険な直撃コースだ。
「くっ!!」
俺は跳ねるように後ろに避けるしかなかった。
―ズドーーンッッ! 俺の前にはサッカーゴールが地面に突き刺さった。
そのまま、俺は突き刺さったサッカーゴールを踏み台にして、すぐに飛び越えるが、すぐ後ろまで桃那がやってきている。
このままでは捕まるのも時間の問題かもしれない。
ならば――
「ええっ!?」
―バッ。俺は一気に逆走し、桃那とすれ違った。かなりのスピードが出てたのであっと言う間に離れる。
こんなスピードで走ってるぐらいだ。多少遠回りになっても余裕で登校時間に間に合うので問題はない。
桃那もすぐに反転して、俺を追いかけるがこの距離に追いつけるわけもなく、俺はそのまま逃げ切った。
* * *
「「ぜぇはぁぜぇはぁ……」」
俺達2人は、息もからがらにして昇降口にたどり着いた。周囲の者達からは、名物として見られている仲良し双子の登校風景だ。
ここまで疲れ切っていると、さすがにお互い共に当初の目的も忘れ、後はもう教室へ向かうだけだ。
――だがここで1つの問題が起こった。
―ガチャッガチャッ。俺と桃那は自分の下駄箱を開けた。もちろんお互いの靴が隠されている等のいじめは受けていない。
ただし、下駄箱にはとある物が混入されていた。
「恋文か……?」「また、ラブレター?」
「「なっ!?」」
―バッ! 俺と桃那はお互いを向き合った。
そしてお互いの手には恋文と思われる物が握られている。
「も、桃那。そいつを寄越すんだ」
「に、兄さん……。そ、そそその手にあるものは何……?」
フフフフッと、俺達は静かに笑いあった。しかし目が全然笑っていない。
周囲の登校中の者は、何事かと俺達を恐れ恐れも見守っている。
―バッ!! 動き出したのは同時だった。
「フッ!」「ハァッ!」
お互いの狙いは、お互いが持つ恋文だ。
―バッバッバッ! 目にも留まらぬ程のスピードでお互いを牽制しあう。
しかし相手の防御が固く、お互いが攻撃できずにいる。
「(このままでは、埒が明かん。ならばこいつを囮にして!)」
俺は手元にある差出不明の恋文を生贄に、桃那の恋文を奪い取る!
―サッバリッビリッバリッ!! お互いの狙いとやり口は同じようで、桃那も手元にある恋文を生贄に、俺の恋文を奪おうとする。
―ザザッビリッバリッビリビリッバリッ!! 幾度と無く激しい攻防が繰り広げられた。お互い手元にある恋文はもはや元の半分しかない。
俺達は肩で息をしながら、無残にも床に散らばった破片に目もくれずに、相手の恋文のみを狙い続けた。
―バリバリバリッビリバリバリッ!! ダダダダッと音がしてもおかしくない程の素早く手を繰り出す。相手を傷つけず、触れずに恋文を奪うのは至難の業だ。
―バッ!!
「「っ!?」」
お互い、距離を開く。
相手の手には恋文が無かった。いったいどこへ行ってしまったのだろうか。
「桃那……、素直に出した方が身のためだぞ?」
「兄さんこそ。後で泣いても許さないんだからっ!」
ゴゴゴゴッと音がしそうな程に睨み合う俺達。決して相手を怒っている訳ではない。全ては愛しの妹に恋文出した者への恨みだ。その相手をどんなことがあっても、俺は絶対に許さないだろう。
「あの~……」
横で見ていたと思われる男子生徒が挙手をしながら俺達の間に割り込んだ。俺達はキッと視線だけで人が殺せるほどの鋭い目で、乱入者に向かって視線を向けた。
男子生徒は「ヒッ!」と声を上げて、ツンツンと床に向かって指を差した。
俺達が床を見ると、紙ふぶきと思われるぐらい散り散りになった恋文の残骸があった。
「……片付けるか」
「……うん」
俺たち2人は仲良くその紙ふぶきを片付けたのだった。
2人ともバラで居るときは外面がとても良いですのでモテると言う設定です。
お兄ちゃんは紳士で、妹ちゃんはアイドルみたいな感じッスかね。