第六話 真実
家のドアを開けたら、母さんが俺に近づいてきた。
パシッ!
俺はリューンを背に乗せたまま平手打ちをくらった。
「どうして勝手に家を飛び出すの!それにリューンまで連れて行って・・・・」
「かあさ「お母さんはリューンに何かがあったかと思って・・・・」
「母さん、話をき「リューン、早くこっちにおいで」
「・・・・・」
母さんはまるで人形を扱う子供のようにリューンを俺の背から取り上げた。
母さんはリューンを抱きしめながら、声も出さずに泣いていた。
「お母さん、僕兄ちゃんに連れていかれたんじゃないよ」
「リューン、別にいいよ」
「母さんリューンは俺が連れてったことにしていい、ただ一つだけ、一つだけ俺の話を聞いてくれないか?」
母さんは黙ったままだった。
「母さん、母さんは太陽だよな、父さん、ジャックは何の種族だった」
「・・・・・太陽だったわ」
「嘘をつかないでくれよ、父さんは・・・・・本当は風雲じゃないのか?」
「!!」
母さんは驚いた顔をした。
「そんなはずはないわ!あなたは正真正銘太陽の純系よ」
「そうか・・・だったらどうしてこれを吹いたら風が起きたんだッ!俺が太陽の純系だったら、風なんか起きるもんかッ!」
「あなた、風を起こしたの・・・・?」
「そうだよ」
母さんは下を向いた。
「・・・・・・・・あなたは太陽と風雲の混血よ」
「じゃあ父さんは・・・・・」
母さんは笑っていた。
父さんはこれがティアだと知っていて俺に渡したのか・・・・・?
リューンは自分の目の前で何が起きているのかわからなかった。
「兄ちゃん、僕もその笛吹ける?だったら吹きたい!!」
目を輝かせて寄ってくるリューンを見て、ソールはだから今まで違和感があったのだときずいた。
「母さん、もしかしてリューンと俺は・・・・・」
母さんは急に顔色を変えた。
言わないで!それだけは言わないで!!と訴えている目だった。
俺はしゃがんで、リューンに笛を差し出した。
もしこれが吹けなかったら・・・・・・・・・・リューンは・・・・・・
リューンは笛に息を吹き込んだ。
あの音は・・・・・・・・しなかった。
「リューン、あなたはまだ子供だから吹けないのよ、さぁ・・・・・こっちにいらっしゃい」
「違うな」
「・・・・・・!」
母さんはまたこっちを見た。
「何が?違うの??」
丸い目で、かわいい小さい目で、今までずっと憎いと思い続けた目で・・・・・やつはこっちを見ていた。
「それはな、お前と俺は血がつながってないからだよ」
俺は心の中から憎しみがあふれてくるのを感じた。
今まで憎くて、憎くて、どうしようもなかった。
それを抑えて、抑えて、生きてきた。
考えが合わなくて、でも“兄弟”だから・・・・・しかたないと思っていた。
だけど・・・・・・それは違った。
あいつとは“兄弟”ではない。
あいつと“きょうだい”じゃない・・・・
あいつと“キョウダイ”じゃナい・・・・
アイつと“キョウダイ”ジャナい・・・・
俺は嬉しかった。
泣きたいぐらい嬉しかった。
リューンが俺の目の前にいる、呆然とした顔で、信じられないという顔で、絶望にあふれた顔で。
俺は笑った。
隣の家に聞こえてしまうくらいに大きな声で。
決心した。
今、心の中で決心した。
母さんに言おうと思った。
「母さん、俺さ・・・・・」
「大変だ!カレンさん!カレンさんはいるかい!?」
「どうしましたか、そんなに急いで・・・・」
「とっ・・・・盗賊が、この村の作物すべてに除草用のコレアを撒いたんだッ!」
「なんですってっ!!」
俺はコレアの意味を知っていたからその意味がよくわかった。
コレアは除草薬の中では最高レベルのやつだ、早く手を打たないとすべて作物がダメになる。
「でも、この村すべてに撒かれたのですか?それだったらもう・・・・」
「カレンさん!あきらめちゃだめだ!!早く、来てくださいッ!!」
「でも・・・・」
俺は心の中でもう一つ決心した。
「母さん、俺がすべての作物を救えたら・・・・・どうする?」
「えっ・・・・?」
「俺が風を起こしてその除草薬を吹き飛ばしてやる、だから俺は家を出てもいいかな?」
「家を・・・・出る?」
「あぁ」
「・・・・・」
母さんは悩まなかった。
「いいわ、家を出ても。その代わり、もう家には戻ってこないでちょうだい」
「わかった」
俺は外へゆっくり歩きだしていった。