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第42話 悲しきオトコの性とデリカシー

「――――所長!! それにヨウヘイさんにアリノさん!! よく御無事で戻られました!!」




 ――危険極まりない灼熱のエリアを踏破したリッチマンたち。組織の長自らが出撃するということに戸惑いつつも見送ったサクライはじめ、対悪性怪物殲滅班スレイヤーズギルドの面々は安堵した様子で3人を出迎えた。




「――いやあー、今回は無理かと思ったけど……マユ……いや、アクアセイバーが加わってくれて助かったぜ!!」




「――『リターン』で逃げることも出来たとはいえ、1つ借りが出来たな。正直、助けが無ければ難しかっただろう。」





 リッチマンとネイキッドフレイムは、それぞれアクアセイバーことヒビキ=マユに改めて礼を言う。





「……確かに、わっちも強敵に戸惑ったでありんす。それでも、この脇差……雪水嵐ユキミズアラシによるヒーロー化への研究が間に合って良かった。この力なら、あの灼熱のエリアにはきっと勝算を見込めると思ったぇ。しかし……サクライ。送り出す直前までは随分食い下がったもんだぇ、今はかなり落ち着いてる。」





 ――サクライにとっては、自分の上司であり、そしてどこか妹のように大切に想っている節があるが……今は緊張の解けた苦笑いを浮かべている。





「――――吹っ切れました。もちろん、会社の社長自ら危険な目に遭うのは避けたかったし、実際今なお職員の中には所長が自ら敵陣に出向くことを良しとしない人もいるでしょう。ですが、所長は敵陣に切り込んで、ヨウヘイさんたちを直接助ける力を得た。それに、司令官としては私の方が向いていると看破されました。危険を冒さねば勝ち取れぬ戦いもあることでしょう。きっと本来はこういうスタンスの方が得策だったのです。所長がそれだけの力でヒーローに加わるなら、戦力の強化としては願ってもないでしょう。ささささ、司令室まで戻って来て戦果を確認いたしましょう…………」





 そう言ってサクライは足早に司令室兼オペレーションルームへと戻っていった。その足取りは軽い。どうやら本当にマユへの過度な心配や保護からは吹っ切れたようだ。






「――さあーて。俺らも戻ってみっかあ。結構進んだし、稼ぎはいくらかな――――それにしても…………。」






「――? どうしたんでありんすか? リッチマン?」






 ――緊張が解けた辺りで、リッチマンは改めてヒーロースーツ姿のアクアセイバーを見遣った。





「――おめえって…………やっぱナイスバディだよなああ~…………女性職員からも憧れられるのも改めて頷けるぜ。へへへへ~…………。」






 ――長髪にかんざしのような装飾品が付いている以外は、あちこちに収納ポケットやカプセルを収納するストレージがあるとはいえ、くノ一のように全身タイツのような、ボディラインにぴちっ、とフィットしたアクアセイバーの容姿。





 豊満なバストに引き締まったウエスト周りに豊かな曲線美を生み出しているヒップから連なる太めの脚線。普段の仕事着にミニスカートの上に白衣の姿とはまた違ったセクシャルで大胆な姿。リッチマンは改めてアクアセイバーことマユのスタイルの良さに見惚れてしまった。





「――そいつはどうも、皆からも過ぎた評価を頂いているでありんす――――とでも言うと思った?」



「――――うおっ!?」





 ――アクアセイバーは照れて顔を赤らめる、などということはなく、じと~っとした目付きで素早く手元の脇差・雪水嵐を抜刀し、リッチマンの首筋にあてがった。思わずリッチマンも竦み上がる。






 ――はあ、とひと息吐いた後、刀身を納めて意識を念じ、変身を解いて普段の白衣姿に戻った。





「……くだらねえ。素直にスタイルを褒めてくれるのは嬉しいけど、そんな邪な目で見られて良い気はしんせん。2人ともさっさと変身を解いて、戻って来て。」






 そう言ってマユは些か不機嫌に、転送室を後にした。






 リッチマンとネイキッドフレイムも変身を解き、カネシロ=ヨウヘイとアリノ=ママニシに戻った。





「――ちぇっ。素直に言っただけじゃあねえか。何も刀向けてこなくてもよぉ~……」





 そう呟くヨウヘイに、アリノは珍しく呆れた顔つきと声で話す。






「……俺はそこまで恋愛に理解は深くないし、マユもタイプじゃあないんだが……お近付きになりたいんなら、もう少し女心を勉強したらどうだ? さっきのは俺もストレート過ぎてどうかと思うぞ。」





「――い、いや、お近付きになりたいとかそういう下心じゃあなくてよオ。単にナイスバディで良い女だなあって、素直に…………。」






「それを素直に面と向かって言ってしまうのを下心と言うんじゃあないのか? ……まあ、ここでヒーローとして働けるなら俺にとって大したことじゃあないが…………戦果の確認は時間がかかるだろう? 俺は腹が減ったから一言断ってから食堂に行ってくる。」






 そう低く零して、のしのしとアリノは戻っていった。






 ヨウヘイもオペレーションルームに戻っていくが、物思いに耽る。






「――――俺……そこまで恋愛経験値が、もしかしてヤベエくらい低いのか…………? いや、そもそもマユはカラダが特上なんであって、性格的には俺は無理だと思ったはずじゃあ――――アレェ~っ? これどっちだあ? この気持ち…………。」






 ――己の身近にいるマユという魅力的な女性を意識し、初対面では『恋愛対象としては無理』とまで思っていたはずのヨウヘイ。何か複雑な煩悶を抱えて腕組みしつつ、遅れて戻っていった――――

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