13.ザガリル軍第一小隊
癖のある真っ赤な長い髪をしたザガリルは、グアァーっと大きく伸びをした。
久々に戻った体は少々動かし難い。
軽く腕を回しながら目の前にいる弟子達を見る。
タナウスの腕の中にいるルシエルの体は、眠りに就いている様で問題なさそうである。
「上手くいったようだな。流石、俺」
自画自賛である。
ザガリルの本体がまだ残っている事は分かっていたが、こうも簡単に転生後の魂の移動が出来るとは思ってもいなかった。
ザガリルの体も、元々は自身の体だったからこそ出来た芸当である。
「師匠?これは一体・・」
状況が掴めずに茫然としていたルベレントが、ようやく口を開いた。
タナウスの腕の中の師匠。
そして目の前にいる本来の師匠。
どちらも師匠である事に間違いは無い。
そうなると師匠が二人となる。
魔王が増えたという事は、絶望以外の何物でもない。
こんな悪夢は認めたくないと言う気持ちが浮かんできてしまう。
「安心しろ。俺の体は二つだが、魂は一つしかない。ルシエルの体は、魂が無い状態で眠りに就いている。体と魂は離れたが、見えない力で繋がっているから、朽ち果てる心配は無い。それは、このザガリルの体にも言える事だ」
まるでルベレントの心を読んだかの様なザガリルの発言に、ルベレントは慌てて自身の体の周りを見る。
しかし黒色のオーラは見当たらない。
「お前の考えそうな事は、読まなくても大体わかる」
呆れ顔をしたザガリルだったが、その顔はどこか嬉しそうである。ルベレント達に背を向けると、グルリと部屋の中を見て回る。
師匠の機嫌が良い事に、ルベレント達は胸を撫で下ろした。
「タナウス。ルシエルの体に少しの傷でも付けたら・・分かっているな」
背を向けたザガリルからの言葉に、タナウスはビクッとしながら大きく頷きを落とす。
「この命に代えましても、ルシエル様のお身体は大切にお守りさせて頂きます」
絶対に傷を付けられない。
タナウスは両手に抱く、小さな天使の寝顔に誓う。
「さて、上に戻って早速試さなきゃな!」
特に持って行く物が無かったザガリルは、上機嫌のまま部屋を後にする。
その後ろにいた、マギルス達もそれに続いて部屋を立ち去った。
◇◆◇◆◇
ザガリルの異空間に行った次の日の夕方。
ルベレントの家の玄関にある魔導式のチャイムが鳴った。
玄関を開けた執事は、慣れた様子で客を迎え入れた。
急いで玄関に駆け付けたルベレントは、三人の姿を見ると深々と頭を下げる。
「ディレイル様、フォガント様、ヌディカリル様、ようこそおいで下さいました」
「ルーベン。俺達を招集するとは、どう言った要件だ。マギルス様か?」
「いいえ。マギルス様では御座いません。そのお話は、客間の方で詳しくご説明させて頂きます。どうぞ、此方へ」
不機嫌さを前面に出しているこの三人は、第一小隊の者達である。ルベレントからしてみたら、逆らう事の出来ない雲の上の存在だ。
そんな彼らを呼び出すなど以ての外だが、その理由は勿論あの方の為である。
ヨロヨロとした足取りで部屋へと案内をしていくルベレントを見て、フォガントが不思議そうな顔をする。
「なんだ、お前。怪我でもしているのか?」
漆黒の瞳に焦げ茶色の短髪をしたフォガントのぱっと見の印象は、実に短気そうな大柄の戦士長タイプである。
心配してくれるなんて本当は優しい人なのでは?と勘違いをしてしまいそうだが、それは違う。
役に立たない第三小隊の者とはいえ、彼を傷付ける事が出来る存在がいるという事が気になっただけだ。
流石戦闘狂と言った所だろう。
「はい。実はその事で、皆様をお呼びさせて頂きました。私達の力ではどうする事も出来そうになく・・」
フゥッと吐息を零したルベレントは、悲壮感の漂う表情をしている。
その顔を見たディレイルは嬉しそうな顔を向ける。
