ステファニアの日常 3
(でね、何だか課題が増えた気がするのよ…)
ステファニアから、掃き出し窓の魔法が取得難易度の高い魔法で、それが出来たステファニアは全教科のレベルが上がったらしいことを告げられる二郎。
(そりゃそうだよ。能力があるならそれを伸ばしてあげたいと思うのが教育者というものだから)
(そんなものかなぁ)
全く自覚のないステファニアだった。
(あ、さっき言ってた電卓というやつね)
(なっ!)
ステファニアは計算が苦手で、いずれ百均で買った電卓をあげようと思っていたのだが、時期尚早、掃き出し窓を覚えたばかりのステファニアには無理だろうと会話には出さなかったのだが、思いが強かったのだろう。余程表層の考えだったのか、ステファニアにすんなりと読み取られてしまったのである。
「よっと… ふぅ… マナをゴッゾリ持っていかれちゃったよぉ」
ステファニアの手には日本で買った電卓が握られていた。
「う… 見たことのない文字。でも、二郎の記憶をまさぐれば…」
(えっ… えぇーーー!?)
*
「そ… そんなスゴイことなんだ… これって…」
(そうだぞ。ちょっとは自覚してくれよ… 全く)
電卓を受け取ったことに対して尋常でない動揺をする二郎。二郎が冷静になったところで、超遠距離の掃き出し窓がいかに難しいか、より多くのマナを必要とするかをしつこく、ついでに、失敗したときにステファニアが落ち込むんじゃないかと気遣ったことを少々説明する二郎。
(何だか… 気を使わせちゃったね)
(それはいいんだけど、この成功の意味は大きいと思うんだよね)
そう、それは、練習をより積んで、魔力の消費量を減らすか、魔力をより多く扱えるようになれば、こっちの世界からあっちの世界、あっちの世界からこっちの世界へ自由に行き来することが出来ることを意味していることに他ならなかったのだから。
(ちょ… それは無理! ちょっと、手が入る程度にしか空間を開けなかったのにあんなにマナを持っていかれたのに人が入れるくらいの大きさを開けるなんて…)
(じゃぁ、小さな穴を開いて四つん這いになって通れば…)
(それなら… まぁ… アリかな…)
(出来るのかよ!)
二郎はこの娘は天才か!などと心の中でツッコンでみたり、こそっと二郎よりステファニアの方が相手の記憶を覗く能力が高いことに冷や汗を流しながら、その日のリンクは終了した。
そして、二郎は自分が住んでいる街を案内したり、テレビやラジオ、パソコンなどステファニアの世界には無いと言っている品々を紹介するも、ステファニアの方は課題が増え、宿題を山ほど出され、その上掃き出し窓の魔法の練習に忙しく、街どころか屋敷すらろくに案内できていない。二郎は自分が言い出したことにもステファニアに時間を使わせている自覚があるので「いいって、このくらい」と言うのだがステファニアは申し訳なさそうであった。そして、最初のあの暗い空間に呼び出されてから2週間くらい経ったであろうか…
*
「久方ぶりである。それで、もう一つの魂には慣れたであろうか… ってえぇーーー!?」
ステファニアの回ではなく、あの、真っ暗なミーティング空間に呼び出される二人であった。