プロローグ③
目標の3日に一度投稿ギリギリですが、なんとか投稿できました。(よかったよかった)
前回、初回と比べて二倍くらいの人が見てくれたので継続投稿ってやっぱり大事なんですね。
洗面所は卯ノ花さんの部屋と対面した部屋にあり、俺はコの字の廊下を通り目的の場所まで着く。
途中何かに悪戦苦闘している声が壁伝いに聞こえ、声を掛けるべきか迷ったが、こういう時に俺が突っ込むとよくて適当にあしらわれるか、場合によっては怒鳴られることもあるので(大体その後向こうが謝ってくる。)これまでの経験から無視することにした。
歯を磨こうとして、鏡の前に立つ。
写っているのは黒のズボンに同じく黒を基調とし、左肩から脇腹にかけてななめに炎のようなデザインの柄が入っているシャツを着た、
マッシュヘアの黒髪のつまらなそうな顔をした男だ。
じろりと見つめる。
ひと月前、ここに来た頃はこれを直視するのが苦手だったが。
今は落ち着いてこの見知らぬ男の顔を見ることができる。
「 」
もう用はないと、俺は先程のダイニングとリビングを兼ねた居間で卯ノ花さんを待つとする。
現在時刻は8時20分
壁の掛け時計を見て確認する。俺の準備が整ってからおよそ20分ほどだろうか、未だあの人は来ない。だがちょうど5分前に「もうすぐだから!」と言っていたので、きっともう、すぐのことだろう。
俺は特に何をするでもなく、首を仰ぎ秒針がカタ、カタ、と単調に動いているのを、呆然と見つめていた。
ただ、ぼんやり
何も考えることはなく
「おーい!行くぞー!」
気がつくと、目の前に卯ノ花さんがいた。
艶のある銀髪と大変整った顔に橙のフリルスリーブやブラウンのスカートはとても可憐に似合っていて、時間がかかった事への納得とやっぱりこの人は美人なんだなと再認識させられる。
「……うるさいです。何でそんなに元気いっぱいなんですか」
「ん?そりゃあ、君が魂抜けたみたいだったからさ、ほら行くよ!」
俺より遅れてきた癖にこの人は悪びれた様子すらなく楽しそうに玄関へと向かってる。
その後をついて行く。
別にこんな些細なことでは、怒るほど短気ではないのだけど、
どうしても釈然としない。
扉まで着き、彼女がノブを回す。その時俺のことをちらりと見た気がするが、気がしただけでどうだかわからない。
光を浴びる。
ほんの少しの白色と青色が満遍に塗られた暑い空。
山地特有の気分のいい匂いがする。
8月はもうじき終わりだが夏はまだまだ終わりそうにないな、とこの時期特有の空気が俺の肌をじわじわと焼いていく。
「暑いですね」
「えぇ、昨日よりも、もう2.3度高く34度らしいよ。まぁ今日が特別猛暑なだけで明日はここまで酷くないと思うから、今日だけの我慢だよ。」
卯ノ花さんはそう言い、俺もその後に着いていく。
駅までの道はアスファルトで舗装されていて、およそ距離にして1キロほどだ。
そこまでに6軒ほど並んだお隣さんがいて、目が合ったので軽く挨拶した。
ここに住んでいる人達はおしゃべり好きな人が多く、すぐ井戸端会議に発展してしまう。
なので今回は卯ノ花さんが電車があるのでと言い、申し訳なさそうに早めに切り上げて貰った。
結局それ以上は特に何があるでもなく、明見山のふもと付近にポツンと存在する明見山駅まで着いた。
プロローグが長くなってしまい申し訳ない。次でプロローグは終わると思うので、ご容赦をいただきたい。