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41才の中学2年生  作者: sky-high
1990年だと?
9/47

敗者坊主頭デスマッチ

金澤龍也…コイツはクラスの中でボスキャラ的な存在だった。



長身でイケメンだから女にはモテた。


しかし超が付く程の短気でしかも頭が悪いw



クラスの連中はコイツにビビっていた。とにかく威嚇的で気に入らない事があれば人に八つ当たりする…



まぁ、いわゆるヤンキーってヤツだ。



気の小さいヤツなんざ、しょっちゅうパシりに使われていたもんだ。



特にチャッピー。コイツは虎の威を借る狐のように、龍也にはヘコヘコして、他の連中にはデカイツラして威張ってたクソヤローだ。



卒業までこんな感じだったから、卒業式の時、ようやくコイツと離れられる!って喜んでヤツもいっぱいいたしな。





そういやコイツ、高校に入ったはいいが、ソッコーで他校から来たヤンキーにタイマンでボッコボコにされたっての聞いて、皆で大爆笑したっけなぁw



その事があっという間に知れ渡り、コイツにビビるヤツはいなくなった…プッ、哀れなヤツだ、所詮は井の中の蛙って事だ。




だが、ここにいるクラスの連中はそんな事をまだ知らない。そりゃそうだ、まだ先の話だからな…




先の話…あっ!ヤベッ!あのジジイに知られたらまた頭がギリギリと締め付けられるのか?



「おい、ジジイ!いるか?」



どうせ近くにいるんだろ、さっさと姿を現せ!


すると、いかにも仙人的なボンっと煙と同時に現れて来やがった。



あの杖何とかして奪い取りてぇな。何か方法はないのかよ?



【何じゃ?】


めんどくさそうにジジイは答えた。

ったくこのジジイのせいでオレは龍也とタイマンする事になったじゃねえか!



「おい、ジジイ!まさかここでアイツとタイマンしたらまたこの輪っかで頭締め付けるのか?」


一応念のため聞いてみた。



【何?あの男とケンカするのか?】



ジジイは龍也の顔をジーっと見ている…ホントにオレだけにしか見えないのか?



「いいか、ジジイ!これはケンカだけど、コイツのお陰で皆ビビってんだよ。だからオレは皆の為にタイマンする。それなら問題はねぇよな?」



そうだ、オレには皆に対して傍若無人に振る舞う龍也をこらしめるという大義名分があるんだからな、これも徳を積む事になるんじゃないのか?



【うーむ、確かにこの様子じゃこやつに皆恐れているからのぅ】


ジジイの言うとおり、他のヤツらは遠巻きにオレと龍也の事をただ見ている傍観者に過ぎない。



「だろ?皆ああやって隅っこで何も出来ずにただ見てるだけじゃん?いつまでもコイツにこんな事させたらつけあがるだけだろ?だったらここで懲らしめるのも、徳を積むって事になるんじゃねえのか?」



オレ以外にはジジイが見えないのは本当で、


龍也は独り言を言っているように見える俺をいぶかしんだ



「おい、お前さっきから誰と喋ってんだ?まさかビビって頭おかしくなったんじゃねえのか、おい。何ならここで土下座すっか?そしたら許してやってもいいぞ、ウヒャヒャヒャ」



何だそのウヒャヒャヒャって笑いは…典型的な頭の悪いヤツの考えだよなぁったく。



【うむ、仕方ない、今回だけだぞい。その代わり思いっきり懲らしめるのじゃ!】



そう言うと、ジジイは杖を振りかざし、また怪しげな呪文を唱えた。



【ハンニャラハンニャラ、ホニャラカピー、ニーハオサイツェン、アンニョハセヨー!】



…呪文なのかよ、これが。



「あれっ!何だ?いつの間にこんなもんが?」



オレの手にはオープンフィンガーグローブ、両足にはレガースとニーパッド、そして何故か腰にはIWGPのチャンピオンベルトのレプリカが巻いてあった。



「おい、ジジイ!これじゃ総合格闘技のスタイルじゃねえかよ」


何だこの学ラン姿にグローブやらレガース着用って。


【うむ、これはケンカではない、試合なのじゃ!】



試合?…ジジイ…ワケ解んねぇよ、このスタイルじゃ…



「…あっ、これ部屋にあったチャンピオンベルトじゃんか!何も呪文でわざわざ学校に持ってくる事ないだろうに…」


通りでどっかで見たことあるチャンピオンベルトだなぁと思った。



【これで思う存分闘うがよい!では健闘を祈るぞい】



そしてまた煙と共にジジイは消えた。



「おいおい、何だよ、その格好はダッセーな!なぁおい!」



龍也は後ろにいるクラスの連中に同意を求めた。


ちなみに龍也だけ何も着用していない…


どこが試合だよ?相手は素手で、オレはグローブ着用かよ!



「ダァッハッハッハッハッハ!山本~、何だそのダセー格好はw」


チャッピーは皆を煽るかのように、ゲラゲラ笑っている。

皆もそれに強要されるかのように、力なく笑う…



『あ、あはっ』



『アハハハハ…』



『クスクスクスクス…』



…今思ったんだが、当時はコイツにビビっていた。だが、よく見るとコイツのどこにビビってたんだろ?


ただ単に意気がってる中2って事だろ?


まぁ、それもこれもオレが41才というせいもあるのか、経験値も豊富だし、こんなヤツよりもっと怖いヤツなんていっぱいいるんだぞ!


特にウチの部長!ミスすりゃネチネチ、ギャーギャーと…

それに比べりゃ、龍也なんてチョロいチョロいw



いかん!すっかり前置きが長くなってしまった。



要はこのバカを懲らしめればいいって事だ!



「いいか、コノヤロー!テメーの力で奪い取ってみやがれ、どうだっ!」



オレは龍也の目の前でアントニオ猪木の保持していたIWGPのベルトのレプリカを手に持ち、高々と上げた!



やっぱりプロレス的演出も必要だな、こういう時は、うん!



「テメー、さっきからギャーギャーと何喚いてんだ、コラァ!」



…う~ん、全然怖くない。威嚇のつもりだが、所詮は中2だ。


むしろ滑稽だ、ウワハハハハハハハハハ!



「おい、智!もういい加減にしろよ!お前が龍也に勝てるワケねぇだろ!」



オレたちの間に泰彦が割って入ってきた。

このケンカを止めさせようとして、仲裁をしようとしていた。



「牛島、テメーは邪魔なんだよ!」



ドカッ!



「!…ぐっ!」



龍也が泰彦のみぞおちを蹴った。



あまりの痛さにその場で泰彦がうずくまった。


『キャーッ!』


『もう止めてよ、二人とも!授業が始まるわよ!』


女子も何とかしてこのケンカを止めさせようとしたが、龍也が女子達の方を向いて、ひと睨み効かせた。


「うるせー、黙ってろ、テメーらは!」


その声で女子達は萎縮してしまった。


「おい泰彦!大丈夫か?」


…オレは泰彦を起こし、黒板の下にある教壇の椅子に座らせた。



そしてチョークを持ち、黒板に大きな文字で書きなぐった。




【金澤龍也VS山本智 敗者坊主頭デスマッチ!】



『ええっ?』



『坊主?』



『マジかよ…?』



ざわめくオーディエンス、そして挑発するオレ、怒りの沸点がマックスの龍也!



やっぱプロレス的演出は必要だからねぇ~っ!

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