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17あれ、これって形勢不利なんじゃ?


 その夜私は自分の部屋で眠り翌朝いつものようにダイニングで朝食を頂いた。

 それからしばらくして父からの伝言を預かったと騎士が来た。

 「ヴィオレッテ公爵令嬢、ヴィオレッテ公爵様が王宮にてお待ちです。すぐにお連れするようにとの事です」

 「わかりました。でも、少し支度に時間がかかります。先に帰って支度が整い次第王宮に上がると知らせて下さい」

 「はい、そのように伝えます」

 騎士はそう言って帰って行った。


 私は王宮に上がるのでアルフォン殿下からいただいたドレスではないドレスを着て王宮に上がった。


 ルドルフは私の専属の護衛騎士と言うことで今回は一緒に城の中に入る事が出来た。

 「ルドルフが入り口で止められたらどうしようかと思ったけど良かったわ」

 「個人の護衛騎士はいいらしいですから、でも、俺は止められても今日は一緒に入るつもりでしたけどね」

 「あなたがいてくれるとほんとに心強いわ。きっとお父様は何か策略を立ててるはず気を抜かないでね」

 「もちろんです」

 ルドルフは一段と背筋を伸ばしてきりりとした顔をした。

 ルドルフはかなり端整な顔立ちだ。右眉の下に星の形をしたほくろがあるのも何とも艶っぽい。

 私はそんな彼に少し見惚れながらも父の執務室を訪ねた。

 「お父様ソルティです」

 「ああ、待っていた。ルドルフどうしてお前がここにいる」

 「いいんです。ルドルフは私が雇っている個人の護衛ですから」

 「そうか。まあいい。ソルティ一緒に殿下の執務室に行こう」

 「殿下の執務室?どなたの?」

 「アルフォン殿下に決まってるだろう」

 「でも、殿下は執務室はお持ちでなかったはず」

 「国王が責任を持たせなければとおっしゃって執務室を与えられた。殿下も待っている。さあ」

 「まあ、いいですわ。殿下とははっきり決着をつけるつもりでしたから、ルドルフも一緒に行きましょう」

 私はこの時すっかり失念していた。

 父が何の文句も言わずこんな態度を取るときは何かがあると言うことを…


 ★***★


 アルフォン殿下の執務室に行く。

 「ソルティ来てくれたんだね。待っていた。実は話があってね。さあ、座って」

 アルフォン殿下はまばゆいばかりの笑みを浮かべて私を出迎えた。

 はっきり言ってきもい!何か策略があるに違いない。

 私は身体が強張るのをこらえて必死に平気そうな顔をする。

 「アルフォン殿下私もお話があります。では失礼して」

 「こいつは?こんなのがいたら話出来ないと思わない?」

 アルフォン殿下はルドルフを汚いものを見るような目つきで見る。

 「こいつって失礼ですわ。彼は私の個人的な護衛です。何かあっても嫌なので同席させます」

 「何もあるはずがないだろう。私が信用できない?」

 「いえ、そういう事ではありません」


 父が口をはさんだ。

 「ところでルドルフは誰に雇われている?」

 いきなりの質問に驚くがルドルフは真面目な顔で応える。

 「はい、私はソルティ・ヴィオレッテ公爵令嬢に雇われております」

 「そうか。わかった」

 父はそれ以上は聞かなかった。

 ルドルフも扉の近くで立ったまま口を閉じた。


 「なんですいきなり?お父様何がおっしゃりたいの?はっきり言ってください」

 私は父をけん制する。

 何かがおかしい?

 「いや、いいんだ。殿下お話をどうぞ」

 なに?気持ち悪いほど聞き分けがいいけど…私は背中に何かが這うような嫌な感じを覚えたがそれより殿下だと気持ちを切り替えた。

 アルフォン殿下は身を乗り出すように私の目の前に近づいた。

 (ああ、もう。殿下近いんですけど…)

 「ああ、…実はジャネットの事なんだが私以外にも複数の男性と交流があった。だから妊娠の話は相手がはっきりしないと言うことでジャネットとのことはなかったことになった。だからソルティ…私とこのまま婚約を続けて欲しいんだ。もちろん今までのような事はしない。きちんとエスコートもするしデートにも誘う。それに他の女とも付き合わない。ジャネットの事で私は不誠実がどれほど人を傷つけるかよくわかったんだ。だから頼む」

 「えっ?殿下おしゃってること理解できてます?今おっしゃったのは他の女と付き合わないって事ですよ」

 「ああ、もちろん。そのつもりだが…」

 「でも、そんな都合よく人が変われるでしょうか?」

 「私は心を入れ替えるつもりだが、ソルティは信じれないって事か?」

 もちろん信じれない。だが、それをここまで言っている彼を目の前にして言うのはさらに自分を追い詰める気がした。

 「……」

 私はここにきて手詰まりになった。困ったわ。何かいい言い訳がない?


 そうだ。私は除籍された身。公爵家の令嬢ではなかったわ。

 私はそれに気づくとうふっと笑みがこぼれた。

 「どうしたソルティ?言ってみろ」

 「殿下がそれほどまで心を入れ替えて下さったのに残念です。私は先日公爵家を除籍されたのです。私の今の身分は平民と同じ。そんな私を婚約者になど絶対に無理です。だから婚約はなかったことにするしかありませんわ」

 私はアルフォン殿下をちらりと見る。

 アルフォン殿下は驚いた顔をしたがその瞳は父の方に向いた。


 「ソルティ今何と?」父が上ずった声で聞いた。

 私はますます調子に乗った。

 「はい、ですから先日お父様が言われたのですよ。もうお忘れですか?私を除籍するとはっきりおっしゃったではありませんか」

 私は勝ち誇った気分で顔を上げる。

 「あれは言葉の綾と言うもの。そんな事子供でも分かること。国王も認めていない。現にお前は昨晩どこに寝た?お前の着ているドレスは誰のものだ?」

 「そ、それはお父様が話があるからと呼び出されたからで…」

 (あれ?何かおかしくない?)


 「そうか、それならばどうして昨晩引き取らなかった。私は帰れないと連絡したはずだ。除籍された平民と思っているなら公爵家の屋敷にそのままいるようなことはしないだろう。いいかソルティ。お前は自分で除籍してもいいと言っておきながら昨夜屋敷に帰って自分の部屋で寝た。朝食はわが屋敷のダイニングで食べドレスは公爵家令嬢のものを着ている。それは今も自分がヴィオレッテ公爵家の令嬢と思っているからだろう?あんな話は戯言。いい加減諦めて婚約を受け入れたらどうなんだ?」


 まるで狼に睨まれた子羊のように私の身体は縮まって行く。

 お父様の言う事には逆らえない。逆らえば恐いお仕置きが待っている。

 そんな植え付けられた感情が身体の自由を心の自由を奪って来た。

 ううん、今度こそ負けたくない。

 こんな所で私の気持ちを押し殺して生きてなんか行きたくない!

 「でも、私はいやなのです。アルフォン殿下とこれからの人生を共に生きていくなんて絶対に嫌なのです。お父様どうか私の気持ちを分かって下さい。お願いします」

 私は頭を膝につくくらい折り曲げて父に許しを請うた。




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