ドワーフ少女、襲撃者たちをやっつける
長らく更新が滞ってしまいすみません……!
「えいっ、とりゃ、それ! これくらい、なんのその!」
アッシュの小さな体が左右に跳ね、掲げる斧の重さをもろともせずに目の前の男へと飛びかかっていく。
攻撃をハンマーで防がれるが、アッシュの大斧は簡単に折れはしない。ぶつかり、飛び退き、男からの攻撃をかわし、かと思えば反撃をかます……そんな攻防が何度か繰り返された。
敵の男はなかなか怯まない。なかなかの手慣れらしく、隙が見えないのだ。
だがアッシュも伊達に訓練を積んできたわけではない。負ける気は全くしなかった。
しかししばらくして、そんな戦況に変化が訪れる。
アッシュの背後、オプスキュリテの周囲をどこからともなく現れた武装集団――おそらく襲撃者の男の仲間に違いない――が取り囲んだのだ。
「……アッシュちゃんっ」
「リテ姫様!?」
急いで駆け寄ろうとするも、少しでも気を抜けば最初の男が狙って来る。
その間にもオプスキュリテへと他の襲撃者が近づいており、アッシュは咄嗟の選択を迫られていた。
――迷った時は考えるな。ただ本能に任せて武器を振るえ。
それは筋肉馬鹿であるアッシュの考えだった。何においても、頭を使うよりも勘の方が正しい答えを示してくれる。そしてアッシュは、今回も自分の直感を信じることにした。
オプスキュリテが何事か言おうとする寸前、アッシュは斧を全力で投げた。
かなり重量のある斧。頭部に直撃すれば、どんな強者でも簡単に落命してしまうだろうという凶器。それを他ならないオプスキュリテ姫の方へ投じたのだ。当然、襲撃者たちは狼狽え、直後、五人ほどの武装集団が斧が巻き起こした強風によって意識を刈り取られていた。
が、アッシュとやり合っていた襲撃者は冷静だった。
素手になったアッシュの頭上へ、まっすぐにハンマーを振り下ろす。こちらもまともに当たれば重傷では済まないだろう。だが、
「あたしを舐めるな!」
少女にしては太い、というより丸太のようだと言っていい両腕で、降って来た超重量のハンマーを押しとどめた。
そして一瞬相手が怯んだ隙に、どんな種族にも共通の男の急所――すなわち股間へと膝蹴りを放つ。
それだけで彼は地面に沈み込んで動けなくなったようである。しばらくは立ち上がれまい。
「これで、終わり」
オプスキュリテの傍に落ちていた大斧を拾い上げると、アッシュは斧で薙ぎ倒した方の男たちに近寄り、とどめを刺そうとする。
襲撃者に慈悲を与えることはない。仕留めたら殺す。それが戦士たる者としての心得だからだ。
しかしちょうどその時、邪魔が入った。襲撃者ではない。先ほど聞いたばかりの声がアッシュを静止したのだ。
「そこまでだ、ドワーフの娘よ。我が騎士団員を殺されては困るのでな」
「王様?」
振り返ると、そこには銀髪の美青年……ダークエルフの王が立っていた。
なぜ彼がここに? さっぱりわけがわからず首を傾げるアッシュに王は言う。
「今の戦いぶり、見事であった。よもやそこまで戦えるとはな。どうやら私はお前のことを侮っていたようだ。
我が娘に危害が及ぶかも知れない戦法はあまり好ましくはないが、お前の実力が確かなのは認めよう」
「というと?」
まだ理解できていないアッシュに代わり、王を責め立てたのはオプスキュリテだった。
「お父様、わざわざ騎士を武装させてけしかけて、アッシュちゃんの力を試したのね。困るわ。私、もう少ししたら本気で殺るところだったじゃないの。騎士たちがクーデターを起こしたのかと思って驚いたわ」
「そのドワーフの娘が突然の襲撃に対処できるか、それをこの目で見たかったのだ」
「……過保護ね。そんなことをしなくても私は大丈夫なのに」
「ともかく。突然の茶番劇、失礼した。後は姫と散歩でも何でも楽しむがいい。以上だ」
これ以上追及されたくなかったのか、王は武装集団、もとい騎士たちをその場に残し、一人逃げるようにして帰っていく。
せっかく襲撃者に勝ったのになんだかスッキリしないアッシュなのだった。
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