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第35話 準備をしてくれ!!

「――――来たでありんすね。お待ちしておりんした。」





「――おう。久々だが、悪をぶちのめす為だぜ。」


「――予定通り来れて良かったな。」





 ――HIBIKI先端工学研究所の所内に、例によって首からC形職員証を提げたヨウヘイが来た。今回はアリノも同様に首から職員証を提げている。





 目的は当然――――





「――――ではぁ、まず対悪性怪物殲滅班スレイヤーズギルドの区画までついてきて。そこで装備を調えてもらいんす。悪の根城をさらに探索する為に――――」






 ――そう。次にあの異空間を攻略する目途が立ったので、ヨウヘイとアリノはマユに呼び出されたのだ。






「――おっ! 装備があんのか!? さっすが所長。3週間あまりの間にそんなもんまで用意したのかよ!!」





 ――ヨウヘイのやや興奮した言葉には然程目はくれず、背中を向けて対悪性怪物殲滅班の区画まで歩きながらマユは答える。





「…………装備の開発を頑張ったのはわっちなんかではなく、対悪性怪物殲滅班の職員のみんなでありんすから。あとその他の業務も進めてくれている一般職員も。」






 ――マユは金の髪を靡かせて足早に歩を進める。ヨウヘイとアリノも後に続いた――






 >>






「――――うおっ、なんか前来た時より物とか増えてね!?」





「――装備やら物資やら何やら用意したから、モノが多いのは当然でありんす。少うし狭いけど我慢してくんなまし。」





 ――対悪性怪物殲滅班の区画内は、新たにヨウヘイとアリノが出撃することも相まってやや騒然としていた。職員たちが皆せわしなく駆けずり回っている。






「――おお!! 来られましたね、ヨウヘイさん、アリノさん!!」






 同じく額に汗して駆けずり回っていた班長のサクライが、マユたちを見るなりややテンションの高いまま笑顔を向けて来た。一瞬金縁の眼鏡を取って顔の汗をタオルで拭う。






「――サクライ。まず2人に例の装備一式を持たせて。」






「――はいはいもちろん! 畏まりました~。お2人ともまずこちらへどうぞー。」






 サクライが手招きして奥へ進むと、武具開発の職員とその娘。親子で装備品の開発に従事している職員が駆けつけた。






「――おう。来たなダブルヒーロー。この数週間の間、おめえたちにピッタリな装備を作っておいたぜ。」




「是非ぜひ見てみてくださーい!!」






「――おお……これは……籠手、か?」





「俺用だろうが、斧もあるな。」






 目の前にまず飛び込んできたのは、拳で闘うリッチマンに合わせたパンチンググラブ。そして重い斧で闘うネイキッドフレイムに合わせた斧だ。






「――ありゃ? 随分と見かけによらず……かるっ……軽くねえか?」





「……斧もそうだな。まるで玩具だ。この程度の重量で強度や威力は大丈夫なのか?」





 重厚でいかつい見た目に反して、紙屑のように軽い。武具係の娘が含み笑いをする。





「――ふっふっふー。ご心配なく!! 確かに元々はすっごく重い合金とかを父さんが加工して成型しましたけど……鍛冶錬金術師である私がコネコネして、変身状態の時以外は軽くなるように細工しましたー!! 是非持って行ってくださいね!!」





「お次はこれだ。アンタたちの変身状態の時のヒーロースーツにもピッタリ合う、丈夫な防護服だぜ! 耐熱性、耐電性もある優れモノだ。こいつも持って行って試しな――――特に衣服を犠牲にして闘うアリノさんよ! アンタにはさらに特別製の外套も多めに用意したぜ。これで多少は闘っても衣服が足りねえ、なんてことにはなりにくいだろうぜ!!」





「――うお~、マジかよ。ありがとよ、親子揃って!」




「恩に着る。」





「――はいはーい! 次はこっちっすーっ!!」






 ヨウヘイたちが装備を受け取り終わるのを見るや、待ってましたとばかりに物資係の職員が飛んでくる。






「――――今回はさらにグレードアップしたブツを用意したっすー!! 傷薬もすぐ効くだけじゃあなくて、経口摂取タイプの飲み薬も用意したっす! 毒消しも。こっちはヤバい敵に出会った時にぶん投げる爆薬。障害物の発破にも使えるっす。そして何より…………帰還する時の『リターン』が効かない時の為に特製の転送装置も用意しました! マジでヤバい、と思ったらこの転送装置入りの瓶を割れば、一瞬で研究所まで戻ってこれるっす!! それから長時間潜っている時の食糧もですねえ――――」





「――――おおい、若造ども!! きおったなあ。儂には闘うことも道具を作ることも出来んが、闘いにおいての兵法を授けることは出来る。このメモ帳に纏めておいたから、時間がある時に読んでみてくれい!! 古代の頃より兵法をば人は――――」






「――み、皆さん落ち着いてくださいよ。ヨウヘイさんもアリノさんも困ってるじゃあないですか。ねえ?」





 興奮気味の職員たちをサクライが宥める。





 一行の中で白い肌が目立つマユは「当分時間かかりそうだな」と思ったのか、一足先に司令室に歩いていった。






 ――初めてヨウヘイがここに来た時と同様、職員たちが期待を込めて我先にと装備や道具や作戦指南などを渡してくる。






 ヨウヘイは苦笑いしながらも、彼らの期待と信頼、そして僅かばかりの脅迫の念を甘んじて受け取り、準備を進めた――――

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