明日には物流拠点惑星に着きますからね。お仕事見つけましょうね!
その後、ハルトはファーライト号の目的惑星まで同行することになった。
なんでも宇宙航行船規約というものがあり、人間をどこかで保護したら必ず最初に寄港した惑星まで無償で送り届けることになっているらしい。犯罪者の場合はその惑星の法律に則って処罰されるとか。
選択肢のないハルトはそれに従うしかなかった。
その後は惑星で仕事を探すか、母星の救助を求めるかは本人の自由で決められるらしいが、ハルトはこの世界に救助を求められる母星は無いため、これもまた選択肢もなく仕事を探すことになるだろう。
ほとんどの惑星には身元保障が無くても仕事を斡旋してくれる場所があるらしいので、そこで探す予定だ。
その斡旋してくれる場所が簡易の身元保証もしてくれるらしい。
要するに、ファンタジー世界の冒険者ギルドみたいなもんだなとハルトは納得した。
とにかく、その惑星に着くまでに、ハルトは自分ができることを考えないといけない。
だが、チート能力がまったく役に立たないと判明した現在、ハルトは落ち込んでいた。
『そろそろ食事の時間ですよ?』
部屋でだらけていたハルトに、管理用端末417号が声を掛けてくる。
慣れない生活に補助は必要だろうと、艦長の配慮で管理用端末417号はハルトの個人用端末としてこの船にいる間は貸し与えられていた。
これはもちろん、監視の意味もあるだろう。
「ありがとう、シイナさん」
ハルトは417号と呼ぶのが面倒なので、語呂合わせでシイナと呼ぶことにした。
個人端末に名前を付ける人はけっこういるらしく、シイナ自身もすんなりと受け入れ、船員たちも同じように呼ぶようになった。
どう見てもビリヤードの球にしか見えないが、名前を付けた瞬間はシイナもどこか嬉しそうだった。
ハルトがこの異世界に来て、すでに二週間が経過していた。
ハルトもずっとダラダラとしていた訳ではない。
シイナに補助してもらいながら情報端末を使って、この世界のことについて学習していた。
そこで分かったのは、女神にもらったチート能力のほとんどは役に立たないということだった。科学の力でチート能力以上の能力が手に入ってしまうのだ。
辛うじて役に立つのは、アイテムボックスだろう。
ハルトはアイテムボックスを使っての輸送屋をすることも考えたが、物流が確立しており星間輸送も大型宇宙船などがあるためあまり意味がない。
唯一、役に立つことがあるとすれば密輸だろう。
アイテムボックスに入れれば、この世界のセンサー類にも見つかることなく運ぶことができる。
しかし、ハルトは非合法な手段で金を稼ごうとは思わなかった。
結局今に至るまで、合法的にチート能力を生かせる仕事は思いついていないのだった。
『明日には物流拠点惑星に着きますからね。お仕事見つけましょうね!』
シイナの軽い言葉が、今のハルトにはダメ押しになってしまう。
さらに落ち込むと、身体を引きずるようにハルトは部屋を出て食堂に向かった。
銀河標準時間で日付が変わり。
ハルトの心情に配慮することなどまったくなく、ファーライト号は目的の惑星に到着したのだった。