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ゆりかご  作者: 翠カ/愛カ
59/60

57話 見てたから

 

 十月といえど、お昼過ぎの気温はまだ暑い。


 暑さに茹だる前にと私が先程まで座っていた外廊下へと移動し、再び腰掛けた。


 多少気まずさが薄れてきたものの、まだソワソワする。


 ふと気になった疑問を聞こうか迷い、ついでに聞いてしまった方がスッキリすると考えが至り口を開く。


「………因みに、何時から好きだったとかはあるん」


 少し考えたような仕草をした森井は、「幼稚園」と小さく答える。


 振り返ってみれば、わたしが年中さんの頃。


 彼とクラスが一緒で、小さい頃から周りより少し背が高かった私はよく行事ごとのペア組で男の子と組まされることが多かった。


 実際、おぼろげながらに覚えている記憶でも一緒に何かしらを一緒にやっていたと記憶している。


 確か、写真も残っていた筈だ。


「………でもあの時から、罪悪感の方が凄くなって分からんくなった」

「そっか」


 その言葉に少しだけ胸を撫で下ろす。


 ここで仮にまだ好きなどと言われても心の整理がつかない上に今後の接し方に大きな影響を齎しただろう。


「でも嫌いになったって意味じゃないで。恋愛的な好きか分からんくなったってだけで」

「……分かった、分かったけぇこの話やめん?」


 彼には気まずさどうこうという感覚が備わっていないのか。


 普通、関係値が知り合いより少し知ってるという相手と面と向かって恋愛感情について話すのは気まずさが勝つと思うのだが。


 その辺の感覚が鈍くなってしまったのか。はたまた私と同じく何かが吹っ切れたのか。


 とにかく私は気恥ずかくてやってられないのだ。


「…………でもさ、百合は加護の事好きなんじゃろ?」

「…………はぁ!?」


 何を言っているんだこの男は、という言葉を飲み込んだ私を是非とも褒めて欲しい。


 勿論、私は加護の事が好きだという自覚は最近持ったばかりだが、まさかそれを。


 森井が言い当ててくるとは思ってもみなかった。


 衝撃が勝ち、言葉を出せなかったのがいけなかった。


 沈黙は何よりの肯定、と受け取った森井がにんまりと笑う。


「図星〜」

「ち、違うし」

「いーや、違わんね。俺ちゃんと見とったけぇ分かるし」


「え?ストーカー?」

「違わい。謝る機会図ってたら自然と見とったの」


 真っ直ぐ見てきた森井に心内を言い当てられた気恥しさに私の視線に様々な景色が映る。


 そう、目が泳ぎまくっていたのだ。


 私のあまりの動揺っぷりに森井は声を上げて笑い始めた。


「あはははっ!はは!…………っく(笑)」


 笑いを噛み締めても、噛み殺しきれていない堪え笑いに思わずジトっとした視線を送る。


「…………笑いすぎ」

「クククッ………ごめんごめん」


 じわりと暑くなった頬の熱を冷ますためにクラスTシャツの襟元を少しパタパタと扇がせる。


 作られる風の涼しさと一定速度を保ち仰ぐことで冷静さを取り戻していると森井が一つ咳払いをする。


「…………って事は中学の頃から好きだったん?」

「…………? 中学の時?」


 そう森井の口から告げられ、意味が分からず疑問符が頭の大半を占める。


 中学の頃は、合併したもう一つの小学校の人との面識は一年生の頃同じクラスの子達だけしか把握出来ていなかった。


 あの時を境にやっとの事で覚えていた新しい級友達の名前も今ではすっかり忘れている。


 それでも、加護とは高校生の時に初めて会ったばかりで、初対面の時もお互いが初めましてだった。


 これとなんの関係があるのだろうか。


「…………もしかして、百合覚えとらんの?」

「……? ……森井の言っとる意味が分からん」


 怪訝そうな顔をしていた森井は、私の返答を聞いて大層驚いた様な表情をしていた。


 何だろう。加護って中学の時県内の様々な中学に名が轟くほど人気だったのだろうか。


 確かに、スポーツイケメン系で私の様な人間にも平等に気遣い、接してくれる性格の良さ。


 ………それで言ったら高校の皆、全員が私を蔑ろにせず普通のクラスメイトとして接してくれてるな。


「…………聞いとる?」

「……いや、ごめん」


 思考がずれ、森井が何かを話していたのかもしれない言葉をゴッソリ聞き逃していた。


「じゃけぇ、加護はさ」


「森井ぃい!!!!」



「「ぅっわぁあああああ!?!?」」


 突然の大きな声に竦み上がった私と森井は同時に素っ頓狂な悲鳴を上げ、声がした方へと振り返る。


 そこに居たのは……………


「………ぶっはぁ!?wwww」


 そこに居たのは髪の毛がウィッグネットによって抑えられ坊主姿のようになった。


 女警官の服装に身を包んだ加護が居た。

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