「ほぉ。我らザガリル軍の者でも手に余る者が現れたのか。それは久し振りに腕がなるな」
白銀の聖騎士の鎧姿のディレイルは、フワリと長い金髪の髪を撫でる。
見掛けは聖騎士ではあるが、本性は暗黒騎士である。
その横にいる術師であるヌディカリルも、真っ白な聖なるローブを着用してはいるが、中身は腹黒い。
正直、ザガリル軍に良い人はいないと思ってくれて間違いはない。
「御三方のお力が必要だと判断致しました。どうか、この状況をお鎮め下さい」
ルベレントは、ガチャッと開いたドアの横に立ち、三人を部屋の中へと招き入れる。
三人が中に入ったと同時に、ルベレントは急いで廊下に出てドアを閉めると、ガチャリと鍵をかけた。
「ああん?なんのつもりだ、ルーベン!」
フォガントの怒鳴り声は、分厚い豪奢な部屋のドアに遮られる。
フワッと右手に攻撃魔法を展開したヌディカリルは、その手をドアに向け発動させる。
ドガァアァーンと激しい音を立てて煙を放ったが、そのドアが破壊される事は無かった。
どうやら防御魔法が展開してある様だ。
「お前の力でも粉砕出来ないのは何故だ?奴は第三小隊の者であろう?」
ディレイルが訝しげにドアを見つめた、その時だった。
「うるせえーな!」
三人の後方に置いてある背凭れが向けられたソファーから、大きな声が響き渡る。
忘れる事はない聞き覚えのある声に、三人はビクリとして体を固まらせた。
身体中の血の気が一気に引いていくのが分かる。
「なんだ、お前達か」
声の主が体を起こした事を気配で察知した三人は、すぐ様体ごと後ろへと振り返り姿勢を正す。
「お久しぶりです、師匠」
声を合わせ、揃って90度のお辞儀をする。
チッと舌打ちしたザガリルは、何も無い部屋の片隅に向かって声を掛けた。
「おい!ルシエルの体は無事だろうな」
「はい!念の為、私達の防御魔法も展開致しました」
何も無い空間を見つめたディレイル達は、自身の目に魔法を展開する。
幻影系の魔法が掛かっていた空間には、天蓋付きのベッドが置かれており、その脇には第二小隊に所属しているタナウスとネルダルが立っていた。声は元気であったが、見掛けは少々ボロボロ気味である。
遠目の為確認は出来ないが、ベッドには誰かが眠っている様だ。
「師匠、これは一体・・」
不思議そうな顔で視線をザガリルに戻した三人は、ビクンと体を震わす。
ザガリルが薄ら笑いを浮かべていたのだ。
この顔は何か良くない事を考えている時の顔である。
逃げ出したい。
その言葉しか思い浮かばない。
「ルーベンに手紙を書かせてから随分と時間が経ったな。俺は待ちくたびれたぞ」
「大変申し訳ございません。ルーベンの手紙には、相談したい事がある為としか記されておりませんでしたもので」
「師匠からの呼び出しと分かっておりましたら、何を置いてでも直ぐに駆け付けたのですが・・」
「後ほど、あの役立たずは処分させて頂きます」
三人はペコリと頭を下げる。
しかしザガリルには、その弁明はきかなかった。
「ルーベンの奴が第三小隊に所属している事は知っているな。そんな立場の者が、第一小隊のお前達を呼び出すなんて、何かあると分かる物では無いのか?」
それは確かにそうである。
ルベレントが来るならまだしも、自分達が呼び出された事に少々イラつきを覚えたのだ。
時々遊ぶお金を振り込んで来てくれるルベレントだったからこそ、こうして来てやったのだ。
マギルスが小屋にいない報告を受けた直後だった事もあり、その辺の後始末の事かと勝手に思い込んでしまっていたのも仇となった。
折角、田舎の一軒家に押し込めたのに、またやらなければならないのかと思うと、面倒臭いと言う気持ちが浮んでしまっていたのだ。
