65話 私って……そうなんだ(衝撃)
シャトルバスに揺られ、若干気恥ずかしかった空気感も何となく薄れ始めポツポツと会話を交わす。
その為体感時間が思ったより早く、気が付けば目的地へと辿り着いていた。
終点に際し、バスに乗っていた乗客がゾロゾロと降り始め私達もその波に乗って降りる。
「着いたー」
一度グッと背伸びをし、隣に立つ加護を見る。
女子の中でもそこそこ身長がある私よりも背丈が高い加護。改めて見れば、順当なる成長期を経てすくすくと育った男子なんだと実感した。
こちらをチラリと見た加護と目が合い、同時に目の前に聳える建物へと視線が移る。
開店時間はもう過ぎているため、私達と同じシャトルバスで来ていた他の人々も自動ドアから中に入っていくのを目にし早速、店内へと入店。
エスカレーターを登りいよいよ目的のアミューズメント施設。
天井に付けられた電光掲示板に書かれた様々な項目。
どれもこれも、私はあまりやったことの無いものでその文字列を見るだけでも心が高鳴った。
「いっぱいあるなぁ〜何がええかな〜?」
「あ、ダーツとかもあるんじゃね」
「見てみて、ビリヤードもある」
「どっちもやった事ないねぇ」
カラオケや、ボーリング、ダーツ、ビリヤード、卓球。どんな物かはふわふわとした曖昧な感じで知っているものの初手で行くか?といえば答えはNO。
やった事がないので初めから行く勇気はないのだ。
ダーツとかビリヤードは少し興味があるものの、一旦は無難なもので行こうと意見が一致した為、取り敢えずボーリングに決定した。
「ボーリング、こども会以来かも」
「うわ、懐かし。春の親睦会的なやつで行っとったな〜」
「懐かしいぃ〜」
久しぶりのボーリングは加護も同じだったらしく、ちゃんと出来るか不安だと嘆きながらもボーリング用のシューズを取り出していた。
大丈夫、多分私の方が散々な結果になるのが目に見えているから。
順番にシューズを取り出し、案内された席へと戻る。
一旦ボーリングを行う為のボールを確保する為再び席を離れ飾られているボールを眺める。
あまり重すぎてもボールを持つだけで一苦労しそうだったので、無難に一番軽く《女性にオススメ!》と書いてあるボールを素直に持って行く。
既にボール選びを終え、靴を履いていた加護のシューズと自分が持ってきた床に置かれたままのシューズを見比べて見れば、一目で分かる程サイズ差がありここでもまた驚きに目を見開く。
(純然たる男子…………すご〜……何cmかな)
疑問に思いじっと眺め大体このくらいかなぁなんて考えていると立ったままの私を不思議に思ったのか、加護がパッと顔を上げこちらを見上げる。
「どしたん??」
「あ、いや。靴大きいから何cmかなぁって思ってた」
「あはっ!靴か!俺二十七よ」
「二十七!!でっか!?」
「そりゃあ男ですから」
聞いて吃驚。私より三cmも違った。
何処かドヤ顔のような自慢げな表情は私には可愛らしく映り、思わず「そっか男の子だもんね」と紛うことなき事実を確認するかのように吐き出し破顔した。
・
「ガータ〜〜!!」
「良いじゃないか私のスコア見てみぃ!こっちは殆どガーターだぞ!!」
「お?じゃあこのゲームは俺が取っちゃお〜」
「今に見てろ。次ストライク出すけぇ」
普段のどもり具合は何処へやら。
いつかの自分の様に話す事に躊躇いなく、言葉がスラスラと出てくる。
自分でも吃驚するぐらい、今まで人前に出したことの無いような態度が晒されている事に気付いているにも関わらず、それが苦だとは思わない。
私の本来の性格は意外と気性が荒かったのか?
こんな言葉遣い今までしたことあったっけ?
などと加護とボーリングをエンジョイしている中、脳内ではそんな疑問が浮いては消え浮いては消えを繰り返す。
十中八九、中学時代の荒んだ心を守る為に心の中で日々嫌だった事ムカついた事を只管に吐き出していた時の名残だと推察される。
心当たりは大いにある。
周りの人々の口調が段々とお互いがお互いに影響しあって荒くなって行くのを聞いていた為、自然と私も感化されていたのだろう。
確かにあの時の心の声、言葉遣いは結構…………うん。荒くはあったな。
私ってやっぱり性格歪んじゃったんだぁ。ちょっとショック。
ゴロゴロゴロ………
カラララーン!!!!
