表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

一番目の、何でも知っている新聞部部長について。

 ☆☆高校の校舎の一角にある新聞部室。

 そこで一人たたずむ青年がいた。

 彼は今、窓の外を見ている。といっても、そこから何が見えるかといえば、田圃田圃家田圃なのだが。

 遠くには薄水色の山が横たわっている。そして高速道路の緑色の壁が山の方に向かっていて、それに直交するように川が一本流れている。

 開いている窓から暖かい風が流れ込んできた。それに合わせてテーブルの上に乱雑に並べられたノートが捲れる。

 彼は一人、空を見上げた。

 真青に透き通るような青。そこに白い雲がいくつも浮かんでいる。

 左から右に流れるほど、どんどん形が変わる。時々その間を小鳥が飛んでいく。

 廊下からは時々生徒の話し声が聞こえる。

 時間は放課後。

 コンコン

 扉が叩かれ、開かれる。

「おはようございます、部長」

 谷崎潤一、二年生。新聞部部員だ。

「おはよう、谷崎君」

 そもそも、基本的には新聞部の活動は毎月の☆☆新聞の発行と、各種コンクール等のための準備だ。

 ☆☆新聞は、意外と人気が高い。

 文芸部や写真部、パソコン部などと協力して、量・質ともに人気雑誌に勝るとも劣らない内容を誇っている。

 学校行事や社会情勢、部活動の近況や入試情報、勉強方法、大学情報、占いや社説、小説、イベント情報などなど。色々ある。

 それを作る新聞部は、基本的に部員は一学年に一人と決まっていた。

 コンコンコン

 またも扉が叩かれ、開かれる。

「おはようございますです」

 青梅おうめ慰夢いむ、一年生。新聞部部員だ。

 セミロングの白い髪。大きな瞳は深い青を持つ。

「おはよう、青梅君」

「おはようございます、慰夢ちゃん」

 手に持った書類を胸に抑えたまま、ぺこりと腰を折った慰夢。

 腰を戻し首を傾げながらにっこりと微笑むと、髪がふさりと波打った。

「部長、資料作ってきましたです」

 そして書類を、ノートの散らばる上に置いた。

「うむ、ありがとう」

 部長はそう言って書類に手を伸ばした。

 潤一は書棚の中から一冊のノート『99/9』を手にし、それを読んでいる。

 慰夢はテーブルの側にある椅子に座り、ノートを端に寄せ、紙を広げて定規で線を引いている。

 これが新聞部室の日常。

 新聞発行の数日前から忙しくなるが、今は発行数週間前。

 来客が無い限りこの日常が続く。

 因みに、おはようございます、というのは社交辞令のようなものだ。

「良く出来ている」

 部長は目を慰夢に向けて、そう言った。

 慰夢は顔を上げ、目を輝かした。

「本当です?」

「勿論」

「やったのです」

 潤一は顔を上げ、ガッツポーズをした慰夢に微笑みかけ、親指を立てた。

 それに気付き、慰夢も微笑み返し親指を立てる。

「これは、日誌の『08/6』に貼っておいてくれたまえ」

「はいです」

 書類を受け取った慰夢は、テーブルの上にあるノートの中から『08/6』を取り出し、真中辺りから始まる空白のページを見つけ、書類を貼り付け始めた。

 風が部室を通り抜ける。

 それに髪をなびかせ、部長はまた窓の外を見る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