歴史と運命
二人で飛行すること数時間。天使教の本堂が見えてきた。
「あんまり人に会いたくないでしょ? 隠し扉から中に入るよ」
ミソラに連れられて天使教の本堂へと進む。
「何で清廉潔白な教会に隠し扉なんて必要なのかね~?」
ツバサが皮肉を込めて言う。本当はツバサだってそんな理由知っているのだ。でも、なぜか今はそんな言葉が口をついて出た。
「今から匿ってもらおうって教会にその物言いはないでしょ」
ミソラが呆れ顔で呟く。でも、ミソラは呆れると同時に安心もしていた。ツバサが元気を取り戻して、今まで通りに戻ってくれたような気がしたから。
「取り敢えず大司教様に挨拶しておかないとね」
「この前会った奴か?」
「そう」
二人で話ながら歩いているうちに聖堂へ辿り着く。
「司教様はいつもこの聖堂にいらっしゃるの。この時間は他の人はいないから大丈夫」
「分かった」
大きく分厚い扉を開けると、一人で像に向かって聖歌を奏でる者がいた。年の割にピシッと背筋を伸ばし、高らかに奏でる。
「司教様、連れてきました」
「……ここに来たということは、あなたは失敗したようですね。ツバサさん」
「それが、ちょっと予想外のことが起こりましてね」
そう言ってツバサが漆黒の片翼をはためかせる。それを見た̝タカメは一瞬目を見開くと、すぐにいつも通りのおっとりとした顔に戻った。
「ミソラ、少しこの聖堂の見回りをお願いしていいでしょうか? 彼と二人だけで話したいことがあります」
「はい、分かりました」
そう言ってミソラは聖堂から出ていく。
「……それで、二人で話したいことっていうのは――」
パァン!
ツバサの横腹に銃弾が命中する。理解が追い付かないツバサは聖堂の床に倒れる。
「テメェ……どういうつもりだ?」
「なるほど……予想外のことというのはそれですか」
「まさか司教様が銃を持ち歩いてるとはな……大分腐ってんな、この教会」
タカメはコツコツと甲高い足音を立てながらツバサに近寄ってくる。ツバサは何とか立ち上がるが、身体に力が入らず、視界は霞んでよく見えない。
――なんだ? あの銃、あんな小型の銃は見たことがない……
銃といえば、一抱え程はある、所謂「猟銃」がこの世界の銃だ。それ以外の銃なんて見たことも聞いたこともない。ましてや、鉄の製錬の仕事をしていたツバサが知らないとなれば、この世界の殆どの者がその存在すら知らないだろう。
「驚きましたか? 「拳銃」というんだそうですよ」
「……最新式か? 何で大司教様がそんなもんを……」
「いいえ、これは古代の技術ですよ」
「なに?」
「……あなたも自分の死ぬ理由くらいは知りたいでしょうし、聞かせてあげましょう。我々天使教が管理してきた歴史を」