「わっ!!!!」
そんな事を考えながら投げたボールは勢い衰えず真っ直ぐに走り抜け、立ちはだかる全てのピンを薙ぎ倒した。
「ストライクゥ!!!!」
「やったやった!!加護見た見た!?」
「見た見た!!すっげぇええ有言実行じゃん!」
ガーターばかりが続いていた私が加護ですらまだ出していないストライクを繰り出したことで、歓喜に満ち溢れ反射的に後ろで待機していた加護へと突撃する。
両手を広げて待っていた加護になんの疑問も持たず、思いっきりハイタッチをした。
「楽しいねぇ」
加護のその言葉に心が更に弾む。
朝の恥ずかしさによる緊張感は何だったのか。
蓋を開ければ、そう思えるほどこんなにも負の感情から気を縛られていない状態で楽しんでいる。
こんなのは久しぶりか、或いは初めてか。
どうしようもなく今、この瞬間が人生で大切な思い出になって行っているというのが分かる。
「むっちゃ楽しい!」
その後の二ゲーム、三ゲーム目も和気藹々と楽しんだ後、気になっていたダーツも試しに三十分程挑戦する。
こればかりは程よく目が悪く眼鏡を持ってきていなかった私は散々だった。
それでもお互い初めてのダーツに四苦八苦しながら手探りでプレイする時間も、とても有意義だった。
時間が経つにつれ、精度が良くなっていく加護を見てもしかして前世は歴戦のスナイパーだった??と思う程、真ん中に当たる確率が高くなって行くのが個人的にツボだった。
「あ〜面白かった!」
「ダーツっておもろいんじゃねー極めてみるんもありかも」
「結構素質ありそうじゃったで」
「よなよな!?」
本人的にも手応えはあったようで、もしかしたらこれを機に通うことになりそうなのも面白い。
私達がプレイする隣のブースで唯只管に投球し真ん中を当て続けていた猛者だと思われるお兄さんも居たため、通いつめたら加護もああなるのかもしれない。
アミューズメントパークで気が済むまで遊び尽くした私達は、店前へと停車するシャトルバスへと乗り込みいよいよ本日の目的であった喫茶店に行く為、再び駅へと帰る。
現在、少しだけお腹が空いているので駅を経由し喫茶店に向かっていれば丁度良い感じの時間帯で昼食にありつけそうだ。
バスから降り早速切符を買おうと券売機に向かおうとした瞬間、加護から「あ、ちょっと待って」と腕を捕まれ止められる。
どうしたのかと聞く前に加護が口を開く。
「朱利から聞いたんじゃけど、今駅中でポップアップストアがやっとんじゃって」
「ポップアップストア??」
ポップアップストアとは、所謂北海道や、京都物産展をイベント感覚で広いホールなどで開催する期間限定のお店のようなものなのだろうか?
実の所、ポップアップストアという所で買い物をしたことがないのでその実態を知らず中々想像ができない。
「えっとね〜……これなんじゃけど」
意味の分かってなさそうな間抜けな顔をしていたのだろう。
加護は自身のスマートフォンを操作しその画面をこちらへと見せてくる。
画面に表示されているポスターと思しき物を見た瞬間、私の目が一瞬にして輝く。
「………! こ、これ!!」
「うん。朱利が百合がこれ知ってるから行ってみたら?って勧めてくれて」
そこに表示されていたのは、百ちゃん先輩と喜久先輩がこよなく愛し私に是非にと勧めてくれ、共にプレイしたゲームのポップアップストアのチラシだった。
展開されるグッズのラインナップを見てみれば、捲し立てるようにツラツラと只管に推しポイントを語って下さった先輩二人の推しキャラが居た。
これは、普段お世話になっているお二人にお礼を兼ねてプレゼントするのに何をあげたらいいのかが分からず、後回し後回しになっていたこの状況を打開するのにとても良い。
「行ってみる?」
首を傾げ、問いかけてくる加護に嬉しさと感動で気分が高揚したまま勢い良く首を縦に振りまくる。
若干、完全に自分の都合になってしまって申し訳ないなと思ってしまったものの、朱利から伝えられ加護が提案してくれたのだからそれは折り込み済みなのだろう。
百ちゃん先輩も喜久先輩も周りに同士が居ないと嘆いていた。
あわよくば、加護にもこのゲームの良さをプレゼンしてゲーム人口を増やしてみるのも良いかもしれない。




