ミソラの恋愛事情
あれから三日が過ぎた。ツバサは倉庫の釜の前で突っ伏していた。息は荒く、肩を必死に動かしている。
「ようやく……ここまで来た!」
そこには、布にくるまれた歪な機械があった。
「よっと。どう? 調子は……ってきゃあああ!!」
様子を見に来たのであろうミソラが叫ぶ。
「汗だく! それに隈! たった三日で何があったの!?」
ツバサはあまり自分の顔を意識したり、人目を気にする方ではなかった。だが、どうやらツバサの今の格好は見ていて気持ちの良いものではないらしい。
「着替えるわ」
「待った。先に水浴びてきて! それと寝なさい! いったい何日寝てないの!」
数分後、ツバサは倉庫の裏の井戸にいた。
「まったく。水浴びなんてしなくたっていいのに……」
文句を言いながら桶で汲んだ水を頭から被る。ブルブルと身体が寒さに震え、急いで倉庫の中に入る。
「ふう~ここは暖かいな~」
「そりゃあ、釜で火を起こしたばっかりだからね……ってえええ!!」
ミソラが叫ぶ。その顔は驚きが見てとれたが、頬もほんのりと赤く染まっている。
「? どうしーー」
ガンッ!
ツバサの顔面に何かが物凄い速度で飛んできた。ミソラがそれを投げたのだと理解するには数秒を要した。
「服をーー着ろぉおおお!!」
ミソラの怒号と共に、倉庫の様々な物が宙に舞う。
「ちょっ、分かったから物を投げるな!」
ツンとした表情で倉庫の隅に座り、パンをかじるミソラ。
「そう怒んなよ。大体ここは俺の家だ。どんな格好でいようが俺の勝手だろ?」
「それは……そうだけど……でも! 結婚もしてない異性に裸を見せるのはどうかと思うな!」
「異性って……有翼人と無翼人は結婚できないだろ?」
その言葉は、ミソラの胸を容易く貫いた。
いわゆる人種差別では、結婚の制約はよくあることだ。だが、ミソラはそれが許せなかった。ミソラが好きな男が、無翼人だったから。
(まったく、誰のために天使教に入ったと思ってるのよ!)
ミソラが天使教に入ってからずっと唱えてきたことがある。それが「有翼人と無翼人の結婚の許可」だ。だが、この議論が可決されたことは一度もない。
(見てなさい! 絶対にツバサのハートを射抜いて見せるわ!)
モシャモシャとパンをかじりながら、ミソラは密かに心に誓った。




