第五話 目覚めた力
はぁ・・・はぁ・・・・・ッ
森をずーっと走りぬけるのはさすがに疲れ始めることだった。
修行を小さいころからしていたので自信があったけど、長時間のマジの走りは本当にきつい。
・・・・ッくそ!止まったら死ぬ、走り続けて疲れて死ぬ、俺には死ぬ道しか残って無いのかッ!?
そんなの絶対に・・・嫌だ!!
俺は狩人、ジャックの息子だぞ!こんなことで死んでたまるかッッ!!
父さんの事を思ったら、体が軽くなっていった。
呼吸も多少だけど楽になった。
・・・・?なんだ?今のは・・・・
走りぬけていると視界が一瞬で開けて辺りがとてもよく見えた。
しまった!父さんの事に気を取られていてどこを走ってるのかわからなかった・・・・
そこはカルム(アルマの原料となる植物)の畑だった。
カルムは背の高い植物だがあれに隠れてはすぐに見つかってしまう。
「どこだぁ!クソガキッ!!」
後ろで叫ぶ盗賊達・・・
仕方がないッ!ここに入るしか・・・・
ソールはカルムの中を中腰で進んでいった。
どうすれば助かる?助かる方法を・・・・
一瞬父さんの声が浮かんできた。
「そこを咥えて吹くと音もなるんだぞ、たとえば敵に追い詰められてどうしようもない時に吹くんだ」
それだッ!!
だけどこんなとこで笛なんか吹いたら逆に見つかってしまうんじゃ・・・・
でも、今はこれしか方法がないッ!!
ソールはペンダントを口に咥えた。
そして勢いよく息を吹き込んだ。
ソールは一瞬自分の頭上を竜が飛んでいるのではないかと思った。
それは自分の吹いた笛の音が昔父さんと聞いた竜の鳴き声にそっくりだった。
「おいッ!あいつはどこに行った!?」
「わからない・・・・こんなにカルムが揺れていたら見えないッ!」
盗賊の叫び声が聞こえた。
カルムが揺れている??どういうことだ?
まずはこの場から離れなくては・・・・
ソールはサッと走り抜けて森の方に向かう途中驚いて止まってしまった。
自分がさっきいたカルムの畑のすべてのカルムが海のように波立っていたからだった。
それはカルムが揺れているのではなくて、風が吹いていたのであった。
これは・・・俺がしたことなのか?
でも、この笛を吹いたら風が起きた・・・・・・!
風ッ!!?
風と言えば今日読んだルーリアの伝説・・・・
風の民・風雲一族が持つティア・・・・
だが俺は太陽一族なはずなのに・・・・
そんなことを考えていた時リューンの存在を忘れていたことにきずいて、リューンを乗っけた木の所まで走っていった。
「兄ちゃーん・・・・・兄ちゃーん・・・・・・うっうっ・・・・」
「リューンッ!」
俺は半泣きのリューンを抱きかかえた。
頬からはさっき蹴飛ばされたときに怪我をしたのか傷があって、少し血がにじんでいた。
「兄ちゃん・・・・・怖かったよぉ」
「あぁ・・・・」
俺はそれどころじゃない目にあったのに、怖いだけで済ましているリューンに腹が立ったが、それより自分が風を使えた事にドキドキしていた。
俺はもしかしたら風雲一族の血を引いているのかもしれない・・・
俺の心に少し希望が生まれていた。
それを確かめるためには母さんに会わなければ・・・・
そして俺は家へと向かって歩いて行った。