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翼の価値  作者: 八月十五
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空を目指した少年

 人は、空を求めた。現在、その願いは叶い。我々は空に鉄を浮かべ、飛んでいる。これは、翼を持つ者と持たぬ者が存在する世界。空に憧れた、無翼で、無力な少年の話。

 少年は倉庫で目を覚ました。目元を擦り、顔を洗いに向かう。

「ふう……」

一息つくと、倉庫の布を被ったものに目を向ける。

「よしっ!」

布をバサリと取り去り、その中身に目を向ける。そこには、鉄色に輝く翼があった。

「ま~だそんなの作ってたんだ?」

 外からの声に振り返ると、見慣れた顔があった。

「ミソラ……」

 銀髪の髪、白い肌、紅の瞳。そして、純白に輝く翼。まるで天使のような、美しい少女だった。

「何のようだよ」

「また有翼人のこと羨んで真似してるみたいだからさ」

 この世界には、二種類の人間がいた。生まれつき翼のある《有翼人》と、生まれつき翼のない《無翼人》である。

 有翼人は言葉を話す頃には自然と飛べるようになるが、翼のない無翼人は一生飛ぶことはできない。

 そして、殆どの有翼人は、無翼人のことを蔑んでいた。

「有翼人さまがこんなところに何のようだよ?」

「そんなこと言わないの。ほら、差し入れ」

 そう言って少年にパンを放り投げる。少年は上手くキャッチし、自身の口に運ぶ。

「どう? 美味しい?」

「まあ、美味いけど?」

「よかった~! それ、私の手作りなんだ~」

「ペッ!」

「あ~! 何で吐いた!?」

「それで、用件は?」

 倉庫の隅で踞るミソラに声をかける。

「鉄製の農具、各10本だって」

「了解」

「ごめんね、ツバサ」

「なんだよ、急に」

「貴方にばかり辛い役目を押し付けて」

 ツバサと呼ばれた少年は、唇をニヤリと吊り上げ、踞っているミソラの頭を撫でる。

「きゃっ! な、なによ!」

「おまえが気に病むことじゃない。それに、鉄の納品の代わりにここの設備使わせてもらってるんだから、お相子だ」

 そう言って、ミソラの髪をワシャワシャと撫で回すと、倉庫の奥の釜に火をつける。

「ツバサも変わり者だね。鉄の製錬なんて、誰もやりたがらない仕事なのに」

 この時代、鉄はまだ量産出来ない貴重品であり、有翼人だけが使用できた。そして、鉄の製錬は、時間が掛かる上に、暑く、苦しい仕事だった。

「俺も食ってかなきゃいけないからな。この仕事、けっこう収入良いんだぜ?」

「でも、ツバサ独り身でしょ? それに、もっと楽で収入の良い仕事なんていくらでも――」

「ミソラ!!」

 突然ツバサが叫んだ。ミソラも肩をビクリと震わせる。

「これが俺の夢の一番の近道なんだ。それ以上は踏み込み過ぎだ」

「ご……ごめんなさい」

「……」

「……」

 しばらく、二人の間を静寂が包む。

「そういやおまえ、協会に行かなくていいのか?」

「あっ! そうだった! ごめん、じゃあまたね!」

 そう言ってミソラは翼を羽ばたかせて飛び立つ。その姿をツバサはこっそりと、しかし、しっかりと見ていた。

「やっぱ、カッケエな……」

 この世界にも、一つだけ宗教は存在していた。そして、それは無翼人の殆どと、有翼人の一部が信仰していた。名は《天使教》。教えは、「本来は皆無翼人であり、そこから選ばれた者が有翼人となり、更に選ばれた有翼人はいづれ天使となる」。

 噛み砕いて説明すると「有翼人を持ち上げつつ、無翼人も蔑まない。その上で、有翼人に上を目指させる」というものだ。だが、教えなんて本当はどうでもいいのだ。信仰している無翼人は、殆どが、配給目当て、有翼人は、心から優しい奴か、「虐められてる無翼人に手を差し伸べる自分優しい!」と、自分に酔いたい者。あとは、政治的にバックボーンが欲しい者ぐらいだ。

 ツバサは信仰していなかったが、ミソラは心から信仰していた。

(ま、あいつは人一倍優しいからな……)

 そんなことを考えながら、ツバサは仕事に取り掛かった。


初めて投稿しました。不出来ですが、これから頑張りますので、暖かく見守って頂ければ幸いです。

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