マギルスなら多少放置したとしても、街の一つ二つが被害にあうだけだから別に良いかと考えていた為、三人で合流し、ご飯を食べてからゆっくりと向かってきたのだ。
ゆっくりとは言っても、軍隊員専用の魔導即送鳥を使って早朝に送られてきた手紙に対して、その日の夕方の到着である。
「今の所、お前達よりルーベンの方が利用価値がある。死ぬのならお前達の方だな」
「お許し下さい、師匠!」
「ご慈悲を賜りたく、お願い申し上げます」
「何卒、御寛大な処置を」
三人は必死である。
ザガリルを待たせたなどと言う行為は、本来なら万死に値する行為となる。
師匠の気持ち一つで、生死が決まるのだ。
そんな三人を見たザガリルは、深く溜息を零す。
「お前達とは違って、ハウリルラは直ぐに駆け付けたのだがな」
ザガリルの言葉に、それまで部屋に掛かっていた幻影魔法が解除される。
ベッドの置いてある場所とは反対側の部屋の片隅では、床に座って必死に書物を読んでいるハウリルラの姿があった。
その顔には所々傷が付いている。
「ハウリルラ・・」
ディレイルの声が聞こえても、ハウリルラは顔を上げようとしない。追い詰められている様な必死の形相で、書物を読み漁っている。
「おい、ハウリルラ。分かったのか?」
「今しばらくのお時間を・・」
ハウリルラは涙目になりながら、書物を読み続ける。その異様な雰囲気に、三人は激しく動揺する。
「ハウリルラに感謝しろよ。こいつが居なかったら、お前達は吹き飛ばしていた」
やれやれと言った表情でソファーへと座り直したザガリルに、三人はホッと胸を撫で下ろす。
どうやら殺される心配はない様だ。
しかしザガリルの顔は、やはり何かを企んでいる顔つきのままである。
油断は出来ない。
「正解だ!」
ザガリルから急に発せられた言葉に、三人は驚きを返す。何が正解なのであろうか。
戸惑いを見せた三人は、次の瞬間死を覚悟する。
ザガリルが口角を上げて微笑んだのだ。
久しぶりに見る、魔王よりも魔王らしい笑顔である。
「俺が何かを企んでいると思っているのだろう?なに、簡単な事だ。コイツと遊んできてくれればいい」
ザガリルがパチンと指を鳴らすと、三人の目の前に突如としてマギルスが現れる。
しかしその顔は、普段の無表情とは正反対の、殺人鬼並みに殺気の籠った戦闘モードの表情である。
「ひぃっ」
思わず後退りした三人だったが、逃げ出す暇は与えられなかった。
「荒野に飛ばす。念の為、壁を張っとけよ」
「御意」
もう一度、ザガリルがパチンと指を鳴らすと、返事を返したマギルスと蒼褪めた顔のディレイル達は、その場から消え去った。
室内に残されたハウリルラとタナウス達は、ホッと胸を撫で下ろした。
自分達も一緒に飛ばされるのではないかと心配していたが、与えられた仕事から飛ばされる事はなかった様である。
自分達に与えられた仕事も命を賭けた仕事ではあるが、彼方よりはマシである。
ハウリルラは再び本に視線を戻し、タナウス達はルシエルの護衛に戻った。
マギルス達が消え去った部屋に、恐る恐るルベレントが鍵を開けて入室する。
辺りを見回したルベレントもホッと吐息を零した。
「いやぁ〜。これで少しは静かになりそうだな」
全ての元凶であるザガリルの言葉に、室内になんとも言えない空気が流れた。
ルベレント達がフラフラなのも、ハウリルラがボロボロなのも、実は全て師匠であるザガリルの所為なのだ。
あの異空間から帰って来て直ぐに、ザガリルは日本探しをし始めた。
理由は勿論、アニメと漫画の続きを見る為である。
しかし、魔力を有していない世界を探すのは、ザガリルの力を持ってしてでも難しかった。
一度アニメや漫画を思い出してしまったザガリルは、どうしても続きが見たくなる。
しかし、どうやっても日本が見つからない。
イライラはピークに達し、周りに八つ当たりをする様になった。
