12話 思わぬ衝撃
交流合宿2日目。
今日は道後山と、岩樋山の二つの箇所を経由し、それぞれ気になった所の場所で写真を撮ったり風景画を描く内容だ。
写真は自分達で持ってきたスマートフォンで撮るのも良いし、先生が持っているカメラを貸して貰って撮るのもいい事になっている。
風景画は自分達が持ってきたスケッチブックに描く。
私は絵は上手くないものの描くことは好きなのでスケッチブックで風景画を描くことにした。
朱利は絵は得意じゃないという事で麻美ちゃんと一緒に色んなところの写真を撮りに行った。
「お。この花可愛いねー」
「本当じゃー黄色でよく目立つねー」
私は友紀と一緒に道後山山頂の開けた広場に残りそこに生えている植物達をスケッチブックに描くことにした。
「なんの花じゃろねー調べよかー」
友紀が鞄の中にしまってあるスマートフォンを取り出して黄色の小さい花を写真に撮り、検索をかける。
「んーと、『ウマノアシガタ』だって!」
「!? なんその名前!!ウマノアシガタ!?」
友紀がスマートフォンをスクロールして目を通しながら
「なんかねー日当たりの良い山野に咲くんだってー。あ、涼音触っちゃダメよ」
「あぶっ!!っな……」
触る直前だった。危ない友紀に言われなければ触るとこだった。
「なんで触っちゃいけんのん?」
「なんかねー…有毒なんだって。あんまし素手で触っちゃいけんらしい。」
「え!?」
思わぬ衝撃。
こんなにも可愛い見た目をしているというのに…
あれか、美しい花には棘があるとか何とか。
「ほぉー。見た目に騙されちゃいけんのんじゃなぁ…」
「でも可愛いから描きたいねー。うちはウマノアシガタ描こっかな」
友紀はウマノアシガタを中心にその他の植物を描くようだ。
かく言う私は未だに何を描こうか迷い周りを見渡しながらブラブラ歩く。今日は少し雲が有るが、いい天気だ。
あ、そうじゃ!私はここから見える空と周りの山々を描こう!
そう決めた私は少し友紀から離れて山が近くに見える所に少し移動した。
うん。ここは凄く景色がいい。それに山の麓を見ると大池が見える。
なんだか、こうして場所を決めて絵を描くのは画家の疑似体験をしているみたいだ。
まずは鉛筆で軽くサラサラっと下描きを描く。あたりをつけるのも大事だそうで、ここで大体のイメージを固める。
「うーん……難しいなぁ。」
自分のことながら構図を決めるのが壊滅的にセンスが無い。
本当に直感的な閃きで絵を描いている世の画家さん達には尊敬の念を抱く程だ。
悶々と悩んでいる時に話し声はしないものの、右斜め後ろら辺に人の気配を感じた。
誰だろうと思い、少しその方向に視線をやる。
と、そこにはスケッチブックを持った森井遥斗が座っていた。
「!!!」
全身の身の毛がよだつ。さっきまでそこには居なかったのに。
(なんでここなの!?もっと他に描く場所いっぱいあるじゃん!)
高校に入学してからは何事も無かったのでなんとも思っていなかったが、やはり体はあの時の恐怖を覚えていたようだ。
私は絵の続きを描きながら「何も怖いことは無い」と洗脳をかけるように何度も何度も心の中で繰り返した。
(大丈夫。絶対大丈夫。何も無い。私は何も気付かずに集中して絵を描いている。うん。)
静かに呼吸をしながら心を沈め、落ち着いて自分の作業を続ける。
あたりが描けたので鞄から絵の具を出して全体の色を塗り始める事にする。
空は透き通るような水色と青色のグラデーション。
山は緑色だけどそのまんまの緑を使うと少し味気ないので、青色と黄色を混ぜたオリジナルの色で新緑を表現する。
(おぉ。なんかカッコイイな。)
自画自賛しつつ黙々と作業を進める。
「なぁ。百合、…黒色持ってない?」
風で辺りに生い茂った葉っぱ達が靡く音と共に森井の言葉が聞こえてきた。
今、この付近に居るのは私と少し離れたところに背を向けて座っている友紀だけ。
確実に友紀には届かない声量なので私に話しかけている。
ドッと心臓が跳ね上がって一気に心拍数が上がる。変な汗が頬を滴り落ちる。
「っ………ちょっ…ちょっと、待って」
相手の顔を見ずに身振り手振りで制止のポーズをした。
ここで返事をしないのも勇気が無いので私は黒の絵の具を探しているフリをする。
本当は絵の具道具の中に普通に入っているが、動揺した心をほんの一瞬だけ落ち着かせるためだ。
「っ…はい。あんまり無いかもだけど…」
「……ありがと。」
体の向きを変えて森井に黒の絵の具を手渡した。
「「……………………。」」
気まずさがこの空間を支配したが、それを振り切るようにすぐ様自分のスケッチブックに視点を移した。
何か、この空気を破壊する手立ては無いだろうか……そう考えながら静かにその場で作業をし続けた。
もう暫く交流合宿編は続きます( ̄∇ ̄)




