渡り鳥ーーワタリドリ
ツバサは戦場に戻り、再び有翼人無翼人関係なく、無差別に殺していった。ツバサが死んでこの戦争が終わったあと、どちらかが著しく疲弊していてはまたすぐに戦争が起きると思ったからだ。それに、もしかしたらミソラは有翼人無翼人共通の英雄になってくれるかもしれない。
もう何百人もの首を切り飛ばしたころ、一直線にこちらに向かってくる影があった。
(来たか……良い頃合いだな)
ツバサは周りに有翼人と無翼人がそれなりの数いるのを確認する。どちらか一方しか目撃者がいなければ、もう一方にはデマと思われるかもしれない。目撃者が少なすぎても同じだ。
この場に残っているのはそれぞれ百人ずつ程度。これだけいれば流石に広まるだろう。
(上手くやってくれよ!)
ツバサは漆黒の翼をはためかせて、ミソラの方へ向かう。ツバサが襲いかかり、それをミソラが回避したように見せて一度すれ違い、その間に奪われたかのように加速剣をミソラに渡す。
「ガァアアア!!」
出来るだけ恐そうに吠え、ミソラに突進する。ミソラも華麗に翻って加速剣を構えると、引き金を引いて加速し、ツバサに突撃する。
ーーグサァ!
加速剣が深々とツバサの腹部に刺さる。剣から伝ってきた血でミソラの手も赤く染まるほどだ。誰からも一目で分かるような致命傷だった。
「上手くやってくれたな……」
ツバサはこっそりと、声を潜めてミソラに言う。
「……精々苦しんで死ね」
ミソラの皮肉にツバサは目を閉じて静かに笑う。本当に清々しそうに、肩の荷が降りたような笑顔だった。
「……ああ。お前はまだ来るなよ?」
「空の上で羨ましがるほど長生きで幸せな人生を送るよ」
それを聞き届けたツバサは、もう満足だとばかりにミソラの肩を押し、腹に刺さったままの剣を抜く。
ブシャアァ!
さらに出血し、ツバサの身体全体が紅く染まる。
出血性ショックで漆黒の翼を維持できなくなったツバサはそのまま落ちていく。致命傷のうえにこの高さからの落下では、絶対に助からないだろう。ミソラは最後の仕事を果たす。
「やったぞ!」
剣を高らかに掲げ、勝利を宣言する。静まり返っていた戦場から歓声がほとばしる。
「うぉおおお!!」
ツバサの死から五年後ーー
有翼人無翼人の壁はなくなり、総合政府が立ち上げられた。ミソラは今、そこの長をしている。天使教は大司教がミソラの裏切り行為を見たと批判したが、誰も耳を貸さず、信者は減る一方となっている。
「さて、今日の仕事も終わりかな?」
ミソラが秘書に聞く。
「はい、お疲れ様でした」
「そっちもお疲れ~」
総合政府長としての仕事は多忙だ。有翼人無翼人関係なく使用できる施設の設立や、無翼人の劣等感、有翼人の無翼人差別防止まで多岐にわたる。それでもミソラには毎日かかさずに来ている場所があった。
「お待たせ、遅くなっちゃったね」
自宅から少し離れた誰も寄り付かない山の中腹に、それはあった。
不自然に土が盛り上がり、周りに花が添えられ、地面に刀身を中程まで埋めて突き立っているのはーー加速剣だ。
ここは戦争の後、誰にも見つからずにミソラがツバサの死体を回収して作った墓だ。
「ツバサはあんな終わり方でも、自分の力で空を飛べて幸せだったのかな? それとも、悔しかった?」
ここに来ると、いつもミソラは墓標に問う。勿論答えは帰ってこない。それでも、今まで話せなかったことや聞きたかったことが口から溢れてきて留まらないのだ。
「見てて、ツバサ。きっとあなたが笑って見届けられるような世界にしてみせる」
その声すらも静寂の中に溶けるが、これは会話ではない。ミソラの宣言なのだ。
ミソラは立ち上がり、家路につく。振り返ることはなかった。
収集つかなくなって、主人公が死ぬバットエンドになってしまいました。小説家になろう等のネット小説はバットエンドは不人気だと聞いたので心配です。多分次作も書くと思いますが、次はハッピーエンドにしたいと思います。(無理だったらすみません)