昨日の真夜中から1日も経っていないが、ザガリルの八つ当たりを否応無しに受ける羽目になったルベレント達は、良い迷惑である。
マギルスに至っては、魔力を遠慮する必要がないとザガリルが思っている為、凄まじい攻撃に晒された。
最強と言われる男の攻撃に、相方の剣をようやく手元に戻したマギルスでも、かなり苦戦する。
ちょいちょい絡まれては攻撃を受けていたマギルスのストレスは、ピークに達していた。
そんな時に、いち早くルベレントの屋敷にハウリルラがやってきた。
ハウリルラ宛ての手紙にだけは、師匠の家に置かれていた書物を発見致しましたと書かれていた為、凄まじい速さでやって来たのだ。
そして例に漏れず、ザガリルの八つ当たりの洗礼を受けた。
ちなみに、ルベレントがハウリルラにだけ言葉を付け足して書いたのは、書籍を守ってくれたハウリルラへの、ちょっとした恩返しである。
苛立ちの理由を聞き出したハウリルラが、ザガリルの日本探しに協力すると言った事で、ザガリルの機嫌は収まりを見せる。
しかし、一度死神モードになってしまったマギルスは、なかなか元には戻らない。
それを鬱陶しく感じたザガリルは、遅れて来るであろう残りの第一小隊をマギルスにあげる事にしたのだ。
予定通りに事が進んだ事で、ザガリルは上機嫌である。
「し、師匠。日本と言う場所なのですが、本当に何も目印になる物は無いのですか?何か一つでも良いのですが・・」
「無い。あの世界に魔導系の物は一切無かった。目印になりそうな物も無い」
「本当に何も無いのですか?」
「あったら俺が使って見つけているだろうが。無いから見つからないんだよ!お前は、その何もない世界の探し方を早く見つけろ」
無茶振りである。
何か一つでも魔導系の物があれば、その魔導を探し出し、解析して位置を特定する事が出来る。
それだって真っ白な砂浜から白い米粒を1つ見つける位の大変さなのだ。何もない世界を探すなど、どう足掻いても無理である。
しかしハウリルラは、無理ですと言う事が出来ない。
そんな事を言えば、部屋に持ち込んだ魔道書と共に、自身が消されてしまうからだ。
命よりも大切な魔道書達を守る為、ハウリルラは書物に視線を戻して、懸命に方法を探し続けるのであった。
それから一時間程が経った頃、突如として室内にマギルスが現れた。
ドサドサッと両手に掴んでいた三人の男を床に落とす。ボロ切れの様になっているのは、勿論ディレイル達である。
「少しは気が晴れたか?」
大きく欠伸を落としたザガリルは、マギルスを見た。
死神モードはなんとか解除されたようだが、まだまだストレスは発散されていない様である。
「チッ。俺のいない間、貴様らは随分とサボっていた様だな」
ビクンとしたのは、部屋の中にいるハウリルラやルベレント達である。
恐る恐る顔を向けると、ザガリルの苛立ちを表す様に、黒いオーラが見える。
「申し訳御座いません」
一斉に頭を下げたルベレント達に、ザガリルはハァーと深い吐息を落とした。
第一小隊が三人いても、マギルスのストレス発散が出来ないとは思わなかったのだ。
こんな事なら、双剣の一本を返してなどやらなければ良かったと後悔しかしない。
ザガリルが相手をすれば良いと思うかもしれないが、それはダメである。
死神モードが解除出来た位の魔力の放出は出来ている。そんな中、勝てない相手と戦ったら、またイライラが溜まるだけだからだ。
明日には、マギルスを連れて家に帰らなければならないが、この状態のマギルスを連れて帰るのは、少々気が重い。
ルシエルの大切な家族の為にも、なんとかしなくてはならないのだ。
「マギルス。次はハウリルラ達を連れて行くか?」
サァーッと顔を白くさせたハウリルラ達をチラリと見たマギルスは、首を横に振る。
「無駄かと・・」
