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第4話 正義のヒーロー、リッチマン

 ――光り輝くクマを模した貯金箱。その名はジャスティス・ストレージ…………ヨウヘイの声と、投入した3000円に呼応して、機械的な声が響いて来る。





「――――敵対勢力参照。使用者の正義奮起率72%。課金額3000円を確認。30分は戦闘形態で活動可能――――速やかに変身を開始――――!!」





 ――――ジャスティス・ストレージから金色に輝くエネルギーの鎖。その鎖がヨウヘイの全身を覆い、なお力強く光を放つ。






 …………ここで、読者の方々には『お約束』とも言える口上を述べねばなるまい。それが語り部としての義務デュティーだ。






 ――――説明しよう!! 金代用幣カネシロヨウヘイは亡き父より授かった謎の貯金箱『ジャスティス・ストレージ』に『課金』をすることで――――悪を滅する『正義のヒーロー』、リッチマンへと変身するのだッッッ!!





 ヨウヘイの全身から放たれる光が収まると、そこには目深に被ったマスクとたなびくマント。そして所々に装甲を纏い、手甲を両手にはめたヨウヘイ――――否。正義のヒーロー・リッチマンの勇姿があった。金色を基調としたヒーロースーツが、神々しいオーラと共に怪人たちを慄かせる。





 そして、リッチマンは全身で臨戦態勢を構え、雄叫びにも似た声を上げた。






「――来いッ!! 悪党ども!! 正義の名のもとに…………お前らを滅するッ!!」





「――ウウウゥゥゥッ!? USHAAAAAAAAAAAッッ!!」





 怪人たちは一旦お互いの顔を見合わせて狼狽えていたが、状況を静観するほどの知性も無い。ただただ逆上し、リッチマンに襲い掛かって来た――――!





「――ふっ! ドリャアッ!!」




 ――最初に鈍器を振りかざして大振りの一撃を仕掛けた怪人を躱し、反撃の一撃――――リッチマンの拳の威力は凄まじい。一瞬のうちに電気がスパークしたような衝撃と共に、豚のような怪人の頭部をそのまま打ち砕いてしまった。





 まず1体。





 そしてそのまま勢いを殺すことなく1回転し、同じくスパークしたような破裂音を響かせつつ裏拳で隣の怪人の頭部を破砕。これで2体――





 ――怪人たちは、何が起こったのかも解らず、ひとたび硬直する。






「――そりゃああああッ!!」






 ――そのまま、一瞬にして道路にひしめき合っている怪人たち目掛け、リッチマンは飛び込んだ。






 さながら雷が走る如く。ビビッドな輝きの金色の軌跡を描きながら、目にも止まらぬ速さと威力で拳と蹴りを見舞って走り抜ける。






 リッチマンが走り抜ける頃には、彼が止まるとほぼ同時に遅れて、パパパパァン、と怪人たちが破裂して跡形も残らず消滅していった。





「――――むっ。」





 リッチマンが一瞬唸る。彼の高いエネルギーに驚いたのか、遠くから次々と怪人たちが地面を砕きながら走り寄ってくる。夥しい数だ――――





「――数で押してきやがるか…………。」





 リッチマンは一度構え直し、ひと呼吸、力を溜めた。





「――USHAAAAAAAAAAAAッッ!!」





 轟然と殺気を放って怪人たちが一斉に襲い掛かるが――――






「――だが滅殺し切れる武器は…………ある!! ――――この俺の怒りの鉄拳の乱打だあああああああーーーッ!!」





 鼻の先まで怪人たちが迫って来た辺りで――――リッチマンは光り輝く拳に天の雷のような、地の底の炎のような、腹から湧き上がる義憤の魂を込めて――――ただただ怪人たちに連打を浴びせ続けた!!





 力を込め直した拳の乱打は、あまりの威力と速さに……巨大な重機関砲か高速回転で撃ち放つように、ぶーっ、とただただ轟音がひとつながりとなり、怪人の群れを爆砕していく。






 瞬く間に10体。





 次に瞬く間に100体。





 そのまた次に瞬く間に1000体――――






 リッチマンの豪拳は途方もない威力と速さで、眼前に広がる悪を破砕し、滅していった。






「――ふぅーっ……」






 短時間でかなりの数の敵を消滅させたが、ひと息すると同時に、また遠くから地震のような音を響かせて怪人たちは集結してくる。






 このままでは、如何にリッチマンが強いとはいえ、いずれジリ貧となり…………時間が過ぎて変身が解けてこちらの生命が危ないだろう。





「――――チッ! キリが無いぜ! こいつらの親玉は何処だ!? そいつを倒せばきっと――――」





「――――呼んだかぁ?」






 と、突然リッチマンの声に呼応して、目の前の空間にブラックホールのような異次元の闇が発生し、豚顔面の怪人たちとはひと味違いそうな魔物が現れた。





「……随分素直に出て来たなァ、おい!!」





 ――やや間抜けな調子だが、現れた魔物……怪人たちの親玉らしき異形を見て、リッチマンこそ素直に驚き、近付いた。






 ――親玉の魔物は、下半身が蛇で、金色の髪をたなびかせ、乳房を覆っている。乳房があるが顔立ちも声も男性的。両性具有の魔物のようだ。





 親玉は口角の肉皮を歪ませながら、しかし地を這うような悍ましい声で呟く。





「――おおっとお。それ以上近付くんじゃあない。なんせ、こっちにはなア――」





 ――親玉が目の前に手を翳すと、自分が出現したものと同様に、ブラックホールのような黒い闇のような空間の歪みから――――





「――ああっ!? あんたは――――」






「ううう……」





 ――先ほど喫茶店から飛び出して行った、ヒビキ=マユが現れた――――

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