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ドワーフ少女、ダークエルフの姫君とお散歩する

「ここがあなたの部屋よ」


 ダークエルフの王の元から立ち去り、オプスキュリテの部屋の隣に連れて来られたアッシュはたいへん興奮した。

 そこは、貴人が住むところかと勘違いしそうになるほどにキラキラしていたのだ。


 ドワーフ族の長の家でもこんなに立派ではなかった。


「さすがお城。てっきりリテ姫様と王様のところだけピカピカと思ってたけど、すっごい。あたしにはもったいないくらい綺麗……!」


「喜んでもらえたみたいで良かったわ。この部屋はあなたのものだから、好きに使ってね。ああでもできるだけ傷つけないように。

 私の部屋の音は聞こえやすくなってるから、一応は私に何かあったら駆けつけるということになってるけど、大して心配する必要はないわ。さあ、疲れたでしょう。少し休みなさい」


「心配してくれてありがと。でも大丈夫です、リテ姫様。まだまだあたし元気だから! そうだ、それよりお城をお散歩したいな。護衛になるんだったらお城の仕組みを知ってないといけないし」


 オプスキュリテは「確かにそうね」と言うと、こくりと頷いた。


「わかったわ。じゃあ夕食までの間、一緒にこの城を歩きましょうか」


「わーい、やったぁ!」


 もっともらしい理由をつけながら実はお城を見て回りたいだけのアッシュは素直に喜ぶ。

 そして斧を片手に廊下へ駆け出した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「……それであそこがお兄様たちの部屋。ああ、ここ? ここはお母様の部屋だったのだけれど亡くなってからは長らく使われていないわ。気にしないでね、お母様が亡くなったのは百年も前だから。

 あちらが侍女たちの控え室で反対側が男の使用人の控室ね」


 オプスキュリテに説明されながら、アッシュは王城内を散歩した。

 寂しい鉱山地帯の集落で生きていたアッシュにとって、目にするもの何もかもが新鮮だった。

 使用人という存在もそうだったし、オプスキュリテをはじめとして廊下を行き交う女性たちが着ている露出の多い布のような服も、城の中の細かな装飾品なども。


「あたしたちの村と全然違う……まるで絵本の中の世界みたい」


「気に入ってもらえたかしら?」


「もちろん!」


「ふふふ。中もすごいけど外はもっとすごいのよ。今度は庭園に行く?」


「どこまでもリテ姫様についていきますっ!」


 そしてダークエルフの姫君に手を引かれて外に連れ出されたアッシュは、さらに驚愕することになる。

 オプスキュリテの言う通り、外は比べ物にならないくらいすごかった。何がすごいって、花が咲いているのである。

 でもそれはただの花ではなかった。庭園の花々は数え切れないほどの数で、赤や青、言葉では言い表せない奇妙な色や形、さらには光り輝くものまでもが咲き乱れていたのだ。


「あなたの故郷では花が少ないと聞くわ。見たの、初めてでしょう」


「……これ、魔法?」


「よくわかったわね。暇人なお兄様の一人が魔法の研究をしてて魔法の花を咲かせることに成功したの。

 この花を食べれば寿命が何倍にも伸びるの。元より長命なダークエルフ族はあまり好まないけれど、あなたみたいな護衛の子にあげることにしてるわ。先に死なれると悲しいでしょう?

 どう、良かったら食べてみる?」


「リテ姫様が言うなら!」


 素直で怖いもの知らずなアッシュは、躊躇うことを考えもせず花を摘み、口へと運ぼうとする。

 と、ちょうどその時のことだった。


「……?」


 アッシュは突然風の変化を感じて振り向いた。

 長年戦士として育て上げられた彼女は気配に敏感だ。ほんの少しの風の動きでも察知することができる。

 そしてそんな彼女の感覚は間違っていなかった。


 ――なんとそこにはハンマーを振り上げ、こちらへ襲い掛かろうとする正体不明の男がいたのである。


「あっ」


 なぜ、と襲撃された理由を考える暇もない。

 ただ直感に従ってアッシュは斧を掲げた。狙いはオプスキュリテで間違いなさそうだ――花を口に投げ入れ噛み締めると、叫んだ。


「リテ姫様、あたしの背中に。絶対守りますから!」


 楽しいお散歩の邪魔をされたことは正直不満だったが、護衛たる者いつ何時でも戦わなければならない。今がその時のようだ。

 一気に気を引き締め、ドワーフの少女はダークエルフの姫君を守るため戦い始めるのだった――。

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