「だよなぁー」
(分かっていたよ、そんな事。君は困ったさんだよね・・)
再び溜息をついたザガリルは、ふと第一小隊が一人足りない事に気が付いた。
「確か、第一は五人だったな。後一人はどうした」
五人いるのは分かっていたが、誰がいないのか思い出せない。頑張れば思い出せそうだが、答えを聞いた方が早そうだ。
「チカリダ様にもお手紙をお送り致しましたが、まだお見えになっておりません」
「ああ。いないのは、あいつか」
チカリダは、お寺の住職の様な格好をしているガタイの良い、髪色が深緑色をした短髪の男である。
念珠と言う、自身の念を込めた球を連らせた大きな珠数の様な物を武器とする。
格好だけ見ると、徳が高いお坊さんの様に見えるが、実際の性格は金の亡者である。
彼の趣味は黄金を集める事で、黄金こそが彼の全てであり、生き甲斐でもある。
ザガリル軍にいたのも、給料が良いからと言うのが一番の理由だった。
ちなみに、この世界に仏教と呼ばれるものは無い。
お坊さんの様な格好だと言うのは、日本人であった頃の記憶からそう思っただけである。
今は消え失せたが、昔は着物によく似た服装をしていた部族があった。
奴はそこの出だと言うだけである。
「ルベレントの呼び出しでは、金にはならんと踏んだか・・」
「恐らくそうかと思われます。ですが、チカリダ様は公爵の地位についておられますので、もしかしたらお仕事を抜けられないだけかもしれません」
「あの馬鹿が公爵?国王の奴、金を積んだな」
ザガリル軍にいた者達は、爵位や称号を貰ってまで戦いたいとは思っていない。
ザガリル軍にいると言うだけで最高の地位を持っているし、貴族になると色々面倒だからだ。
自由気ままなのが一番楽なのだ。
ルベレントが伯爵の地位を貰ったのは、元々彼は貴族の出である為、抵抗感が無かっただけである。
国の防衛に興味を持たない軍隊員達に、国王は相当困っていた筈だ。
嫌がる軍隊員の中で、金で動きそうなチカリダに目を付け、相当注ぎ込んだものと思われる。
チカリダを手中に収めてさえいれば、魔物退治等の問題が起こっても、彼に頼めばなんとかなる。国王ではなく、彼が第二、第三に命じてやらせるからだ。
(あの狸も、チカリダ相手では相当搾り取られたであろうな)
小さく笑いを落としたザガリルは、倒れたままのディレイル達に回復魔法をかける。
完全回復をさせてやると、三人は体を起こし、床に膝をついたまま顔を上げた。
「ありがとう御座います、師匠」
「この御恩は忘れません」
「我ら三人。いついかなる時も、師匠の為に働く覚悟であります」
深々と頭を下げた三人にザガリルが尋ねた。
「チカリダはどうしている」
「チカリダとは、あまり連絡を取っておりません。彼は金儲けに忙しいらしく、私達からの連絡にもあまり反応は致しません」
「成る程な・・」
暫し考え込んでいたザガリルは、ニヤッと笑みを浮かべた。
またよからぬ事を考えたであろう師匠を見て、室内には暗くて重い空気が流れる。
ただ一人、マギルスだけはザガリルから語られる次の言葉を待ちわびる。
「マギルス。オモチャを見つけたぞ」
楽しそうに笑い掛けたザガリルに、マギルスが表情を崩して口角を上げた。
これだから、この人と居ると楽しいのだ。
ケラケラと笑うザガリルの向かいのソファーに腰を下ろしたマギルスは、時が来るまで静かに待つ事にした。
(うわぁ・・。チカリダ(様)死んだな)
ザガリルとマギルス以外の全員の心は一つになった。
とは言え、同情する気は無い。
ここに来なかった本人が悪いのだ。
自分に魔王と死神の興味が向かなければ、あとはどうだって良いと言うのが本音である。
対象者が自分ではなさそうな事を確認したルベレント達は、安堵の表情を浮かべ、そして笑みを浮かべあった。




