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41才の中学2年生  作者: sky-high
1990年だと?
7/47

何だこのヘアバンドみたいな輪っかは?

で、要はその徳とやらを積めば元の世界に戻れるというワケか…



【左様、お主が短期間で徳を積んだら元に戻してやろう】



ホントかよ…見た目と一緒で胡散臭い話だな。



「じゃあ例えば1日で徳を積んだらソッコーで元に戻してくれるんだろうな?」



【このバカもんが!徳なんてもんは1日やそこらで身に付くもんではないわい!】



ホントにコイツはバカか?という表情を浮かべていた。


「なぬっ?…よし決めた!オレ今から修行僧になる!毎日滝に打たれて座禅組んで写経読んで、ついでに米粒にも写経書けるぐらいの修行僧になってくるから、それならいいだろ?」



【おい】



ジジイはツルッパゲな頭をポリポリ掻きながら呆れたようなツラしてオレに問いかけた。



「何だよ、オレは忙しいんだ!今から寺に行って修行してくるんだよ」



オレは部屋の中にあるゲーム機とマンガをバッグに詰め込んでいた。



【お主はホントに41才か?41にしてはあまりにも幼稚な考えを持った男じゃの~。何が今から修行僧になる、じゃ!お主は今、中学2年生なんじゃぞ!


しかも寺に修行しに行くと言いながら何でそんな物を持っていく必要があるのじゃ!


…全く、よくこんなんで結婚して子供もいて、家を買って会社じゃ課長と呼ばれているのか、はぁ~、よくもまぁ、そんな幼稚な考えで今まで生きてきたもんだのぅ、ある意味感心するわぃ】



…うっ!そういやオレ、妻や娘にもよく言われる事がある…



「パパって何でそんなに子供っぽいの?」


とか、


「ほら阿莉紗、パパったら、また子供みたいにして~」



あぁ~、今更ながら何てガキなんだ、オレは!




「んじゃ、オレがこれから学校に通えばいいって事か。あ、そうだ、おいジジイ、もしこのまま元に戻らなくなったら未来は変わってしまうんじゃないのか?」



オレが一番懸念しているのはそれなんだよ!



だってこのままだと未来が変わって、妻や娘とは会わない可能性だってあるワケだよな?



【勿論じゃ。だからあの家庭を取り戻したかったら、徳を積めぃ!】



偉そうにこのクソジジイめ!


「…いや、だってオレ、徳積んでなくてもああやって家庭を築いてんだぞ!別に徳を積まなくったっていいじゃねえかよ!」



危ねぇ、危ねぇ、うっかりこのジジイの口車に乗るとこだった。



【お主は何も解っとらんな!よいか、徳を積まない限り元には戻らん!よってこれからのお主の頑張り次第によって未来が左右されるのじゃ!】



マジかよ~っ!オレの行動次第で未来が変わるのかよ…



「だから何でその役目がオレなんだよ?他にもいっぱいいるだろ?オレよりもっともっと徳を積まなきゃならないヤツらが!」



…ったく、オレは確かにろくでもない人生を送ってきたが、犯罪に関わるとか、そんな事は何一つやってないぞ!



ごく平凡に生きて、ごくごく普通に過ごしてきたのに、何だってこんな目に遭わなきゃならんのだ…



【う~ん、お主の言う事にも一理あるのぅ】



「じゃ、ソイツらをターゲットにしろよ!何でオレじゃなきゃダメなんだ、なぁ?」


するとジジイは歯切れの悪い言葉で答えた。


【…うむ、実はの。ワシもお主を中2に戻すように、って上の者から言われての…】


何だって?上の者?


「おい、何だその上の者って?ジジイ、テメー仙人だろうが!仙人に上も下もあるのか、このインチキジジイが!だからそんな胡散臭い格好してんのか。だったら上の者ここに呼んでこい、オレが説教してやる!ったく」


冗談じゃねえぞ、その責任者をここへ呼べ!


【バカもん!何が説教じゃ!ワシがお主を説教する立場じゃぞい!】



…徳だの、上の者だのって、もう何だかワケが解らなくなってきた…



あぁ、帰りてぇよ~、2017年に~っ!



【という事じゃ、お主はある意味選ばれた人間なんじゃ、その選ばれた人間が未来を変える事が出来るのじゃ!よく考えてみるがいい!お主の中学、高校時代を薔薇色に変えてみたいと思わんか、んん?】



薔薇色か…


そうだよな、今思えば学生時代はいい思い出は無かったよなぁ~…



「おい、ジジイ!じゃ、今からオレが薔薇色の中学時代、黄金の高校時代、そして神の大学時代に変えてやらぁ!それなら文句は無えよな?」



そうだよな、よくよく考えたら、オレ未来を予想できる人物じゃないか!



しかも歴代の予言者よりも100%的中する予言者じゃん!



ウハハハハ!



【こりゃ!】



ボコッ!いきなり杖で頭を叩かれた!



オレ「痛え~、杖で殴るんじゃねえ、クソジジイ!」



【お主はこれからの間、未来を予言してはならん!もし予言する時、この輪がお主の頭を締め付ける、ほれっ】



ジジイはオレの頭に細くて白いヘアバンドのような輪っかを無理矢理被せた。



オレ「おい、何だこのヘアバンドは?」



【これはお主が良からぬ事を予言したり、何か悪さをする時、この輪がお主の頭を締め付けるようになっておるのじゃ】



こんなダセー輪っか付けて学校に通えるかよ!


「ざけんな、ジジイ!こんな輪っか付けてられっか!」



輪っかを外そうとした瞬間、頭がギリギリギリギリと締め付けられる!



「うぎゃ~っ!痛え!頭が痛え!」


痛みでのたうち回るオレを見て、ジジイはこう言った。


【フォッフォッフォッ、その輪は外れんようになっておる。よいか、お主は良からぬ事を考えずに徳を積む事だけを考えるのじゃ、良いな!】



…そしてドロンと煙と共に消えて行った。



…はぁ、何だよこれ?孫悟空の輪っかと一緒じゃねえかよ…



て、事はあのジジイは三蔵法師か?



あぁ、しかし頭痛かったなぁ。



「あっ、ヤベッ!遅刻する!」



オレは数十年ぶりに学ランに袖を通した。そして家を出た。



…えっと、中学校ってどっちにあったっけ?

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