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ゆりかご  作者: 翠カ/愛カ
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5話 初めの第1歩とは?

 

 ………まずい。


 2日目にしてこれは非常にまずい状況だ。友達は昨日確かに出来たはずなのに。もう心配事は無いはずなのに。吐き気がぶり返してきた………

 何なら昨日より酷い。路線バスの揺れが私に更なる気持ち悪さを齎す(もたらす)

 少しでも気分を紛らわす為、好きなアーティストの曲を聴きながら流れる景色を見つめ、次いでお守りの名前入りドッグタグを握りしめる。

 どうにか収まって吐きませんように……!!



 ・

 ・

 ・



「~~~~おえぇ……………。先生ごめんなさいぃ……(泣)」


 経過報告。現在私は保健室にて先生に背を摩られながら嘔吐中。


「先生は大丈夫よ~百合さんちょっとは楽になった?まだ顔色は良くないけど…」

「少しスッキリしました…でもまだ気持ち悪いのでまた吐いちゃうかもです…本当にすみません…」

「精神的なものじゃけぇそれはしょうが無いよねぇ。まだ教室怖い?」


 昨日の教室を思い出す。場が和むムードメーカーの人が居て大人しそうな人も居て私にとって少し嫌な人もいる。新しい人たちが居てそこから始める新生活に不安を持っているのもあるが、やっぱり第一は中学の思い出。忘れようと思っても忘れられない。私の心が弱いばかりにあの恐怖に体を支配される。


「中学の頃の怖さが抜けなくて…」

「そうかぁ。そう簡単に慣れる訳無いけぇなぁ。取り敢えず今日は帰ってしっかり休もうな。今親御さんに…」



 ……ガラガラッ

「あ、百合さん。ちょっとは落ち着いた?」


 保健室のドアを開けて私の名前を呼んだのは短い髪を左へ流したシュッとした塩顔の1年C組副担任の佐藤先生。塩顔なのに佐藤先生。ちょっと面白い。

 実は先程、学校の靴箱に着いた瞬間吐き気のピークが襲い1番優しそうな先生だと思い、頼った先生が佐藤先生だった。先生先程は助けていただき有難うございました。感謝します。まだ気持ち悪いけど


「百合さん、親御さんに連絡取って見たんじゃけど連絡つかんのんよ。で、この後頭髪服装検査が体育館であるんじゃけど親御さんと連絡がつくまで体育館の外からでも自分のクラス見る?それともしんどかったら此処おる?」


 佐藤先生は優しい声色で問いかける。無理せんでええけぇな?と保健室の先生も言うが私はもう決まっている。


「少しでもクラスのみんなの顔というか雰囲気(?)を見て慣れたいので…見に行きます。」

「OKおっけ!じゃあ一緒に行こうかねぇ」


 佐藤先生は私の鞄を持って私の歩く速度に合わせて歩き始めた。保健室の先生も念の為着いてきてくれる。

 チラホラと生徒たちが廊下を歩いている


「んー?C組まだHR(ホームルーム)終わってないんかなぁ」

「あぁ!佐藤先生じゃー!!」

加護(かご)!声でかい!聞こえるけーボリューム下げろー」

「ういーす」


 加護と呼ばれたその人はスポーティな見た目にサラッとした短めな髪と万人受けしそうな顔をしていた。

 この人、昨日の勇気のある後ろの席の人じゃ!加護君って言うのか。凄い元気じゃなぁ。その元気分けて欲しい。


「お!やっほー!」

「……? あ、え、えっと、や、やっほー??」


 加護君は急に私に向けて「やっほー!」という名の挨拶をしてきたので困惑しながらも笑顔で挨拶返しをした。加護君は嬉しそうにニッコリと満面の笑みを浮かべた。

 爽やかな眩しい笑顔……。初対面の人とフレンドリーに話せるなんて…加護君恐るべし。


「百合さんは教室こんのん(来ないの)??」

「体調悪いから早退するんよー。じゃけぇ(だから)親御さんと連絡つくまで今からC組の頭髪検査見に行くんよ。」

「!! マジで?じゃあ俺と一緒に行く?皆もう体育館行っちゃったし」

「加護ぉ~。それ早く言ってくれぇ。どうする?加護と一緒に行く?」

「あ、はい!」


 ???

 勢いで頷いたのは良いが加護君が私の名前を知っているのにも驚きだけど一緒に行く?と聞かれるとは露程も思わなかった…。

 こんな私でも気を使って一緒に行くなんて言ってくれるなんてどんだけ人柄がええんじゃ(良いんだ)!!!


「加護君って柔道してるんじゃ。じゃけぇそんなにガタイがええんじゃねぇ。て事は部活は柔道なん?」

「うん。柔道に入るつもりなんじゃ~昔っからやっとるけー趣味みたいなもん。強くなりたいしねぇ(なりたいから)


 後頭部を撫でながら照れくさそうに言った。

 妹が居るのかなぁ。守りたいから強くなりたいってかっこいい理由じゃなぁ。相当可愛んじゃろうなぁ…(涼音的解釈)


「加護ぉもうすぐチャイム鳴るけぇ急げ!」

「えぇー!?もうそんな時間??もうちょい喋りたかったけど、しょうが無いかぁ」


 うえー…もうちょっと居たかったのになぁと加護君は少し嫌がりつつも満面の笑みを浮かべて小走りに体育館へと駆けていった。












「じゃあねぇ、()()

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