表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
翼の価値  作者: 八月十五
6/17

地に落ちた鳥

 政府官邸には意外なほど簡単に侵入できた。まるで、ツバサが来るのを知って、警備を退かせたように。

(いや、実際そうなのかもな……)

 広い官邸内を警備員と鉢合わせしないように気を付けながら歩いていると、見つけた。「族長室」だ。

「邪魔するぞ」

 無遠慮に扉を開け放つ。

「思ったよりは速かったわね」

 タカメはテーブルに座り、優雅にワインを飲んでいた。ちなみにツマミはチーズだ。

「まさかあなたが有翼人側にパイプを持っていたとはね」

「パイプなんざ持っちゃいねえよ。友達がいるだけだ」

 ツバサの言葉にタカメはクスクスと笑う。

「あなたの言葉ではそういうのね」

「単刀直入に聞く。俺の研究を兵器として利用するために、俺に近づいたのか?」

「そうね、最初から兵器運用は考えていたわ」

「……そうか」

「あなたからすれば屈辱的なことかもしれないけれど、多くの発明家や研究者からすれば、これは名誉なことなのよ?」

「なに?」

「無翼人が戦争に勝利すれば、立役者はあなた。たちまち英雄よ。もちろん我々も良い関係を続けていきたいと思っているわ」

 確かに、戦争は科学技術を著しく発展させる。そして、自分の作った兵器が活躍するのは、開発者にとってこの上ない喜びだろう。だが、あくまでも「兵器の開発者」ならば、の話だ。

「俺が作ったのは、俺の夢を叶えるためだけのものだ。兵器なんかじゃない。それにな、さっき言った俺の友達が戦争止めたがってるんだわ」

 タカメの目つきが真剣なものになる。

「どこまでいっても相容れないようね」

「そうだな」

 ツバサも構える。ここからは戦闘になる。

「なら、大義のために死になさい」

「俺の夢のために、犠牲になれ」

 互いの言葉がぶつかり、同時に鉄の翼を展開する。さらに、部屋のテラスからぞろぞろと兵士が出てきた。全員が鉄の翼を装着している。

(もう量産させてやがったのか……)

 ツバサはとにかく外に出る。部屋の中では鉄の翼の能力を十分に発揮できないからだ。

 それからは空を舞台に戦闘が始まった。

 ツバサは相手を翻弄しながら少しずつダメージを与え、うまく立ち回る。

 一人、また一人とツバサに落とされる。

「流石に開発者なだけはある……ということかしら」

 タカメが手で合図をすると、全員がガチャガチャと背中から何か取り出す。

(あれは……銃!)

 この時代にも、一応銃は存在する。だが、ハンドガンのような小さなものではなく、猟銃だ。銃の最大の欠点は、費用が馬鹿にならないことだ。弾丸は撃つ度に買い直さなければならず、また、銃本体も高い。銃一丁を買う金で、剣五~十本は買える。簡単に言うと、コスパが悪い。だが、銃は対空兵装としては最高だ。

 パパパパァンッ!!

 一斉掃射がツバサを襲う。槍や剣で囲まれても、極論見えるから避けられる。だが、あんな小さな鉛弾、目で見て回避するのは不可能。散弾であれば運に頼るしかない。このときのツバサもそうだった。

 ドチュッ!!

 嫌な音をたてて鉛弾がツバサの横腹にめり込む。

「ぐっあっつ!?」

「どれだけ飛行技術が卓越していたとしても、数で押せば所詮こんなものね」

 タカメが手で合図を送ると、兵たちが次弾を装填し構える。

(不味いな……次は今以上に当たる!!)

「くそっ!!」

 慌てて急降下し狙いを反らしにかかるが、弾丸の速度には追いつけない。

パパパパァン!!

 ブシュ! ドチュッ!!

「ぐあぁああ!!」

 腕と腹を鉛弾が抉る。ツバサは気を失い、そのまま自然落下する。

「助からないでしょうが、一応地上の捜索隊を編成しなさい」

『はいっ!』

「第一幕は私の勝ち。もし生きていれば、あなたはまた私の前に現れるのでしょう? その時を楽しみにしているわ」

 ニヤリと微笑みながら、タカメはツバサの落ちた地上を見上げる。その鉄の翼を大きくはためかせながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