【短編】バーサーカーはばーかーさーとか言いだした奴、取り敢えず俺に謝れ!!
気分転換に短め短編です
突然で申し訳ない
私の名前は「バーサカー=ベルモッド」
しがない国にあるギルドに登録しているS級冒険者である
職業は【狂戦士】となっている
一般的に【狂戦士】は戦闘中は周りの事を考えずに自分勝手に魔物へ突撃し、自分の受けたダメージも厭わず戦闘が終わるまで大剣を振り回し続ける職業だと考えられている
だが、冷静に考えて欲しい
もし【狂戦士】がその様な職業だったら戦闘が終わるタイミングが何処で判別するのだ?
戦闘中に仲間が巻き込まれそうな時はどうやって倒さない様に立ち回るのだ?
【狂戦士】とは肉体強化されて立ち向かう姿を、敵からすると脅威以外なにものでもない事から名付けられた名称だ
世間は【狂戦士】に厳しくなり過ぎていないか?
「バーサカー」
そもそも俺自身、そこらの有象無象よりも頭が良い自信はある
「バーサカーってば!」
【狂戦士】の別名も頂けない
何故【狂戦士】の別名が…別名が…
「こらバカバーサーカー!!!」
「俺はバカバーサーカーではない!!!」
声する方に顔を向けて怒鳴りつけると幼女が「うししし」と笑い出す
この幼女はピリカ=ホリットという由緒正しきホビット族だ
ホビットと言えば身体が小さく力が弱く戦闘の役に立たないと言われているが、少なくとも彼女に限ってはそんな事が無い
魔力が高く、多属性の魔法を使いこなす一種の天才というやつだ
「ピリカ!お前まで俺を馬鹿だとおもっているのか?!」
俺が兜の奥からギロリと睨みつけるも全く気にしない様子で軽口を続ける
「だってさ~、魔物が近づいて来てるよって何度も呼んでるのに1人でブツブツ言って返事しないじゃん。」
「何?!」
魔力を探知すると…確かにいる
数は30前後という所だろうか?
考え事で夢中になっていたが此処はダンジョン36階層だ
A級冒険者が複数居て、何とか辿り着ける上級冒険者用の階層だ
「今回の討伐依頼のオークキングもいるよー。バーサカー、頑張ってねん♪」
そう言いながら後方へ向かっていく
「ったく…」
ブツブツ言いながらも戦闘態勢に入る俺は良い奴だ
大切な事だから2度言っておこう、俺は良い奴だ
するとダンジョンの奥からわらわらと魔物がはい出てくる
オークナイト、オークジェネラル、ウイッチオーク、オークキング…
オークさんの大安売り状態である
「さて…いくぞぉぉぉーーーーーー!!!!」
大剣を振りかざしながらオークたちの群れに突っ込んでいく
「きゃー!!バーサカー!!!頑張ってーーーー!!!!」
寒々しいピリカの声援が木霊する
頼むからその声援を止めて欲しい…
ピリカは天才で冒険者としても有能なのに、ちょっと変わった性癖がある
それがこいつの損している部分だよなぁ…と考えているとオークウィッチがピリカに向かって魔法を唱えようとする
「遅いよ豚野郎…」
そう言いながらオークウィッチに対して雷撃を与える
雷撃を食らったウィッチさんは黒焦げ状態だ
「バーサカー!!私の為に負けないでーーー!!きゃーーー!!」
そう言いながらキャッキャッしている
そう…彼女の性癖は『自分の為に誰かが自分を守るシチュエーションに異常に興奮する』というものである
そんな彼女であるから、戦闘ではあまり力を貸してくれない
本当に困った状態にならないと助けてくれないのだ…
俺はピリカを無視して、目の前にいるオークの布陣を計算しながら大剣を振り回して攻撃する
こちらに攻撃を繰り出す直前を見つけ出し、それに対して攻撃する
言ってしまえば『後の先』というやつだな
計算通りにオークたちを討伐しているとテンションが上がってくるな
「フフフフ…」
やっぱり計算は偉大だ
何処かの誰かが1+1=100にもなるとか言い出すが、それは精神的な問題で勘違いだ
正しくは『100になったつもりで頑張る』しかあり得ない
「フフフフフフフフ!!」
計算は美しい、計算は偉大だ
「ハハハハハハハハッハハハハッハーーーーーーーーー!!!!」
思考は冷静だが、テンションは上がるな!!
そう思いながら俺は目の前のオークを計算通りに討伐していった
◇
無事にオークキングを討伐してギルドに戻った
カウンターに討伐部位を提出すると受付嬢に引かれた表情をされる…
「おい!!バーサーカーが戻って来たぞーーー!!」
既に仕事が終わった冒険者が酒を飲みながら俺に喧嘩を売って来る
「バーサーカー!!今日の戦闘も突っ走りっぱなしの馬鹿さ加減だったな!!」
ほう…あの計算が分からんと喧嘩を売るのか
「伊達にバーカーサーって言われてねぇな!!しかも名前もバーカーサーって筋金入りじゃねぇか!!」
「「「ギャハハハハハハハ!!!」」」
…宜しい、では戦争だ
クダを巻いて人をこき下ろす男の前に近づき胸倉を掴み持ち上げる
「おい、もう一度言ってみろ…」
そういうと男は苦しそうな表情をする
「だ、だってよ!あれ見てみろよ!!!」
そう言われて指さされた方を見るとモニターに俺とピリカが映されていた
ダンジョンは危険な場所だ
だからこそ死人が出にくい様にする為に制覇された階層にはカメラが施されている
その画面には『今日のハイライト!!!』というテロップが映し出されて
「きゃーーー!!バーサカー!!負けないでーーーきゃーーー!!」
「ハハハハハハハハッハハハハッハーーーーーーーーー!!!!」
後ろでキャッキャ言いながら狂喜乱舞している幼女と、大声で笑いながら大剣を振り回しオークを斬り捨ている狂戦士が映し出されていた
「どう見てもあんなもん、馬鹿一直線の突撃野郎だろうがよ!!」
「「そうだそうだ!!」」
その画面を見ながら唖然としてしまう…が
「ち、違う!!あれはちゃんと計算して立ち回っているんだ!!し、証拠に敵から攻撃を受けていないだろ
うが!!」
必死に弁明するも誰もまともに受け取ってくれなかった
「おいおいバーカーサーさんが必死だぜ!!」
「みんなやめろよ!!バーカーサーさんが可哀想だろ!!」
「バーサーカーはバカなんじゃなく、こいつが馬鹿なんだよ!!」
そんな周囲の罵詈雑言に耐えられる訳もなく…
「うがーーーー!!!」
後ろでピリカがキャーキャー騒いでいるのは無視して、俺は片っ端から殴りつけていった
「はふぅ…バーサーカー様…」
そんな俺を『自分が罵詈雑言を受けながら激しく攻められる』事で興奮する様な変態エルフに見られているとは、この時の俺は知る由も無かった…
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細々と「アカノクロノ」という小説を書いておりますので、宜しければそちらもご一読ください!!
アカノクロノ
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