53話 聞こえる声は笑い声
集まる視線を一身に受けながら様々な屋台が並ぶ運動場を歩く一団。
それはさながら有名人が人混みの中を歩いている様。
実際は、有名人というよりかは同学年の人達に好かれている加護があろう事か女警官の姿で人混みの中を練り歩いているからだ。
それも黒タイツ。
そりゃあ柔道で鍛えられた男らしいボディが女警官の服装を身に纏っていたら誰でも目で追ってしまうだろう。
「チョコバナナくーださぁ〜い!」
「はぁ〜……い……!?ぶはっ!!」
「ぎゃははははははは!!!」
受付嬢をしていたのは、少し前に顔見知りになったりこちゃんとゆうなちゃん。
朱利の注文を受けようと目の前に居る我々を見た途端二人は思いっきり吹き出し、腹筋が死ぬんじゃないかと思うほどの大爆笑をかまし始める。
「ちょっ………ちょっ!?な、………なんで……それ………wwww」
「ロシアンたこ焼きもよろしくぅ」
既に様々な人達から揶揄われ、笑われた加護は瞳が死に笑顔だった表情筋も疲れきったのか驚く程の真顔により、先程よりも更にシュールさが加わっていた。
「ぎゃはははははっはっお、お腹痛いっナニコレww」
「え!?加護おまっwwなんちゅう格好してんねん!!wwww」
りこちゃんとゆうなちゃん以外の店番をしていた他のクラスメイト達も二人の笑い声の原因である加護を見て校庭に大きく響くような笑い声を上げる。
「いや、やっぱそうなるよな」
「うん………これは、笑っちゃう」
大笑いする目の前の人達を見つめながら友紀がボソッと呟き、確かに仕方が無い事かもしれないと納得する。
少し可哀想だなと思いつつも、私も初めてステージに出てきた時は友紀と一緒に笑ってしまったので人のことは言えないのである。
救ってあげられなくてごめん加護……
「はぁ……はぁ…………加護……うちらを、殺す気かよ」
「至って真面目じゃが?」
収まらない笑いと戦いながら、ゆうなちゃんは朱利から順々にカラフルに彩られたチョコバナナを手渡す。
私に渡されたチョコバナナはバナナに垂らされたミルクチョコレートにスライスされたアーモンドと小さく砕かれた胡桃が散らされた物。
友紀はダークチョコレートにカラフルなハート型のマシュマロとアラザンが散らされた物。
朱利と加護はそれぞれ王道のカラースプレーが散らされた物と、アーモンドスライスが散らされた物が手渡された。
「んでさ、あれ結局なんであーなっとん?」
手渡されたチョコバナナを眺めていると、バカ笑いするゆうなちゃんと話している加護の方を指さしりこちゃんが問いかけてくる。
「う〜んと………なんて言うか、柔道部のステージ発表で…か、加護が腕相撲全勝しちゃって参加者が景品ゲットできるまでもうワントーナメントしなくちゃで……」
「な〜る〜尺伸ばしの罰ゲームって訳か」
「その通りです…………」
再び加護の格好をチラ見したりこちゃんは、口に手を当て必死に笑いをこらえる。
「いけんよな、人の格好見て、笑うん」
申し訳なさそうな表情をしつつも、本能的な笑いのツボには抗えないのか、声を震わしながら目線をそらす。
「ううん。私もりこちゃんの事悪くは言えんけぇ」
「………て事は百合ちゃんも笑ったクチ?」
「うん。思いっきり」
特に誤魔化す意味を見いだせずに、素直に肯定の為深く頷く。少し目をぱちくりとさせたりこちゃんが再び大笑いし始めて私の肩をバシバシと叩く。
「百合ちゃん素直すぎ!ww最高かよwww」
「………んふふ」
思わず笑が零れ、まだゲラゲラと笑い続けるゆうなちゃんと他のクラスの人達の方を見やると加護とバッチリ視線がぶつかる。
先程の真顔はどこへ行ったのか、目元を細め柔らかに上がった口角。
心底嬉しいと言ったような表情に戸惑うものの、すぐに現実へと引き戻される。
(その表情好きじゃけど、女警官っちゅーのがな……)
やはり少し複雑な気持ちが湧き上がるのだった。
2025年度『ゆりかご』これにて書き納
めとなります。
今年の後半の追い上げにより昨年に比べ明らかに執筆出来たほうかなと思っております。
今度からの新作についてはしっかり書ききってから少しずつ出していこうと今年誓いました(遅い)
また2026年度もよろしくお願いいたします( * . .)"




