第四話 覚悟
「うっ・・・」
意識が戻るとカビ臭い臭いがした。
口の中には少しばかりの・・・血?
何が起こったのかがわかったとき、俺はサフィーナの姿を探した。
近くに座って心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「大丈夫ですか?」
「・・・あぁ」
サフィーナは急に涙ぐんだ。
「あっ・・・あたしっ・・・ソールさんが死んじゃったんじゃないかって・・・思って・・・」
サフィーナの目から涙が零れ落ちる。
サフィーナは声も無く泣いていた。
「大丈夫だから、心配させて・・・すまなかった」
首を横に振るサフィーナ。
「わたっ・・・私が捕まったりしたから・・・ごめんなさい、ごめん・・なさい」
俺は彼女を見て、
「縄、かけられてんのか・・・」
そう呟いた後に自分も縄がかけられていることに気づく。
結構固く結んである・・・これは切らなきゃいけないな・・・
ソールは以前フローラから教えてもらった風の魔法を思い出したが、あれでは手を切ってしまう恐れがあったので使うことが出来なかった。
腰につけていた短剣もやつらに取られてしまったみたいだった。
何か刃物がないかあたりを見渡すがそれらしき物は見当たらない・・・
その時やつらの声が壁伝いに聞こえてきたのだ。
ソールは急いで壁に耳を当てた。
「お・・・ボス・・うするっ・?」
「・・女が・・ないから、ここを・・・爆破・・・だとよ」
「爆破っ!?」
「おいっ、声がでかいぞ!」
「そうか・・・すま・い・・・」
・・・・爆破だとッ!?
「女が宝のありかを言わないんでよ、ボスがお怒りだぜ・・・」
「それでいつ?」
「夕方だそ・・と、外を爆破・・水を入れて、水没させ・そうだ・・・」
「さぞかし苦し・・・う・・・ヘッヘッヘッ・・・」
・・・水没ッ!?そんなことされたらたまったもんじゃない!!
天井の隙間から青い空が見える。
きっとまだ正午は回っていないのだろう・・・
急がないと間に合わない!!
キョロキョロ見渡すと何か反射して光っているものが見えた。
近くに寄って見ると、錆びついてはいるが使えそうな小さいナイフだった。
「サフィーナ!俺の方へ腕を向けて座れ!」
「・・・うん」
俺は手早くナイフを口に咥えた。
サフィーナの腕に近づけ縄に当ててこすり始めた。
少しずつ切れてはいるが、なかなか思うようには進まなかった。
それに殴られたせいか、あごがだんだんしびれ始めていた。
たまに上を向いて休憩するが、その間隔は時間が経つほど早く、長くなっていった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
縄があと少しで切れそうなのに、もうあごが限界に近づく・・・
あと少し・・・あと少し・・・
休憩を終えて、頭を下に向けるとあごに激痛が走った。
「っうあぁ!!」
口が開く。
ナイフが落ちる。
あと・・・あと少しだったのに・・・
でも、よく見れば歯で噛み切れるくらいなのに気づく。
「サフィーナ・・・縄をもっと張れるか?」
「えっ?うん・・・」
ピンと張られた縄に顔を近づけ縄を咥える。
「・・・っ!」
サフィーナが少し体を強ばらせた。
これ以上あごに力を入れれば激痛が走るとわかっていたが、それしか方法は残っていなかった。
ギリギリ・・・ギリギリ・・・
激痛が走る中、ソールは周りの変化に気づき始めていた。
二人を包む青い光がだんだんと赤く変わり始めていた。
ギリギリ・・・・・・プツン。
・・・・切れたッ!!
その時、遠くで爆発音が鳴り響く。
「・・・何?」
「サフィーナ急いで俺の・・・縄を・・・切って・・くれ・・・」
「うっうん・・・」
俺はサフィーナにそう言った。
だが・・・俺の頭の中では50%、死を覚悟していた。