第三話 夢の中で・・・
泣きすぎて頭がガンガンしていた・・・
何もかもが嫌になった。
母さんも、リューンも、世界も、自分の事さえも・・・
俺は誰にも必要とされてなんかいない・・・
いっそのこと・・・・・・
死んでしまおうか。
俺が死んだって誰も悲しんだりしない。
俺なんか・・・俺なんか・・・・
俺なんか・・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・・・父さん?
「ソールまた起きてたのか・・・・母さんに叱られるぞ」
「父さんこそ何してるの?また修行?」
父さんは顔をしかめた。
「あぁ・・・・そうだが」
「父さんこそこんなに朝早くから修行に行ったら、母さんに怒られるよ」
僕はクスクス笑う。
父さんは僕に顔を近づけて、こう言った。
「ソールも来るか?もう7才だもんなぁ・・・・」
僕は目を輝かせて言った。
「え!!いいの?」
「うーん・・・・怒られるのは一人より二人の方が・・・・
『心強い!』
「だよね」
「それじゃあ、行くか」
「うんッ!!」
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「ソール・・・こっちへおいで」
「父さん、何?」
「今日はお前の8才の誕生日だよな?」
「え?あ・・・・うん、そうだよ」
父さんはニヤッと笑った。
「7月7日・・・・忘れるはずもないなー、わが子の誕生日を」
僕は少しだけ、忘れてたのかな・・・?思ったけどそこは触れなかった。
「ソール、カレンには内緒だぞ・・・」
と言ってキョロキョロしながら薄茶色の箱を僕の手のひらの上にそーっと置いた。
8才の僕には少し重たかったけど、なんか胸の中から嬉しさが込み上げてきた。
だって父さんがプレゼントをくれたことなんて一度もなかったから!
それに母さんに内緒なんて・・・・
「開けていい?」
「あぁ」
僕はめちゃくちゃ嬉しくて、箱を開けると・・・・
「剣だ!短剣だー!!」
「何がいいかわからなかったけど、もう8才だし剣をもってもいい歳だと思ったんだよ」
「ありがとう!!すごく嬉しいよ!!」
「後これも・・・」
父さんは自分のペンダントをはずして、僕にかけてきた。
「なんだこれ?アクサソリーでしょ?」
「“アクセサリー”だよ、それはきっとお前の身を助けてくれる・・・」
「ふうん・・・そうなんだ」
「そこを咥えて吹くと音もなるんだぞ、たとえば敵に追い詰められてどうしようもない時に吹くんだ」
「うん、わかった」
「じゃあ、森にでも行ってくるか・・・」
「うん!」
ガサガサ・・・・
僕らは木から木を飛び移っていた。
「ソール!!そっちは危ないッ!!」
「大丈夫だよー」
僕は笑った。
・・・・・・・・・・・えっ?
僕は谷に落ちて行った。
「父さーーーーーーーーーーん!!!」
「ソールッッ!!」
そして目の前は暗くなった。
「・・・・・・・・うっ」
頭が痛くて目が覚めると、横には父さんが倒れていた。
「父さん、ほら少し頭を打ったけど大丈夫だったでしょ?」
・・・・・・・父さん?
僕は父さんの体を揺らした。
・・・・・・・父さん??
僕の頭の中に嫌な予感がよぎった・・・・
「父さん!父さん!!起きて早く帰らないと・・・・」
父さん!父さんッ!!起きて・・・・起きてよぉ!!
父さん!死んじゃったりしないよね? 父さん!!
父さん!僕を置いていかないで、置いていかないでよぉ・・・・・
父さんー・・・・・・・・・
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朝日が照りだした・・・・・
「・・・・・・・・・・ううん」
俺はあのまま寝てしまったのか・・・・?
目をこすると朝日に反射してきらめくトルナ湖が見えた。
「・・・・・・・・・・朝か」
俺は父さんの夢を見ていたんだな・・・・
俺はスッと立ち上がった。
父さん・・・・・死んでしまおうか、なんていってごめん。
俺は父さんの分も生きなきゃな!
よしっ!家に帰ろう。
俺の胸には朝日に反射して輝く緑の石のペンダントがあった。